P-47 (航空機) P-47B / P-47C

P-47 (航空機)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/02 00:41 UTC 版)

P-47B / P-47C

XP-47Bの不具合

XP-47BはUSAAFに楽観と懸念の両方をもたらした(USAAC 陸軍航空隊は1941年6月にUSAAF 陸軍航空軍となった。参考:アメリカ空軍)。機体性能も火力も申し分なかったが、非常に革新的な設計であったため、初期不良に見舞われることとなった。

巨大なサイズと強力なパワーのせいで操縦は楽ではなかったし、離陸に長い滑走路を必要とし、結局この欠点は他のタイプのP-47や、さらにカートゥヴェリーが後に設計するジェット機にも引き継がれた。キャノピーは開閉時にひっかかることがあり、機銃・燃料系統・エンジン配置にも問題があった。高々度では点火系統がアークしてしまった。動翼を動かすのに必要な操舵力は許容できないほど大きく、エルロンは固着してしまった。帆布張りの動翼は高々度では壊れやすかった。

リパブリックはこうした問題に取り組んだ。緊急時には投棄可能なスライド式キャノピィ、与圧式の点火系統、そして全金属製の動翼などが解決策だった。

P-47B発注される

1942年3月に撮影されたP-47B サンダーボルト

航空軍は171機のP-47Bを発注した。技術試験用のP-47Bは1941年12月に引き渡され、量産試作型が翌年3月に続いた。初の量産型は1942年5月に引き渡された。

リパブリックは生産を開始する一方で設計の改良も続けた。初期のP-47Bには既にスライド式キャノピィが取り入れられており、同時にパイロットの視界も向上した。さらに、R-2800-21エンジン用に、ゼネラル・エレクトリック製の新型ターボチャージャー制御装置も備えていた。一方で、初期の機体では全金属製の動翼などいくつかの装備は標準でなかった。B型だけに特徴的な点がひとつあった。コクピット後方にある無線用支柱が、アンテナの長さを確保するために前傾していたのだ。これは新型のスライド式キャノピィ設置に伴う改修だった。

この飛行機には「サンダーボルト(Thunderbolt、雷電)」という愛称が付けられた。パイロットの間では同じくらい有名な「ジャグ (Jug)」という呼び方があった。これはヒンドゥー教ジャガーノートから来たといわれている[1]。実際、サンダーボルトは損傷を受けながらも何度もパイロットを無事帰還させた。

最初のサンダーボルトは、リパブリックと同じロングアイランドにある第56戦闘航空群 (56th Fighter Group) へ引き渡された。56th FG は新型戦闘機の運用評価部隊だった。XP-47B同様、問題はなおも続いた。量産初期のP-47Bが急降下時に操縦不能になり、リパブリックのテストパイロットが死亡した。他にも、胴体尾部が崩壊してしまったりと、初期のP-47Bは何機もが墜落した。全金属製の動翼やその他の改修によって問題は解決したが、1942年8月、XP-47Bは飛行中に炎に包まれ、パイロットはベイルアウト(脱出)を余儀なくされた。

P-47C(B型の不具合是正)

機体をよく知るにつれ、USAAFは総合的には評価に値するとの決断をくだし、P-47Bの発注に続けてすぐに、改修型をP-47Cの名称で602機発注した。最初の機体は1942年9月に引き渡された。

初期のP-47CはBタイプによく似ていたが、以下の点が異なっていた:

  • 強度が向上した全金属製の動翼
  • GE製 ターボチャージャー制御器のアップグレード
  • 短く、垂直に伸びた無線支柱

57機のP-47Cがつくられた後、生産はP-47C-1へ移行した。このタイプはコクピット前方で胴体を20 cm (8 in) 延長したもので、これによって重心位置の問題が解決した上、エンジン整備がしやすくなった。他にも、オイルクーラー排気口・ブレーキ・着陸装置・電気系統などに若干改修が加えられた。

55機のP-47C-1には128機のP-47C-2が続いた。-1との唯一の違いは胴体下部に取り付けポイントが設けられたことで、ここに200ガロン(757リットル)の増槽(ドロップタンク:投棄可能燃料タンク)が装備可能となり、500ポンド (224 kg) 爆弾を搭載することもできるようになった。

P-47Cの最多生産型はP-47C-5で、新型のウィップアンテナと、R-2800-59エンジンを装備していた。このエンジンは水メタノール噴射装置を備え、緊急最大出力は2,300 HP (1,700 kW) に達した。

B型の派生型

P-47BからはC型だけでなく、生産にまで至らない派生型がいくつか生み出された。偵察用のRP-47Bが1機つくられた。P-47Bの最終171号機はXP-47Eの名称でテスト用に使われた。P-47C-5用のR-2800-59エンジン・与圧コクピット・そして新型のハミルトン・スタンダード製プロペラを試験した。

後に別のP-47Bが性能向上を狙って層流翼型の主翼に換装され、XP-47Fと改称されたものの、たいした成果は挙げられなかった。


注釈

  1. ^ 固定武装あり
  2. ^ 搭載可能燃料は機体内燃料タンクに557gal (2,108ℓ)、落下増槽タンクを110gal (416ℓ) ×1 + 165gal (625ℓ) ×2の合計997gal (3,774ℓ)
  3. ^ 航続距離は燃料消費量+5%の補正後に算出されている

出典

  1. ^ Jerry Scutts著『P-47 Thunderbolt Aces of the Eighth Air Force (Osprey Aircraft of the Aces No 24, 英国Osprey Publishing刊 1998年10月)』では、「P-47の胴体形状が牛乳輸送缶(Milk jug)にそっくりであるから」と書かれており、他の理由として「力強い姿がJuggernautを連想させたから」とある。
  2. ^ 梅本弘 『第二次大戦の隼のエース』 大日本絵画、2010年8月、P.86
  3. ^ 『第二次大戦の隼のエース』 pp.94-95
  4. ^ 『第二次大戦の隼のエース』 p.97
  5. ^ 押尾一彦、野原茂『日本軍鹵獲機秘録』光人社、2002年、142頁。ISBN 978-4769810476 
  6. ^ F-47N Thunderbolt Specifications STANDARD AIRCRAFT CHARACTERISTICS
  7. ^ Propeller:CURTISS ELECTRIC C.S.、Blade:No.836-14C2-18-R1 (×4)、Diameter:13ft (3.96m)、Area:12.33m²
  8. ^ 陸軍航空軍 (USAAF = United States Army Air Force) は1947年に空軍 (USAF = United States Air Force) となった。
  9. ^ “NYハドソン川にサンダーボルト墜落 大戦中の米戦闘機”. 産経新聞. (2016年5月30日). https://www.sankei.com/photo/story/news/160529/sty1605290006-n1.html 





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「P-47 (航空機)」の関連用語

P-47 (航空機)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



P-47 (航空機)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのP-47 (航空機) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS