名古屋証券取引所 概要

名古屋証券取引所

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/17 18:50 UTC 版)

概要

名古屋株式取引所を前身とする、日本の地方都市に拠点を置く証券取引所(名古屋、福岡札幌)の一つ。所在地が面する通りの名称から伊勢町の通称でも呼ばれる。かつては、東京証券取引所(東証)、大阪証券取引所(大証)とともに日本の三大市場と呼ばれていた(大証は、2013年7月16日に東証と経営統合し、デリバティブ取引に特化している)。しかし、東京証券取引所への一極集中の影響を受け、売買高におけるシェアは0.02%(平成26年度の統計)と極少である[3]

株式市場として、上場基準の異なるプレミア市場・メイン市場、1999年に開設された新興企業向けの市場であるネクストがある。また株式以外にも、公社債市場、外国債市場、新株予約権付社債券(転換社債)・新株引受権付社債券(ワラント債)市場、新株予約権証券市場が開かれている。

前述の通り、近年は東証への集中により、当取引所への上場を取りやめる会社が相次ぎ、新規上場がなかった2014年には10年前と比較して上場企業数は約4割減少している[3]東海地方を拠点とする企業であっても知名度や売買活性化の面で東証上場が圧倒的に有利であるため、成長力のある企業は本店所在地に関わらず東証への上場を目指すのが現在では一般的である。売買システムも東京証券取引所の新システムarrowheadに依存しているため、東証の売買関連システムが停止すると名証を含む地方取引所も連鎖的に停止することとなり、地理的に東京と名古屋が離れていても地政学リスクは分散されない[4]。このため、日本全国を商圏とする大手企業が東証との重複上場のコストを嫌って東証へ一本化する流れが加速し、有名企業が名証から撤退(上場廃止)する事例が相次いでいる。

2015年の売買高は6億3863万株(前年比22%増)となり、4年連続で増加した[5]2017年(平成29年度)の年間売買代金は1401億円となり、札幌証券取引所の3335億円を初めて下回った[6]

一部のネット証券において当取引所に上場する株式を売買することができないことや、アナリストの目が届かず企業分析が困難なことなどから、東京証券取引所と比較して機関投資家や個人投資家の資金流入が少なく、売買が成立しない銘柄も多い。当取引所に単独上場する銘柄を対象としたインデックスファンドが存在しないことから、世界的に近年増加しているインデックス投資(パッシブ運用)の資金が入らないため、東証と比較して流動性・安定性に欠ける。その一方で、時価総額の小さな銘柄が多く少額の資金で大きな株価変動が狙えるため、仕手化やイナゴ投資などギャンブル性の強い値動きをする銘柄もある。

2022年4月4日に東京証券取引所が新市場区分(プライム市場・スタンダード市場・グロース市場)へ移行した事に伴い、当取引所もこれに合わせて同日付で市場第一部を「プレミア市場」、市場第二部を「メイン市場」、セントレックスを「ネクスト市場」へ名称を変更した[7][8]。プレミア市場への上場基準は東証プライム市場と同様に、これまでの市場第一部よりも厳しくなる[9]


  1. ^ a b c d e f 会社概要”. 2016年4月23日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 報告書|株主総会|名古屋証券取引所”. 2023年6月15日閲覧。
  3. ^ a b 苦戦が続く「名古屋証券取引所」日経bizアカデミー 2014/8/25
  4. ^ 名証も終日売買停止、システム障害で 日本経済新聞 2020年10月1日
  5. ^ 名古屋証券取引所で大納会 「中部、経済回復けん引」日本経済新聞 2015年12月31日
  6. ^ 札証の売買代金、名証抜く17年度6倍の3335億円日本経済新聞 2018年4月5日
  7. ^ 名証、「プレミア」「メイン」「ネクスト」に区分変更日本経済新聞 2021年5月26日
  8. ^ 名証、新市場スタート「プレミア・メイン・ネクスト」日本経済新聞 2022年4月4日
  9. ^ 名証再編、上場維持の厳格化 企業は様子見日本経済新聞 2021年7月19日
  10. ^ “道路の上にどっかり 名物の〝証券ガード〟 早くのいてくれ 市道路管理課 証券取引所 不況でいましばらく”. 毎日新聞. (1964年10月24日) 
  11. ^ 上場審査基準(プレミア市場・メイン市場)名古屋証券取引所
  12. ^ 上場審査基準(ネクスト市場)名古屋証券取引所
  13. ^ a b 市場の特性等を踏まえた上場制度の整備名古屋証券取引所
  14. ^ a b 名古屋証券取引所への重複上場について名古屋証券取引所
  15. ^ a b c 市場区分変更・他市場経由上場名古屋証券取引所
  16. ^ 上場廃止基準(プレミア市場・メイン市場・ネクスト市場)名古屋証券取引所
  17. ^ 当取引所市場の特性等を踏まえた上場制度の整備に係る「有価証券上場規程」等の一部改正等について名古屋証券取引所 2021年7月20日
  18. ^ 上場子会社のガバナンスの向上等に関する上場制度の整備に係る「有価証券上場規程」等の一部改正について名古屋証券取引所 2020年2月5日
  19. ^ 上場会社数”. 名古屋証券取引所. 2021年3月14日閲覧。






固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

「名古屋証券取引所」に関係したコラム

  • 株式の信用取引における三市場残高の見方

    株式の信用取引における三市場残高とは、東京証券取引所(東証)、大阪証券取引所(大証)、名古屋証券取引所(名証)の3つの証券取引所の発表する信用取引残高をまとめたものです。ここでは、株式の信用取引におけ...

  • ETFの銘柄の呼値は

    ETFの呼値とは、ETFの銘柄の最小の値動きする単位のことです。呼値は刻み値ともいいます。例えば、価格が1,000円の場合の呼値は1円と決められています(2012年9月現在)。よって、最小の値下りは9...

  • ETFのストップ安・ストップ高の値幅制限は

    ETFの銘柄には値幅制限が設けられています。値幅制限は、証券取引所が適正な価格を維持して投資家を保護することを目的に定めているものです。証券取引所では、前日の終値を基準として1日の値下がり幅と値上がり...

  • 株式の取引が行われる証券取引所の一覧

    2012年6月現在の日本の証券取引所、および、世界各国の証券取引所の一覧です。▼日本東京証券取引所(東証)大阪証券取引所(大証)名古屋証券取引所(名証)福岡証券取引所(福証)札幌証券取引所(札証)TO...

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「名古屋証券取引所」の関連用語

名古屋証券取引所のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



名古屋証券取引所のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの名古屋証券取引所 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS