交響曲第1番 (マデトヤ) 交響曲第1番 (マデトヤ)の概要

交響曲第1番 (マデトヤ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/08 22:11 UTC 版)

概要

第一次世界大戦に由来する敵対意識が続く中であったが、マデトヤはヴィープリ管弦楽団の指揮者職(1914年から1916年)を引き受けるべく1914年9月にロシアへと赴いた[1]。彼はこのオーケストラが比較的荒廃した状態にあることに気づく。彼が編成できた音楽家は19人しかおらず、この現実のために小編制の楽曲を探したり題材を小編制へ編曲することに多くの時間を割くことを余儀なくされた[2]。そうした中でも、彼は駆け出しの自分のキャリア最大の仕事である交響曲に着手する時間を見出していった。指揮者としての職責があったため作曲は幾度も阻まれることになったが[3][注 1]フィンランド最大の交響曲作家であり自身の師でもあったジャン・シベリウスから激励の手紙を受け取っていた。

貴方が交響曲の仕事について書いてくれたことは私にとって望外の喜びです。この分野で貴方が最大の成功を達成するだろうと感じます、というのも貴方には人を交響曲作家たらしめる特性が的確に備わっていると思うからです。これは私が確信するところです。
ジャン・シベリウス、1914年10月、かつての弟子へ宛てた手紙[4]

1916年2月10日、マデトヤは公に交響曲作家の系譜に名を連ねることになる。ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団が作曲者自身の指揮で新作を演奏したのである。同楽団の創設者、首席指揮者であったロベルト・カヤヌスが曲の献呈を受けた。シベリウスの「確信」には先見の明があったと明らかになった。評論家がこの新作に温かい評をおくり、新たな交響曲の才能が現れたというのが一般的な印象だったからである。例として、フィンランドの評論家であるエヴェルト・カティラフィンランド語版は『ウーシ・スオミ英語版』紙上でマデトヤの交響曲を賞賛し、「この交響曲はその構成の論理と管弦楽法の半透明な明るさにより訴えるものがある」と記している[4]

初演に立ち会ったシベリウスも本作の美しさを特筆している[5]。しかしながら、彼の師としての目にはかつての弟子の成熟は幾分停滞して見えていた。例えば、本作の一部の論評においてマデトヤの音楽にシベリウスの影響が認められると論じられた際[注 2]、彼はマデトヤが比較に気を悪くしたのではないかと気を揉み、マデトヤの性格的な「鬱気質」を「不機嫌」と勘違いした[6]。突如、シベリウスはマデトヤが傲慢であると考えるようになり、彼がシベリウスと友好と敵対の関係を繰り返していたカヤヌスと距離を詰めていく姿に懸念の目を向けていった。「マデトヤに会った。こう言うのは残念であるが、この者は直近の成功後に非常に横柄になってしまった」と、シベリウスは日記に悩みを書き留めている。「カヤヌスが世辞によって彼を褒め殺しにし、彼にはそれが何であるのかを理解する目が養われていない[6]。」

楽器編成

ピッコロフルート3、オーボエ2、コーラングレクラリネット2、バスクラリネットファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバティンパニトライアングルシンバルバスドラムスネアドラムタンバリンハープ弦五部


  1. ^ 一例として、終楽章が完成したのは初演予定の前日だった。
  2. ^ 『Hufvudstadsbladet』紙のカール・ヴァゼニウスフィンランド語版などがその一例である。
  1. ^ Pulliainen (2000c), p. 4
  2. ^ Pulliainen (2000c), p. 5
  3. ^ Pulliainen (2000b), p. 5
  4. ^ a b Korhonen (2013a), p. 4
  5. ^ Tawaststjerna (1997), p. 140
  6. ^ a b Tawaststjerna (1997), p. 81
  7. ^ a b c d e Stevenson, Joseph. 交響曲第1番 - オールミュージック. 2022年12月4日閲覧。
  8. ^ a b c Salmenhaara (1992b), p. 5
  9. ^ Korhonen (2013a), p. 5
  10. ^ Godell (2001), p. 126–27
  11. ^ Scott (2014), p. 347–48


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