ロングイェールビーン 宗教

ロングイェールビーン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/24 09:38 UTC 版)

宗教

スヴァールバル教会

スヴァールバル教会は、スヴァールバル諸島で唯一、かつ世界最北の教会である。元々はスピッツベルゲン救世主教会(Vår frelsers kirke på Spitsbergen)という教会があり、これは1921年にわずか50日間で建てられSNSKと内国伝道団により運営されていたが、1943年のドイツ軍による砲撃で焼けた。現在のスヴァールバル教会は1958年に再建されたものである。

ノルウェーの教会は一般にノルウェー国教会の教区に属し各自治体が運営と維持に責任を持っているのに対し、スヴァールバル教会は国営であり、法務・警察省(Justis- og politidepartementet)の予算で運営され、国有建造物管理局(Statsbygg)が管理しているという点で独特である。ノルウェーの法律は一部の基本的な法律(民法・刑法・刑事訴訟法など)を除いてスヴァールバル諸島には適用されないため、教会法も適用されない。

ロシアの炭鉱町バレンツブルクとポーランドの研究基地Hornsundに対しても、それぞれ正教会やノルウェーのカトリック教会と協調して教会としての機能を果たしている。

教育

保育園

ロングイェールビーンには普通の保育園が2つと家庭保育園があり、計103名の児童が通っている(2004年)。本土の保育サービスが自治体の援助で行われるのに対し、スヴァールバルでは子ども・平等・社会省の支援を受けている。本土の保育園法はスヴァールバルには適用されないが、子ども・平等・社会省の支援条件として同様の枠組みが用いられている。

ロングイェールビーン・スクール

ロングイェールビーン・スクールはスヴァールバル諸島における初等・中等教育を担う学校である。SNSKが操業を始めた年から教育がはじまり、1921年に教会ができると、その一室が教室となる。 1937年には制度化され、翌年独自の校舎ができた。第二次世界大戦中にはイギリスに疎開して教育が続けられた。戦後人々が戻ってきたとき校舎は焼けていたが、1951年にできた新議事堂に移り、さらに1971年には新校舎が落成した。学校運営は1976年にSNSKから教会・教育・研究省へ、2007年からは地方行政府へと移管された。初等教育学童保育中等教育にそれぞれ224、62、24名の児童がいる。

大学センター

大学センター

1993年秋、スヴァールバル大学教育課程(Universitetsstudia på Svalbard; UNIS)が開設された。その後スヴァールバル大学センター(Universitetssenteret på Svalbard)と改称し独立した組織になったが、もともとオスロ大学ベルゲン大学トロンハイム大学トロムソ大学を基礎としてできた組織である。2006年4月にはスヴァールバル・リサーチパークの中に移転した。

世界最北の高等教育機関であり、北極圏に関する生物学、地質学、地球物理学、工学などの課程があり、学士、修士、博士の学位を授与している。教育は英語で行われ、およそ350名の学生のうち半数がノルウェー、残り半数以上は北欧諸国の出身である。20名の常勤の教授、21名の助教、120名の客員講師らがいる。

研究

EISCATのレーダー

1990年代ノルウェー政府はロングイェールビーンに石炭採鉱以外の活動を創出したいと考え、研究と観光に集中することになった。今では研究と高等教育は地域経済の柱の1つとなり、直接的にも間接的にも多くの新たな雇用が創出された。中核となるのはスヴァールバル・リサーチパーク、EISCATスヴァールバル・レーダー、スヴァールバル衛星通信局、UNIS、ノルウェー極地研究所である。さらにノルウェーと国際的研究との調整をするスヴァールバル・サイエンスフォーラムができた。

スヴァールバル・リサーチパークは極圏の研究や教育についての問題をロングイェールビーンに存在する研究者同士の国際協調によって解決する目的がある。フィールド調査などを行う共通のインフラなどが用意されている。

欧州非干渉散乱(EISCAT)は国際的な共同研究組織であり、ロングイェールビーンから8km東のBreinosa山にレーダー施設を運営している。半径32mの可動式パラボラと、地球の磁場の方向へ向けた半径42m固定式のパラボラの2基のアンテナからなる。このレーダーは大気、特にオーロラやオゾンの研究に用いられている。

スヴァールバル衛星通信局(SvalSat)はロングイェールビーンの西側、スヴァールバル空港を見下ろす台地にある世界最北の衛星地上局で、極軌道衛星の制御やデータ受信を行っている。Kongsberg衛星サービスとEUMETSATのアンテナが2基ずつ、NASANOAAが1基ずつ、計6基のアンテナがある。またこの通信局は、南極のドロンニング・モード・ランドにあるTrollSat衛星通信局との組み合わせにより、世界で唯一極軌道衛星と毎周回接続できる衛星通信局となっている。[5]

さらにグローバル作物多様性トラストが管理するスヴァールバル世界種子貯蔵庫が存在する。この保存庫は温暖化、洪水、大火、核戦争といった自然ないし人的な災害から保護されるように設計されている。周囲から隔絶していることと、永久凍土の中で温度が安定していることからこの地が選ばれた。[6]

通信・メディア

Skjæringa地区にあるTelenor Svalbardは、1930年にスヴァールバル・ラジオとして設立された。この鉄塔からはテレビ、ラジオ放送、GSM携帯電話およびモバイル・ブロードバンドの電波が送信されている。

ノルウェー郵便の郵便局がメインストリートの銀行と同じ建物にある。郵便番号は9170と9171。

Svalbardpostenは世界最北の週刊新聞である。1948年に4ページの壁新聞として始まったが、現在はトロムソで印刷されて毎週金曜日に発行されている。1996年と2000年にLandslaget for Lokalaviser(ノルウェー地方紙協会)のÅrets lokalavis(地方紙・オブ・ザ・イヤー)に選出されている。

ノルウェー宇宙センター海底光ケーブルハーシュタからスヴァールバルへひかれている。通信容量は20Gbpsであるが、設計上は最大2500Gbpsまで拡張可能となっている。主な顧客はSvalSatをはじめとするスヴァールバルの研究施設群であるが、帯域の一部を使ってTelenorが一般向けの通信サービスを提供している。インターネットの他にIPベースの電話とテレビが使えるトリプルプレイと呼ばれるサービスがあり、これによってCanal Digitalの衛星放送35チャンネルや、ラジオ放送とそのオンデマンド音楽サービスなども利用可能である。ロングイェールビーンとスピッツベルゲン島の他の居住地との間は30-155 Mbit/sの無線で接続されている。

GSM携帯電話はロングイェールビーンと、アドベント谷およびイース・フィヨルドの大部分、Svea炭鉱との間のRein谷が圏内である。2003年に第3世代携帯電話UMTSが導入され、2008年にはモバイルブロードバンド接続HSDPAが導入された。スヴァールバールは電子通信法の適用を受けないが、Telenorが本土と同様NetComに対してホスティングを行っておりNetComのサービスエリアはTelenorと同じになっている。

1949年からハーシュタ・ラジオの短波を使った無線電話があったが、1979年にイースフィヨルド・ラジオによる世界最北の静止衛星地上局が開設され、衛星電話回線で電話網に接続された。この電話回線の1つを使ってノルウェー放送協会(NRK)のラジオ番組が送信された。NRKテレビは1984年12月22日にユーテルサットI-F2を使った放送網にスヴァールバルを接続し、ヨーロッパで初めて衛星生放送を行った。それ以前はビデオテープで送られた2週間遅れの番組を地元放送局が放送していた。SvalSat地上局は極軌道衛星と通信するには絶好の場所であったが、光ファイバーネットワークに接続しておらずデータを静止衛星経由で転送する必要があった。そこで2002年にトロムソからスヴァールバルへ海底ケーブルを敷設する計画が立ち上がった。結局トロール船が活動していない水域ということで本土側がハーシュタに変更され、2003年夏にケーブルが敷設され翌年使用開始された。


  1. ^ Dagmar Hagen & Tommy Prestø (2007). Biologisk mangfold - temarapport som grunnlag for arealplan for Longyearbyen planområde. Norsk institutt for naturforskning 
  2. ^ Longyearbyen Climate Guide, Svalbard”. Weather2Travel. 2010年6月14日閲覧。
  3. ^ ちなみに1920年のノルウェーの歳入が1250万クローネであった
  4. ^ https://www.politico.eu/article/coal-phaseout-reaches-remote-arctic-archipelago-svalbard-norway/
  5. ^ Kristin Straumsheim Grønli (2006年12月13日). “Øyet i himmelen laster ned på Svalbard”. Forskning.no. 2007年12月9日閲覧。
  6. ^ The Seed Bank Atop the World. latimes.com. Retrieved October 12, 2007.






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