B.B.キング ルシール

B.B.キング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/29 23:18 UTC 版)

ルシール

自らのギターにルシールと名づけている。1950年代にキングがアーカンソー州トゥイストのクラブに出演した際に二人の男性が喧嘩を始め、彼らはストーブを倒してクラブは大火事となってしまった。キングと観客は外に避難したが、外に出てからキングは愛用のアコースティック・ギターをクラブに忘れてきてしまった事を思い出し、自らの命の危険を省みずに火の燃え盛る建物に戻り、ギターを救い出した。その直後に建物は焼け落ちてしまったという。翌日、キングは火事を起こした男性たちが「ルシール」という女性をめぐって争っていた事を知り、女性をめぐって争うような馬鹿なことを二度としないようにと以後彼のギターに「ルシール」という名をつけたのだという[17][18]

最初の「ルシール」はギブソンL-30で、キングはそれにディアルモンド社製のピックアップを取り付けて使用していたが後に車上荒らしに逢って盗まれてしまう。その後のルシールは不明ながら、ギブソンES-125の可能性が高い。その他にもギブソンES-5 Switchmaster、ES-175、バードランドといったギブソンのギターを使用していたが、どのギターに「ルシール」と名付けていたかは定かではない。この他にもフェンダー・ストラトキャスターフェンダー・エスクワイアギブソン・レスポールを使用していたことが確認されている。1958年ギブソン・ES-335とそのバリエーションモデルであるES-345、ES-355が登場すると、キング本人もこれらのギターを使用し始めるようになる。特にES-355は後述するバリトーンスイッチが気に入っていたようで、永らくステージで愛用していた。これが後のB.B.キングモデル「ルシール」の原型となって行く。[19]

楽器の特長

愛器の「ルシール」は、ギブソン・ES-355TDSVを元に製造された。形はES-355に似ているがES-355にはFホール(本体表面に空けてある穴)があるのに対し、「ルシール」にはそれがない。Fホールがあるとライブ時にハウリングが発生しやすくなるため、その対策のためのアイデアである。空洞は本来の通り空いており、金属パーツはすべてゴールドメッキ仕様となっている。テールピースにはファインチューナーが設けられたタイプが取り付けられており、演奏中のチューニングの微調整が可能。

またこのルシールはボディの材質にも特徴があり、通常の ES-355 がボディ:メイプル(サトウカエデ)、ネック:マホガニー、フレットボード:エボニー(黒檀)の組み合わせによりウォームなサウンドを出力するのに対して、ルシールはボディもネックもメイプルで作成されている(フレットボードはES-355と同様エボニー使用)為、トレブリーな音色となっている。

また、ソリッド・ボディの特別品も製作されており、[要出典]彼に取材したYOUNG GUITAR誌のライターは、「信じられないくらい重かった」と証言している。[要出典]

さらにピックアップも ES-345 とは異なっており、ルシールにマウントされているものは 490T & 490R というやや中音域が強調されたモデルになっている。これらの組み合わせにより、ルシールが出力する音は B.B.キングの声によく似たアタックと張りのある骨太なサウンドになっている。さらにルシールにはES-345同様のロータリー式スイッチの「バリトーンスイッチ」が取り付けられており、さらに前後ピックアップを切り替えるトグルスイッチに加え、バリトーンスイッチの操作によって多彩な音色が得られるようになっている。

Fホールがないため電装関連が設置できないのでボディ裏面にレスポールなどと同様のメンテナンスホールが開いており、ここにすべての電装類が収納されている。

基本的な仕様の他にも指板に「B.B.KING」のネームのインレイを施したモデルを使用していた。彼が80歳を迎えた2005年にはヘッドからギブソンのロゴを取り除いて「B.B.KING 80」の文字や王冠のインレイを施し、ピックアップカバーやピックガードに彫金を施した特別仕様のルシールが登場。その1号機が彼に贈呈され、メインギターとして使用された(少数が限定で市販されている)が、2009年夏に盗難に遭ってしまう。同年秋にラスベガスの質屋でヘッドに「B.B.KING 80」とインレイが施されているルシールが売られていたのを見つけたアマチュアギタリストのエリック・ダールがこのギターを購入した所、ヘッドの裏に「PROTOTYPE 1」と銘打たれていたことから不審に思いギブソンに連絡して確認すると、その盗難に遭ったキング本人のギターであることが判明。ダールはギブソンを通じてそのルシールを返却し、キングは彼に感謝の意味を込めて新しいルシールを贈った。その後ダールは2013年にキングが愛用したギターの変遷をまとめた「B.B.King's Lucille and The Loves Before Her」という書籍を出版している。[19]


  1. ^ a b ‘キング・オブ・ブルース’B.B.キングを偲んで”. uDiscovermusic. ユニバーサルミュージック (2017年8月3日). 2021年11月30日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i Dahl, Bill. B.B. King Biography, Songs & Albums - オールミュージック. 2021年11月30日閲覧。
  3. ^ Scapelliti, Christopher (2015年5月15日). “B.B. King Defined the Electric Blues on His Own Terms”. Guitar World. 2021年11月30日閲覧。
  4. ^ a b Roberts, Rabdall (2015年5月15日). “Appreciation: B.B. King built a bridge to the blues for the world”. 2021年11月30日閲覧。
  5. ^ Adelt, Ulrich (2010). Blues Music in the Sixties: A Story in Black and White. Rutgers University Press. pp. 24 and 26. ISBN 978-0-8135-4750-3. https://archive.org/details/bluesmusicsixtie00adel 
  6. ^ Neal, Mark Anthony (2015年5月16日). “B.B. King And The Majesty Of The Blues”. NPR. 2021年11月30日閲覧。
  7. ^ Blues Legend B.B. King Gets the Royal Treatment From Biographer Daniel de Visé”. Nashville Scene (2021年9月30日). 2021年10月12日閲覧。
  8. ^ Rolling Stone. “100 Greatest Singers: B.B. King”. 2013年5月26日閲覧。
  9. ^ B.B. King”. The Rock and Roll Hall of Fame and Museum. 2017年5月4日閲覧。
  10. ^ a b c B.B. King - Awards : AllMusic
  11. ^ Dahl, Bill. “In London - B.B. King”. AllMusic. 2015年8月29日閲覧。
  12. ^ B.B. King: inducted in 1987”. The Rock and Roll Hall of Fame and Museum. 2015年8月29日閲覧。
  13. ^ Lifetime Honors: National Heritage Fellowships
  14. ^ ブルースの巨匠B.B.キング、死去”. BARKS (2015年5月15日). 2020年10月29日閲覧。
  15. ^ 「ブルースの王様」B・B・キングさん死去 NHKニュース 2015年5月15日閲覧
  16. ^ B・B・キングさんの死に殺人の可能性、司法解剖へ”. AFPBB News (2015年5月26日). 2015年5月26日閲覧。
  17. ^ The King of the Blues - B.B. King: Lucille Speaks
  18. ^ B.B. King biography from the official site
  19. ^ a b リットーミュージック「Guitar Magazine」2015年8月号特集「Featured Guitarist B.B.キング」


「B.B.キング」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「B.B.キング」の関連用語

B.B.キングのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



B.B.キングのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのB.B.キング (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS