不当利得
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/19 23:41 UTC 版)
不当利得の効果
不当利得の一般的効果
不当利得の効果は当該利得についての返還義務の発生である(703条・704条)。
返還すべき物は原則として利得の原物返還によるが、社会観念上不能であれば価格返還(返還時の価格)による[27]。
返還義務の範囲は後述のように善意の受益者と悪意の受益者とでは異なるが(善意の受益者に過失があった場合の扱いについては見解が分かれている)、後述のように給付利得の場合にはこの区別は適合しにくい面があるとされる[28][29]。
当事者双方に返還義務を生じる場合には両者は同時履行の関係に立つ(明文はない。533条類推適用)。
なお、不当利得返還請求権は通常の債権と同様に「権利を行使できるようになった時から10年、権利を行使できることを知った時から5年」の消滅時効にかかる(166条)[30]。
善意の受益者の返還義務
善意の受益者は、その利益の存する限度(現存利益の範囲)において、これを返還する義務を負う(703条)。問題となっている利得が自己に帰属していると信じていた場合、その信頼を保護する必要があると考えられるためである。他方、このことから利得者が自己の財産に対するのと同一の注意を怠ったことによって目的物に毀滅を生じた場合には責任は軽減されないと解されている[31]。
現存利益の基準時は返還請求時である(多数説)[32]。
受益者が善意の場合、既に収取された果実については返還義務を負わないが(189条)、価格返還の場合、利得の運用益は損失者が当然に取得したであろう範囲においては現存利益に含まれるものと解されることから返還義務を負う(最判昭38・12・24民集17巻12号1720頁)[33]。
悪意の受益者の返還義務
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならず、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う(704条)。悪意の受益者は当該利益を保持することができる法律上の原因が自己にないことを知っている以上、保護の必要はないからである[34]。
受益者が悪意の場合にも原則は原物返還であり、社会通念上原物返還が困難な場合に価格返還となり、価格返還の場合に限って利息を付すことを要すると解されている[35]。
本条後段に定められる損害賠償責任の性質について:
判例は、 「民法704条後段の規定は,悪意の受益者が不法行為の要件を充足する限りにおいて不法行為責任を負うことを注意的に規定したものにすぎず,悪意の受益者に対して不法行為責任とは異なる特別の責任を負わせたものではない。」という。(最判平21・11・9民集63巻9号1987頁)。
この賠償請求権の時効期間についても(166条)による。[35][36]。
類型論との関係
給付利得
不当利得の範囲は受益者の主観(善意・悪意)に応じて異なるが、この区別は内容の点からみると給付利得においては妥当でない場合があり、全体的な公平の点から調整を図る必要性があるとされる(強迫による売買によって商品の引渡しを受けた者が当該売買を取り消した場合にも悪意者として扱うべきでないとされる)[28][29]。
侵害利得
他人の物を無断で使用している場合などの侵害利得類型においては物権法との関係が問題となる。
- 果実
- 目的物滅失
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- ^ 2020年4月1日施工の民法改正までは167条1項によるべきとされてきた。2020年4月1日施行の民法改正の時効期間の統一により167条は「人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効」の条文になっている。
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