ファイアーエムブレム
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ティアリングサーガに関わる問題
問題の始まりは『ファイアーエムブレム』の開発会社であるインテリジェントシステムズ(以下「IS」)の開発者の一人が、同社を退社して開発会社ティルナノーグを立ち上げたことにある。ティルナノーグの代表者である加賀昭三はそれまで『ファイアーエムブレム』の開発に深く関わっており、「ファイアーエムブレムの生みの親」と見なされていた人物である。
ゲーム雑誌『ファミ通』の発行元でありゲーム販売も手がけるアスキーのバックアップの元で、ティルナノーグは初代PlayStation用ソフト『エムブレムサーガ』の開発を始めた。これに対し任天堂は、著作権侵害として抗議していたが、アスキーから分社したエンターブレインは問題となったソフトのタイトルを『ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記』に変更し、内容を一部手直ししたうえで2001年5月24日に発売した。
加賀は当初FEシリーズの完全な続編として『エムブレムサーガ』を製作していたらしく、『ファミ通』での発表では過去5作品に登場した3大陸に次ぐ第4の大陸「フォーセリア」を舞台とし、マムクートが多くの部分で物語に関わり、「某変身系の少年」が謎の吟遊詩人、賢者として重要な役回りを演じるとして、「チェイニー」が登場すると仄めかしていた。また『暗黒竜と光の剣』と同年代の物語であることを明かし、必然性があれば他のキャラクターも登場させたいと発言していた。
作品中の主な相似点については、キャラクターや世界観・ゲーム性が酷似していること、『ファミ通』に掲載された記事で『ファイアーエムブレム』シリーズと世界観が繋がっていることを匂わせる記述があったことなどが挙げられる。ただし、「関わっているゲームクリエイターが同一人物である以上、内容に似通ったところが出てくるのは当然」という意見もある。
この作品に参加している『ファイアーエムブレム』シリーズに関ったスタッフは、前述の加賀昭三と『ファイアーエムブレム トラキア776』のキャラクターデザインをしていた広田麻由美の2名だけで、その他のスタッフはまったく関係が無い。
任天堂とISは『ティアリングサーガ』の発売を、不正競争防止法違反と著作権侵害として販売差し止めと賠償金を求める訴訟をティルナノーグとエンターブレインに対して起こした。その判決内容は以下の通り。
- 一審判決(東京地裁:2002年11月14日)
- 任天堂側の請求を全て棄却。
- 二審判決(東京高裁:2004年11月24日)
- 著作権侵害は認められず、不正競争防止法違反においては任天堂側の請求が一部認められ、エンターブレイン側に任天堂側へ約7600万円を支払うように命じる。
- 最高裁判所(2005年4月12日)
- 任天堂の上告を棄却。二審判決が確定。
裁判所が任天堂の損害として認めたのは、「エンターブレイン側が『ティアリングサーガ』を『ファイアーエムブレム』と関係のあるソフトであるかのように宣伝して『ファイアーエムブレム』のブランドイメージを利用した」という箇所のみで、著作権侵害は認めていない。ただし、エンターブレイン側が当初主張した『トラキア776』の著作権は「IS」にない、との主張も認められなかった[11]。
この事件以降、任天堂は広報における方針を大幅変更し、それまで『ファミ通』に対して行われていた情報の一番出しを取りやめるなどの措置を採った。
また、『ファイアーエムブレム』シリーズのメディアミックス展開が大幅に縮小整理されたうえで、それまで同業他社と比較して各々の制作サイドの裁量権に大らかだった方針も改められ、設定や世界観などを任天堂が強く『公式』を管理するようになった。
なお、裁判の席において、エンターブレイン側陳述等で、同じ開発チームの別作品の例として、『ゼノギアス』と『ゼノサーガ』、『タクティクスオウガ』と『ファイナルファンタジータクティクス』が引き合いに出されている。今回の裁判では、これらのゲームのように独立したゲームデザイナーが、元の会社で作っていたのと同ジャンルのゲームを作っても、内容に直接関係がなければ著作権的には問題がないと判例として確立したことに意義があるといえる。
2005年5月には、エンターブレインより『ティアリングサーガ』の続編である『ベルウィックサーガ』がPlayStation 2用ソフトとして発売された。機種が違うとはいえ、『ファイアーエムブレム』シリーズの『蒼炎の軌跡』とほぼ同時期の発売となり、本家と分家の市場における直接対決となった。また、2007年4月にはエンターブレインより『暁の女神 パーフェクトガイドブック』が刊行され、2001年のファミ通文庫『紋章の謎・下巻』以来、6年ぶりに同社による関連書籍の発売が再開された。
注釈
- ^ 主人公の側近の上級騎士、「赤」と「緑」の騎士コンビ、赤髪の女竜騎士、長髪で美形な男剣士など。
- ^ 商標を保護するために、似たような商標を予め取得しておくという手法は他にも見られる。一例として、カシオ計算機の主力商品「G-SHOCK」は、「A-SHOCK」から「Z-SHOCK」まですべて取得している。
- ^ グラン暦440年。『聖戦の系譜』の約320年前。
- ^ 一部作品では不可能。
- ^ 『暗黒竜と光の剣』では不可能。リメイク作品ではもちろん改善されている。
- ^ 『トラキア776』では最低出撃人数が定められており、主人公以外全員死亡や捕虜などで誰もいないなどの状況を除いて基本的に2人以上、最大人数未満の各マップごとに定められた人数である。最低出撃人数に疲労のないキャラが足りない場合は低い順に出撃できる。
- ^ 『封印の剣』以降では、設定で全自軍ユニットの行動が終了したら自動でフェイズエンドできるようになった。
- ^ 『暁の女神』を除く。
- ^ 主に剣・槍・斧・弓・魔道書。
- ^ 通常の与ダメージが7であれば、特効によって3倍の21になるなど。倍率など計算式は作品によって異なる。
- ^ 本シリーズにおける成長率とは、「ユニットがレベルアップしたときに、あるパラメータが1ポイント上昇する確率」を指す。作品・ユニットによっては100%を上回る例外も存在し、その場合は必ず1ポイント上昇し、100%を超えた分の確率で2ポイントの上昇となる。
- ^ 「老人キャラは全体的に成長率が低い」「女性キャラは技・速さ・幸運に偏っている事が多い」「物理職キャラは魔防、魔法職キャラは守備が伸びづらい」など、ある程度の傾向自体は存在している。
- ^ 『封印』におけるアーマーナイト、『新・紋章』における戦士、『蒼炎』『暁』の義兄弟など。
- ^ 一部作品では通常ユニットと違いはない。
- ^ 聖戦の系譜など一部の作品は1ダメージ固定。
- ^ 『トラキア776』と『蒼炎の軌跡』『暁の女神』では騎馬系ユニットは救出できない。『トラキア』では下馬すればできるが、『蒼炎』では下馬すらできないため絶対救出できない。また、GBA作品では騎馬系ユニットは体格を上げると救出力が低下する。
- ^ DS版を含まない。
- ^ 聖戦の系譜ではレベル1に戻らないため、この手法のメリットはない。
- ^ HP回復効果は利用できることが多い。
- ^ 魔法が使えない。
- ^ 当然そこで起こるイベントも発生しなくなる
- ^ 任天堂公式ガイドブック ファイアーエムブレム百科「FIRE EMBLEM秘話 その2・inCF」より。上記の脚注「ほぼ日刊イトイ新聞 - 樹の上の秘密基地『ファイアーエムブレム封印の剣』 そのCMを誰が作ったか? 倉恒良彰インタビューその1 “スタコラ逃げろ、ドツボにはまる”」のコメントとかなり一致しているが、書籍においてはスタッフ名が全く記載されていないため。
- ^ 当時、ジャンル名はこう表記されていた。
- ^ 『ファイアーエムブレム・ザ・コンプリート』「懐かしき広告秘話」より。このインタビューでは、上記の脚注「ほぼ日刊イトイ新聞 - 樹の上の秘密基地『ファイアーエムブレム封印の剣』 そのCMを誰が作ったか? 倉恒良彰インタビューその1 “スタコラ逃げろ、ドツボにはまる”」のコメントと全て一致しているが、書籍においては「任天堂(のスタッフ)」という記述しかないため。
- ^ CMに記述されている文章をそのまま記載。
出典
- ^ “島田ひろかずさんの全作品リスト”. 島田ひろかずさんのページ/松村ヨシオ (2006年1月5日). 2011年8月2日閲覧。
- ^ 屋敷悠太 (2023年1月20日). “「ファイアーエムブレム エンゲージ」のマンガが最強ジャンプと少年ジャンプ+にて3月3日より連載決定”. GAME Watch (インプレス) 2023年2月24日閲覧。
