漢文法 コピュラ文

漢文法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/31 04:02 UTC 版)

コピュラ文

漢文では通常、肯定の名詞叙述文にコピュラ動詞を用いない。代わりに、2つの名詞句(片方は代名詞でもよい)を並べ、後ろに文末助詞(通常は「也」)を置く[17]。文末助詞の省略はまれである[18]

  • 滕小国也:は小国なり(孟子 梁恵王下)
  • 天之生、是使独也:天の生ずる、是れ独ならしむなり(荘子 養生主第三)

この例文では「是」が再述代名詞として話題を表しており、これが後にコピュラとして「是」が使われることにつながる(漢朝初期初期の文書にすでに見られる[19])。

しかし、漢文にコピュラがないわけではない。否定コピュラ「非」だけでなく、肯定のコピュラ「為」も存在する[20]。これらの動詞が使われるときは、文末助詞が省略されることも多い。

  • 子非我:子は我にあらず(莊子 秋水第十七)
  • 道可道、非常道:道の道 (い) ふべきは、常の道にあらず(老子 道経第一)
  • 道可道也、非恒道也:道の道ふべきは、恒の道にあらざるなり(老子 道経第一の異版)
  • 天也、非人也:天なり、人にあらざるなり(荘子 養生主)
  • 子為誰?:子は誰と為す?(論語 長沮・桀溺)

漢文訓読

主な文法書・助字研究書

日本語

前近代

近現代

  • 廣池千九郎『支那文典』(早稲田大学出版部、1905年)
  • 廣池千九郎『應用支那文典』(早稲田大学出版部、1909年)
  • 松下大三郎『標準漢文法』(紀元社、1927年)
  • 西田太一郎『漢文法要説』(東門書房、1948年)
  • 藤堂明保近藤光男『中国古典の読みかた 漢文の文法』(江南書院、1956年)
  • 太田辰夫『古典中国語文法 改訂版』(江南書院、1958年)
  • 高橋君平『漢語形体文法論』(大安、1963年)
  • 牛島徳次『漢語文法論 古代編』(大修館書店、1967年)
  • 牛島徳次『漢語文法論 中古編』(大修館書店、1971年)
  • 加地伸行漢文法基礎』(増進会出版社、1977年)
  • 西田太一郎『漢文の語法』(角川書店〈角川小辞典〉、1980年)
    • 西田太一郎、齋藤希史・田口一郎校訂『漢文の語法』(角川書店〈角川ソフィア文庫〉、2023年)
  • 太田辰夫『中国語歴史文法』(齋藤希史解説、汲古書院、1984年)
  • 太田辰夫『中国語史通考』(白帝社、1988年)
  • 三浦勝利『漢文を読むための助字小字典』(内山書店、1996年)
  • 江連隆『漢文語法ハンドブック』(内山書店、1997年)
  • 濱口富士雄『漢文語法の基礎』(東豊書店、1997年)
  • 多久弘一・瀬戸口武夫『新版 漢文解釈辞典』(国書刊行会、1998年)
  • 天野成之『漢文基本語辞典』(大修館書店、1999年)
  • 濱口富士雄『古医書語法の基礎』(東豊書店、2004年)

中国語

  • 馬建忠馬氏文通》(1898年)
  • 楊樹達《高等国文法》(1930年)
  • 楊伯峻《中国文法語文通解》(商務印書館、1936年)
  • 楊伯峻《文言語法》(北京出版社、1956年)
  • 周法高《中国古代語法》(1959-1962年)
  • 楊伯峻《文言文法》(中華書局、1963年)
    • 佐藤進監修、小方伴子訳『漢文文法と訓読処理―編訳『文言文法』』(二松学舎大学、2006年) - 『文言文法』(1983年)の翻訳
  • 王力《古代漢語》(中華書局、1981年)
    • 豊福健二等訳『中国古典読法通論』(朋友書店、1992年) - 「古漢語通論」のみの訳
  • 楊伯峻・何楽士《古漢語語法及其発展》(語文出版社、1992年)

英語

  • Edwin Pulleyblank, Outline of Classical Chinese Grammar, University of British Columbia Press. (1995)
    • 佐藤進監修、小方伴子・槙美貴訳『古漢語語法概論』(二松学舎大学21世紀COEプログラム、2009年)

  1. ^ Peyraube 2008, p. 995.
  2. ^ Schuessler 2007, p. 16: Most of the affixes in [Old Chinese] also have counterparts in [Tibeto-Burman] languages; they are therefore of [Sino-Tibetan] heritage. Most are unproductive in [Old Chinese].
  3. ^ Peyraube 2008, p. 997–998.
  4. ^ Pulleyblank 1995, p. 148.
  5. ^ Barnes, Starr & Ormerod 2009, p. 9.
  6. ^ Aldridge 2013.
  7. ^ Peyraube 2008, p. 999.
  8. ^ Zádrapa 2011, p. 2.
  9. ^ 宮本・松江 2019年 131頁
  10. ^ 全訳漢辞海 第四版 1701頁
  11. ^ Barnes, Starr & Ormerod 2009, p. 5.
  12. ^ Peyraube 2008, p. 997.
  13. ^ Pulleyblank 1995, p. 14.
  14. ^ Barnes, Starr & Ormerod 2009, p. 12.
  15. ^ Peyraube 2008, p. 1006.
  16. ^ Pulleyblank 1995, p. 147.
  17. ^ Pulleyblank 1995, p. 16.
  18. ^ Pulleyblank 1995, pp. 18–19.
  19. ^ Peyraube 2008, p. 1007.
  20. ^ Pulleyblank 1995, pp. 20–21.


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