累犯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/20 03:06 UTC 版)
趣旨
累犯の刑が加重されるのは、一度刑を科したにもかかわらず、懲りずにまた罪を犯したという点で、初犯者よりも強い責任非難が加えられるからであるという見解(行為責任説)、行為者の反社会的危険性に対する保安処分としての性格を有するとする見解(行為者責任説)、その両者を根拠とする見解がある[1]。
再犯
以下の要件を満たす場合に、刑法56条の再犯(さいはん)となる。
- 前に懲役に処せられた者であること
- 前犯について、宣告刑として懲役刑が言い渡された場合を意味する。
- 例外の第一として、懲役に当たる罪と同質の罪により死刑に処せられた者が、(1)その執行の免除(31条(平成22年4月27日改正前に限る)、5条、恩赦法8条等)を得た場合、(2)減刑(恩赦法6条、7条)により懲役に減軽されてその執行を終えた場合、又は(3)減刑により懲役に減軽された上その執行の免除を得た場合は、累犯加重の理由となる(同条2項)。
- 例外の第二として、併合罪について処断された者が、その併合罪のうちに懲役に処すべき罪があったのに、その罪が最も重い罪でなかったため懲役に処せられなかったものであるときは、再犯に関する規定の適用については、懲役に処せられたものとみなされる(同法56条3項)。例えば、前犯が内乱謀議参与(同法77条1項2号前段。法定刑は無期又は3年以上の禁錮)と現住建造物等放火予備(同法113条、108条。法定刑は2年以下の懲役)の併合罪であったとき、刑法10条により内乱謀議参与の方が重いため禁錮刑が言い渡されるが、懲役に処すべき現住建造物等予備があることから、累犯加重の理由となる。
- 前刑の執行を終わった日又は執行の免除があった日から5年以内に今回の犯罪が行われたこと
- 今回の犯罪について有期懲役に処するべき場合であること
- このため、累犯加重は、刑種の選択をした後に判断することとなる。
三犯以上の累犯
三犯(さんぱん)以上の者についても、再犯の例による(同法59条)。
三犯とは、(1)第1の犯罪と第2の犯罪が56条の再犯の関係に立ち、(2)第2の犯罪と第3の犯罪(今回の犯罪)が再犯の関係に立ち、かつ(3)第1の犯罪と第3の犯罪(今回の犯罪)が再犯の関係に立つものをいう[2]。四犯以上も同様である。
- ^ 『大コンメンタール刑法〔第2版〕第4巻』(青林書院・1999年)375頁
- ^ 最高裁判所昭和29年4月2日判決(刑集8巻4号399頁)・最高裁判例情報。第1の犯罪と第3の犯罪が56条の関係に立たないときは、三犯とはならず、第2の犯罪との関係で再犯になるにとどまる。
- ^ コラム 犯罪統計における「再犯」とは?-再犯率と再犯者率の違い-(法務省 平成28年版 犯罪白書 第5編/第1章/第1節/コラム)
- ^ 刑法犯の検挙人数、戦後最少を更新 再犯者率は過去最高
- ^ 麻薬・覚せい剤乱用防止センター 薬物データベース「覚せい剤について・統計データ」
- ^ 山本譲司著『累犯障害者』(2006年・新潮社)
- ^ アンジェラ・デイヴィス 著、上杉忍 訳『監獄ビジネス…グローバリズムと産獄複合体』(初版)岩波書店(原著2008年9月26日)、p. 146頁。ISBN 9784000224871。
- ^ 三國村光陽『犯罪抑止のための憲法・法律改正案』(文芸社)117頁‐120頁
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