- ^ “「ファイアーエムブレム」のアンソロが10年ぶり刊行、表紙は冨士原良”. コミックナタリー (ナターシャ). (2014年12月24日) 2015年1月16日閲覧。
- ^ “FEのホームページを作っている方へ”. 2000年3月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月16日閲覧。
- ^ 『刊行前から新聞・テレビ・ラジオで大注目! 期待に応えて『オタク用語辞典 大限界』、限界突破で堂々出版!!』(プレスリリース)株式会社三省堂、2023年10月23日 。2023年10月23日閲覧。
- ^ 商標登録5019473号、称呼(参考情報)。権利者株式会社インテリジェントシステムズ。
- ^ “幻影異聞録#FE”. 任天堂. 2015年9月11日閲覧。
- ^ “ファイアーエムブレム無双|Nintendo Switchソフト”. 任天堂. 2017年6月14日閲覧。
- ^ “ファイアーエムブレム無双 風花雪月|Nintendo Switchソフト”. 任天堂. 2022年2月10日閲覧。
- ^ キルタイムコミュニケーション編 『ファイアーエムブレム聖戦の系譜を遊びつくす本』 開発者Q&Aより(株式会社キルタイムコミュニケーション 1996年)
- ^ 二審判決文
- ^ 『FIRE EMBLEM WORLD』「FEW HOT NEWS」より。
- ^ fireemblemjpのツイート(583398593538560000)
- ^ a b 大乱闘スマッシュブラザーズX公式ホームページ『ファイアーエムブレム:ファイアーエムブレムのテーマ』
- ^ a b c 大乱闘スマッシュブラザーズX公式ホームページ『音楽』から『?????』の「隠しを含めた全曲リスト」のリンク先より。
- ^ a b ほぼ日刊イトイ新聞 - 樹の上の秘密基地『ファイアーエムブレム封印の剣』 そのCMを誰が作ったか? 倉恒良彰インタビューその1 “スタコラ逃げろ、ドツボにはまる”
- ^ エンターブレイン『大乱闘スマッシュブラザーズfor NINTENDO 3DSファイティングパーフェクトガイド・極』より。
- ^ ゲーム音楽が夢の共演を果たすオーケストラコンサート“ファミ通PRESS START 2007”開催!
- ^ 大阪でも開催! ゲームオーケストラコンサート“ファミ通PRESENTS PRESS START 2007”
- ^ ファミ通.com「ゲーム音楽のオーケストラコンサート“PRESS START 2014”は『スマブラ』の楽曲尽くし! ファン歓喜の模様をリポート」
- ^ 社長が訊くリンク集 - 桜井政博さんが訊く『ファイアーエムブレム新・暗黒竜と光の剣』第1回「18年前の話」
- ^ 佐野真砂輝&わたなべ京公式HP「TWIN CASTLE」Works news 2011年4月22日「goo 募金チャリティー壁紙」より。
- ^ Nintendo DREAM、2014年10月号「『大乱闘スマッシュブラザーズ for ニンテンドー3DS / for Wii U』スタートアップマスターガイド」より。
- ^ ファミ通DS+Wii 2014年10月号「『大乱闘スマッシュブラザーズ for ニンテンドー3DS / for Wii U』ファイターズガイド」より。
- ^ Nintendo 大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS SMASH BROTHERS GUIDEパンフレット「ファイター紹介&ワザ表」より。ルキナの掲載は無い。
- ^ Nintendo DREAM 2004年9月号、『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U』より。
- ^ 大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U公式HP「音楽」
- ^ GOODSページはこちら - -愛と勇気の25周年記念- ファイアーエムブレム祭
- ^ Nintendo DREAM 2016年2月号P44『ファイアーエムブレムパーティ』より。
- ^ スタッフクレジットより。
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