ビリルビン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/17 05:42 UTC 版)
毒性
非抱合型ビリルビンによる新生児の高ビリルビン血症は、脳の特定の領域にビリルビンが蓄積することによって起きるが、この疾病は核黄疸(kernicterus)と呼ばれており、様々な神経障害、発作、異常反射、異常眼球運動という回復不能な障害を引き起こす。新生児では血液脳関門が充分に発達しておらず、ビリルビンが脳間質に自由に移動できるため新生児高ビリルビン血症の神経毒性が発現するが、ある程度成長すると血中のビリルビンの濃度増加に対して抵抗力を持つようになる。特定の慢性疾患の状況下での発生はさておき、新生児は抱合型ビリルビンを腸内に排泄して解毒する腸内細菌を欠いているため(大人に比べて新生児の大便の色が薄い大きな理由でもある)、新生児では一般的に高ビリルビン血症のリスクが高い状況にある。抱合型ビリルビンはβ-グルクロニダーゼ酵素により非抱合型ビルビリンに分解されるが、その大部分は腸肝循環によって再吸収される。
上記のような毒性を有する一方で、適正なレベルのビリルビンには、活性酸素やフリーラジカルによる酸化ストレスから細胞を保護しているという可能性が指摘されている[3]。
血液検査
総ビリルビン
血液検査ではビリルビン全体の量(直接ビリルビンと間接ビリルビンの合計)を総ビリルビン (total bilirubin, T-Bil) という。
直接ビリルビン
水溶性の抱合型ビリルビンを直接ビリルビン(direct bilirubin, D-Bil, 直ビ)という。総ビリルビンのうち、水溶性の抱合型ビリルビンはグルクロン酸抱合でできるジアゾ基によって直接測定できる。
間接ビリルビン
脂溶性の非抱合型ビリルビンを間接ビリルビン(indirect bilirubin, I-Bil, 間ビ)という。検査では可溶化を要する。
測定と算出
通常はT-Bilと直接ビリルビンのみを測定し、間接ビリルビンはT-Bilから直接ビリルビンを差し引いて算出する。血中のT-Bil濃度が高い病態を高ビリルビン血症、血中の直接ビリルビン濃度が高い病態を高直接ビリルビン血症、血中の間接ビリルビン濃度が高い病態を高間接ビリルビン血症という。正常値は概ね、T-Bilが1mg/dL以下、直接ビリルビンが0.2mg/dL以下、間接ビリルビンが0.8mg/dL以下。
検査法による名称 | 略称 | 抱合の有無による名称 | 極性 | 毒性 | 正常値 (mg/dL) |
---|---|---|---|---|---|
総ビリルビン | T-Bil | 〜1 | |||
間接ビリルビン | 間ビ | 非抱合型 | 脂溶性 | あり | 〜0.8 |
直接ビリルビン | 直ビ | 抱合型 | 水溶性 | なし | 〜0.2 |
なお、英語版Wikipediaでは、ビリルビンは基本的に排泄物であるので適正な血中濃度というものはないが、いくつかの成人での血中濃度範囲例を下表のように示している。
血中濃度単位 | μmol/L | mg/dL |
総ビリルビン | 5.1–17.0[5] | 0.2-1.9,[6] 0.3–1.0,[5] 0.1-1.2[7] |
直接ビリルビン | 1.0–5.1[5] | 0-0.3,[6] 0.1–0.3,[5] 0.1-0.4[7] |
- ^ Cary Pirone,J. Martin E. Quirke, Horacio A. Priestap, and David W. Lee (2009). “Animal Pigment Bilirubin Discovered in Plants”. J. Am. Chem. Soc. 131 (8): 2830. doi:10.1021/ja809065g. PMC 2880647 .
- ^ “Bilirubin's Chemical Formula”. 2007年8月14日閲覧。
- ^ a b Baranano DE, Rao M, Ferris CD, Snyder SH (2002). “Biliverdin reductase: a major physiologic cytoprotectant”. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99 (25): 16093–8. doi:10.1073/pnas.252626999. PMC 138570. PMID 12456881 .
- ^ Liu Y, Li P, Lu J, Xiong W, Oger J, Tetzlaff W, Cynader M. (2008). “Bilirubin possesses powerful immunomodulatory activity and suppresses experimental autoimmune encephalomyelitis”. J. Immunol. 181 (3): 1887–97. PMID 18641326.
- ^ a b c d Golonka, Debby. “Digestive Disorders Health Center: Bilirubin”. en:WebMD. pp. 3. 2010年1月14日閲覧。
- ^ a b MedlinePlus Encyclopedia CHEM-20
- ^ a b “Laboratory tests”. 2007年8月14日閲覧。
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