修辞技法 敷衍(ふえん)

修辞技法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/21 13:35 UTC 版)

敷衍(ふえん)

短く話せば済む会話を敢えて長く形容し、意味を強調する手法。以下は例文。

  • この山は、かつて多くの登山家たちを拒んできたほど険しい。
    言いたいことは「この山は危険」ということだけであるが、どれほど危険なのかということを強調するため、「多くの登山家たちを拒んできた」という表現が加えられている。

パロディ

知名度の高い記事や事件などを借用して、文章を面白おかしくしたり、物事を揶揄、風刺したりする表現。以下は例文である(ネット掲示板の会話より抜粋)

  • 甲「サイダーに合う食べ物って何かある?」
  • 乙「天ぷらそば」
  • 丙「通だな」
  • 丁「ここには、宮沢賢治がおる」

ここで注意しなければいけないのは、宮沢賢治という人物を把握していないと、何がおかしいのか分からない点である。宮沢賢治は、行きつけの蕎麦屋で天ぷらそばと一緒にサイダーを頼む習慣があったと云われており、そのため「天ぷらそばとサイダー」の取り合わせが宮沢賢治を連想させるものとなっている。しかし、それは一般的な習慣とはいえないものなので、乙に対し、丙と丁は文章上のおかしさを感じているのである。よってパロディを用いる場合は、ある程度知名度の高い事物・人物についての、一般に浸透した情報を選ぶのが好ましい。

畳語法・畳句法・畳音法

言葉を重ねることで、意味を強調する手法。

  • 一時間経った、まだ来ない。それから30分、まだ来ない。いつまで経っても、彼はまだ来ない。
    畳句。「まだ来ない」という句を並べ、さんざん待ちわびていることを強調。
  • これこれ、これが欲しかったんだよ。
    畳語。これという語を並べ、これにあたる品が欲しかったことを強調。
  • ガラガラガラガラガラ…、無数の小石や礫が断崖絶壁から滑り落ちていく―。 
    畳音。擬音を並べることで、その度合いを強調。

疑惑法

曖昧とした論述を意図的に用いる手法。きっぱりとした回答を嫌うときのほか、結論を持たずとも、特定の対象を強く印象付けたい時にも用いられる。ためらいの文法に含まれるとされ、佐藤信夫他『レトリック事典』では主として5つの用例がある[3]

不的確な客観表現による疑惑法の用例
  • 大人と呼ぶにはまだあどけない、でも子供と呼ぶには逞しい、少年はそんな風格が漂っていた。
    同様の事柄を二つ並べることによって、作者が本当に形容したい間の表現を確立させようとしている。したがって、この二つのいずれが欠けても、文章が成立しない。
不的確な主観表現による疑惑法の用例
  • 試験の結果は早く知りたいし、知りたくもない。
    これは主語の人物の心のジレンマであり、おそらく「知りたくない」ということは自信がないと窺える。しかし、実際どのくらい得点したのかを知りたいのも事実である。
複数評価による疑惑法の用例
  • スポーツで大事なのは攻撃か防御か、攻撃が大事とも言えるし、防御が大事とも言える。
    疑惑法には比較表現の優劣を付けたくない場合に用いることが多い。おそらく、相手は白黒付けた結論を望んでいるはずだが、主語の人物は答えをはぐらかしているだけである。それが結果的に人それぞれの様々な評価に委ねられるものであると結論づけている。
自己否定を伴った疑惑法の用例
  • 子供の頃住んでた田舎が懐かしく、ふと思い出す。すごい田舎で、交通も不便で、近くに店は一つもなく、実家のボロ家は雨漏りなんかもしょっちゅうだったが…。
    後半だけだと子供の頃暮らしていた田舎に対する愚痴だけしか捉えられないが、それを敢えて大人になった今、思い出として蘇らせていることで、負の側面を相殺して余るほどの強い感情を読者に訴えかけている。だが、具体的に子供の頃の田舎の何が良かったのか、作者の中でも感情が漠然としているため、反語のように自己否定が込められた文面になっており、また捉えようによっては本当に田舎の生活が良かったのか自問自答する内容とも受け取れる。
自意識の強い疑惑法の用例
  • そいつは、すっとぼけた奴だけど、いつも近くにいて、俺の傍で笑ってくれるんだ。
    前述した、特定の対象を強く印象づける方法。これは主語の人物が相手に対し、好意を持った人物を暗に仄めかしているが、本人は自意識過剰気味に相手に対して特定の対象を強く訴えているのが読み取れる。

  1. ^ 諷喩 とは - コトバンク”. デジタル大辞泉. 小学館. 2011年4月5日閲覧。
  2. ^ 野内 良三 (2005) 『日本語修辞辞典』 国書刊行会
  3. ^ 佐藤信夫他『レトリック事典』





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