ブラジルボク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/29 23:12 UTC 版)
概要
パウ・ブラジルの名は「赤い木」の意味で、染料のブラジリンが取れるインド原産のスオウのポルトガル名による。外見と用途が似ていたため、ポルトガル人によって本種もパウ・ブラジルと呼ばれるようになった。ブラジルの国号は本種に由来する。
いずれも心材から紅色色素(ブラジリン)が得られ、これを染料として用いた。かつてはブラジルの主産品であったが、化学染料の登場によって廃れた。しかし18世紀にフランスのフランソワ・トゥルテがこの心材が持つ振動減衰性の低さに着目し、弦楽器の弓に最良の材料であるとして採用すると、その後も需要は高止まりした。ペルナンブコ(フェルナンブコ)とは弦楽器業界におけるブラジルボクの心材の通称で、大西洋側の山地(フェルナンブコ州)に産出する希少資源と定義されている[3][4]。
枯渇と代替品
ブラジルボクは過度の伐採により絶滅の恐れがあるため、IUCNに絶滅危惧種として登録されている。また2007年6月にハーグで開かれたワシントン条約締約国会議において、ブラジルボクは同条約附属書II[注 2]に記載された。
2000年、ブラジルボクの生態系保全を目的に研究や啓蒙活動を行う団体IPCI(International Pernambuco Conservation Initiative)が米国で設立され、2002年にドイツ、カナダでも設立された[7]。2004年からはブラジル政府機関の協力の下、PPB(Programa Pau-Brasil)として植林活動を本格的に始動している[8]。
弓の代替材料として様々な試みが行われてきたが[9]、同じブラジル産の熱帯雨林材であるマサランデュバ (Manilkara bidentata, Balatá[注 3])、イペなどの他、最近では繊維強化プラスチック(FRP)、カーボンファイバー、グラスファイバーなど人工繊維製弓の改良も進んでいる。
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花
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葉
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突起のある幹
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イリェウスの船長で発見された木の丸太の数の地図
脚注
注釈
- ^ クロンキスト体系ではジャケツイバラ科とする。
- ^ 輸出入には、輸出国の政府が発行する許可書が必要[5]。2017年1月13日時点版にCaesalpinia echinata #10 が掲載されている[6]。
- ^ これを弦楽器業界ではブラジルウッド、Neo ブラジルウッド[3]とも称するが、近縁関係にないビワモドキ亜網カキノキ目アカテツ科のマサランデュバを、ブラジルウッドと称するのはかなり問題がある。
出典
- ^ Varty, N. 1998. Caesalpinia echinata.In: IUCN 2008. 2008 IUCN Red List of Threatened Species. <www.iucnredlist.org>. Downloaded on 30 April 2009.
- ^ Gagnon, Edeline; Bruneau, Anne; Hughes, Colin E.; Paganucci de Queiroz, Luciano; Lewis, Gwilym P. (2016). “A new generic system for the pantropical Caesalpinia group (Leguminosae)”. PhytoKeys 71: 39. doi:10.3897/phytokeys.71.9203.
- ^ a b 弓の豆知識 - 杉藤楽弓社
- ^ フェルナンブーコの話 〜その1〜 - 文京楽器
- ^ ワシントン条約について TRAFFIC
- ^ ワシントン条約の対象種(附属書)植物(2017年10月4日発効) (PDF) TRAFFIC
- ^ IPCI - International Pernambuco Conservatory Initiative USA
- ^ フェルナンブーコの話 〜その2〜 - 文京楽器
- ^ Materials for Violin Bows - What are the Alternatives for Pernambuco? - マックスプランク研究所の研究発表
固有名詞の分類
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