ミトコンドリア病
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/29 03:31 UTC 版)
ミトコンドリア病 | |
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MELASでの筋生検。ゴモリ・トリクローム染色を行うと「赤色ボロ線維」と呼ばれる、このような異常ミトコンドリアの集積像が見られる。 | |
分類および外部参照情報 | |
診療科・ 学術分野 | 内分泌学 |
ICD-9-CM | 277.87 |
DiseasesDB | 28840 |
MeSH | D028361 |
GeneReviews |
病態
ミトコンドリアで発生した異常が原因で、ミトコンドリアでATPが充分に産生できなくなるために発症する[注釈 1]。このため、ミトコンドリア病を発症すると、特にATPを多く必要とする場所で症状が起こり易い。すなわち、脳、骨格筋、心筋が異常を起こす場合が多く、これがミトコンドリア脳筋症とも呼ばれる理由である。しかしながら、その機能の維持のためにATPを多く消費する場所は、他にも存在するため、そのような場所でも症状が顕在化する場合もある。
これに加えて、体内全てのミトコンドリアが一様に異常を来たすとは限らないため、また、ミトコンドリアの機能低下の度合いも全身で一様とは限らないため、一口にミトコンドリア病と言っても、多彩な病態を示す。
またATPが充分に産生できない代償として、嫌気的なATP産生の仕組みが異常に酷使される。この結果、解糖系で発生したピルビン酸が蓄積したり、解糖系を動かし続けるために必要な分子を再生するために乳酸が蓄積したりする場合がある。
なお、糖尿病のような病態を示す場合もあり、糖尿病の1パーセントは、ミトコンドリア病であるとも考えられている。
かつてはミトコンドリアDNAに何らかの変異が起きた結果として、発症するのだろうと推定されていた。しかし、確かにミトコンドリアDNAの異常が原因と考えられる場合もある一方で、必ずしもミトコンドリアDNAの異常が原因でない場合もあると判ってきた。例えば、ミトコンドリアDNAではなく、細胞核の側のDNAの変異によって起こる場合も有ると判明した[注釈 2]。
疫学
多くの場合で、血縁者など遺伝によるのではなく、孤発性でミトコンドリア病を発症する。つまり、ミトコンドリアでのATP産生は、要するに、電子伝達系で酸素分子に高エネルギーの電子を押し付けて行っているため、いわゆる活性酸素がミトコンドリアは発生し易く、これが時にミトコンドリアの打撃を与えたまま、修復に失敗した結果、偶発的に孤発性のミトコンドリア病を発症するなどの原因が考えられている。
ただ、ミトコンドリアDNAの異常が原因のミトコンドリア病は、基本的にミトコンドリアDNAは母親の卵細胞から受け継がれるので、点突然変異、つまり、1つの塩基が置き換わる変異の場合は、母系を伝わり遺伝する事例がある。
また、核遺伝子の異常が原因のミトコンドリア病は、多くの場合で常染色体劣性遺伝である。
診断
ミトコンドリア病で筋肉に異常を起こした患者に対して筋生検を行って、顕微鏡で採取した筋組織を調べると、しばしば、筋鞘膜下に赤色ボロ線維(ragged red fiber: RRF)と呼ばれる物が見える。これは異常なミトコンドリアが多数集積した場所である。
なお、遺伝子診断を行う場合もある。
注釈
- ^ ミトコンドリアで行う好気的なATP産生は、ミトコンドリア以外で行う嫌気的なATP産生に比べて、圧倒的に効率が良い。ミトコンドリア外で行われる嫌気的な解糖系だけの場合と、ミトコンドリア内でのTCAサイクルと電子伝達系との合計を比較して、グルコース1分子につき、何分子のATPが産生できるかを計算すれば、一目瞭然である。
- ^ チトクロームc酸化酵素欠損症の一部などが、その例である。
- ^ 詳細はMELASの項目を参照。
出典
- ^ “タウリン散98%「大正」における効能・効果追加等の承認取得に関するお知らせ” (html). 大正製薬 (2019年2月21日). 2020年1月2日閲覧。
- ^ 後藤雄一. “21 ミトコンドリア病” (PDF). 2015年12月13日閲覧。
- ^ 佐藤 哲男・仮家 公夫・北田 光一(編集)『医薬品トキシコロジー(改訂第3版)』 p.31 南江堂 2006年4月15日発行 ISBN 4-524-40212-8
- 1 ミトコンドリア病とは
- 2 ミトコンドリア病の概要
- 3 治療法
- 4 脚注
固有名詞の分類
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