音程 音程の概要

音程

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/26 19:49 UTC 版)

順次的に鳴る音に対する音程を旋律的音程と呼び、同時に鳴る音に対する音程のことを和声的音程と呼ぶ[1]

音程の名称

音程の名称は、基本的には五線譜上での隔たりで「◯度」という名称が決まる。1オクターヴ以下の音程を単音程と呼び、それ以上離れているときを複音程という。

度数

{ 
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" }
<c' c''>1
}
8度

2つの音が譜面上の同一の高さの位置にあるとき、「0度」ではなく「1度」である。つまり、2つの幹音譜面上でシャープフラットがつかない音)が譜面上n個離れているとき、その2つの音はn+1の関係にある。

例えば右の図の2つの音は1オクターヴであるが、譜面上7つ(線3つと線の間4つ)離れており、音程は7+1で「8度」となる。

単音程の名称

度数に「短」「長」「完全」「増」「減」といった接頭辞をつけて音程を表す。

「短」「長」といった接頭辞をつけるのは下記の理由による。

{ 
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" }
<c' d'>1
<d' e'>1
<e' f'>1
<f' g'>1
<g' a'>1
<a' b'>1
<b' c''>1
}
ミ〜ファとシ〜ド:短2度、その他:長2度

右の図のように、幹音上の2度の音のペアは7組あるが、ミ〜ファとシ〜ドは半音で、それ以外のペアは2半音=全音離れている。前者を短2度、後者を長2度と呼ぶ[2]

同様に、幹音上の3度ではミ〜ファとシ〜ドという半音区間を含むレ〜ファ、ミ〜ソ、ラ〜ドは3半音と狭く、半音区間を含まないド〜ミ、ファ〜ラ、ソ〜シは4半音と広いため、前者を短3度、後者を長3度と呼ぶ。

{ 
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" }
<c' e'>1
<d' f'>1
<e' g'>1
<f' a'>1
<g' b'>1
<a' c''>1
<b' d''>1
}
レ〜ファ、ミ〜ソ、ラ〜ド:短3度、その他:長3度

6度、7度も同様の理由から、幹音上には半音異なった大小2種類の音程があるので、狭い方に「短」・広い方に「長」という接頭辞をつける。

4度と5度

4度と5度も幹音上には2種類の音程があるが、完全協和音程を含むため、「完全」・「増」・「減」の接頭辞を用いる。

  • 4度の場合、ド〜ファ、レ〜ソなど、半音区間を含み完全協和音程の5半音の方を「完全4度」、半音区間を含まないファ〜シの6半音の方を「増4度」と呼ぶ[2]
  • 5度の場合、半音区間を2回含み6半音のシ〜ファを「減5度」、それ以外の半音区間を1回だけ含むド〜ソなど完全協和音程の7半音の方を「完全5度」と呼ぶ[2]

1度と8度

1度と8度の場合は、幹音上に完全協和音程の一種類(1度なら0半音、8度なら12半音)しかないので、1度のペア(=同一の音)を「完全1度」、8度離れたペアの事を「完全8度」という[2]。1度は「同度」、「ユニゾン」とも呼ぶ。

増4度と減5度

{ 
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" }
<f' b'>1
<b' f''>1
}
増4度と減5度

前述のように「増4度」と「減5度」はいずれも12平均律では6半音で同じ音程だが、譜面上は異なる。例えば右図の2組の音のペアはいずれも6半音差だが、譜面上は左は4度なので「増4度」、右は5度なので「減5度」と呼ぶ。三全音(トライトーン)とも呼ぶ。

「増」「減」「重増」「重減」

  • または完全より半音広い音程に(ぞう)、2半音広い音程に重増(じゅうぞう)という接頭辞を付けて呼ぶ(例:増7度、重増7度、増5度、重増5度)。
  • または完全より半音狭い音程に(げん)、2半音狭い音程に重減(じゅうげん)という接頭辞を付けて呼ぶ。
{ 
\new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" }
<f' gis'>1
<f' as' >1
}
増2度と短3度

これらの名称は例えばシャープフラットなどの変化記号がついたときに用いる。

例えば右図で「増2度」と「短3度」はいずれも12平均律では3半音で同一の音程であるが、譜面上は左は「2度」は右は「3度」なので、左を「増2度」と右を「短3度」と呼ぶ。

幹音上の音程の名称と2つの音の間の半音数[注 1]との関係[3]
0半音 1半音 2半音 3半音 4半音 5半音 6半音 7半音 8半音 9半音 10半音 11半音 12半音
完全1度 短2度 長2度 短3度 長3度 完全4度 減5度
増4度
完全5度 短6度 長6度 短7度 長7度 完全8度

複音程

2つの音の高さが13半音以上、すなわち1オクターヴより大きく離れている場合を複音程と呼び、「3オクターヴと完全4度」のようにオクターヴ数と単音程の組み合わせにより複音程を表す。

ただし、「9度のような若干の複音程は和声の特徴的な要素なので、大きいほうの数でよばれるのが普通である」[引用 1]ので、例えば「1オクターブと短3度」の事を「短10度」と呼ぶ。

協和音程と周波数比

2つの音の周波数の比率が簡単な整数比で表せない場合、その2つの音を同時に鳴らすとうなりが発生してしまう。このため西洋音楽の和音では同時に鳴らす音の周波数比が単純であればあるほど、より「協和」した音程として重視してきた[注 2]

このため整数比の簡単さ(=「協和」)の度合いにより、音程を以下のように分類する[2]

音程 周波数比

(純正律の場合)[4][注 3]

協和音程 完全協和音程 完全1度 1:1
完全8度 1:2
完全5度 2:3
完全4度 3:4
不完全協和音程 長3度 4:5
短3度 5:6
長6度 3:5
短6度 5:8
不協和音程 それ以外


完全1度・完全8度を特に絶対協和音程という。


引用

  1. ^ ピストン、デヴォート『和声法 分析と実習』音楽之友社、2006年6月。ISBN 9784276103214 

出典

  1. ^ 和声的音程”. コトバンク. 株式会社 朝日新聞社. 2016年11月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e f #ヤマハ
  3. ^ #小方 p.55.
  4. ^ #小方 p.84.記載の純正律の周波数比を参考に記載。
  5. ^ #小方 p.260.

注釈

  1. ^ 同じ音のときに「0半音」としている
  2. ^ 具体的には2つの音の周波数がそれぞれnAmAであるとき、nm最小公倍数とすると、2つの音を同時に鳴らしたときの周波数はである。
  3. ^ 音律が純正律であれば、2つの幹音の周波数比は常に整数になるが、平均律であれば、n半音差のある2つの音の周波数比はであるので、nが12の倍数でない限り(i.e.度数が7度の倍数+1でない限り)完全な整数比になる事はありえない。ただし純正律と平均律はほぼ等しいので、平均律の場合も周波数比はほぼ整数になる。
  4. ^ 例えば「C」「E」というペアの転回は「1オクターブ低いE」と「元のオクターブのC」のペアだが、このペアの両方の音を1オクターブ上げても音程は変わらないので、両方1オクターブ上げると「元のオクターブE」と「1オクターブ高いC」のペアになる。 よって結局転回は「低い方の音(この場合C)を1オクターブ上げる」という事と同じになる。


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