ノンステップバス 問題点

ノンステップバス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/03 02:08 UTC 版)

問題点

初期車

初期のノンステップバス(日野・ブルーリボン「東急バスM1833」) 車体後部のデッドスペースが大きい
いすゞ・エルガ
TypeB(フルノンステップバス、前)
山梨交通C801号車と
TypeA(前中ノンステップバス、後ろ)
山梨交通C746号車との比較
フルノンステップバスは前中ノンステップバスより車体後部のデッドスペースが大きいことが分かる

初期の大型ノンステップバスはホイールハウスの張り出しやエンジンなどがある車体後部のデッドスペースが多く、在来タイプと比べて収容力の減少が顕著となり、ラッシュアワーにはノンステップバスを使用しないバス事業者もあった。

ホイールハウスの処理

ホイール上の席に記載されている高齢者などが座らないように求めている注意書き

後継車や中型・小型タイプも同様であるが、各メーカーのバスともタイヤの寸法や配置に抜本的な改良を施せないまま床面高さを下げているため、前輪のホイールハウスの張り出しが従来のバスに比べて大きい。この部分の通路が狭くなるほか、前扉と運転席直後の前輪上に位置する座席はかなり位置が高くなり、座る際には「よじ登る」という感覚になる。このため、バス事業者や車種によってはこの部分には座席を設けず、荷物置き場や燃料タンクなどにしている例もある(いすゞ・エルガ日野・ブルーリボンの現行モデルや成田空港交通成田国際空港ターミナル間移動無料シャトルバス、岐阜バスの市内ループ線専用車など)ほか、最前列の座席のみシートベルトを設置しているケースも存在する(函館バスなど)。また、席を設置した場合であっても、高齢者や幼児などが着席しないように注意書きを掲示している事業者もある(神奈川中央交通など)。現行モデルのいすゞ・エルガと日野・ブルーリボンの自家用仕様車は、最前列が路線用と同じ1人掛けとなっており、補助席も装備されない。

走行性能

これはワンステップバスなどの低床バスにも共通しているが、床が低い分、最低地上高=ロードクリアランス(車体と地面との間隔)が小さいことに加え、エンジンを搭載可能なスペースも少なく、高出力エンジンの搭載が難しくなるという問題がある。また大型ノンステップバスの場合、構造上フロントオーバーハングが大きくなる。このため悪路や勾配および道路の段差(凸凹)の多いバス路線では使用できないケースも生じている[注 2][注 3]

価格

ドロップ・センター・アクスル (drop-center axle) [注 4]を始めとした特殊部品を多く使うため、平成10年代時点では車体価格が従来のバスをベースにした三菱車で約2,100万円、専用部品が多い日野車で約2,400万円と、大型ワンステップバス(約1,600 - 1,800万円)の1.5倍の価格となった。一部車種で輸入部品を使っている点もあるが、この価格が問題であり、公営バスを除くと事業者の負担のみでは購入しにくい。そのため各種助成制度が用意されており、通常のワンステップバスとの差額を行政からの助成金で賄い購入する場合が多い。

なお、安価なノンステップバスということで、別項の前中扉間ノンステップ車や中型ノンステップ車、中型長尺車へ移行していった。


注釈

  1. ^ 三菱ふそうトラック・バスでは、「ノーステップバス」とも称していた時期もあった。
  2. ^ 過去には京阪宇治交通(現・京阪バス)において男山営業所の出入口の勾配が極端に大きく、そのためノンステップバスを導入できなかったが、後に勾配を緩和して導入を行った。また山科営業所には過去よりワンステップバスはあるものの、営業所付近の道路状況から、同営業所には2007年度まで導入していなかった。導入後も道路の勾配の関係から、一部区間への走行は不可能である。
  3. ^ 長崎バスは2005年度に国土交通省標準仕様のノンステップバスを1台導入したが、坂の多い道路事情から、翌2006年度から床高さを標準仕様から上げる独自の仕様を採用した上で本格的な導入となった。
  4. ^ バス用の後輪に用いられる中間部分が低い特殊なホーシング・ユニットのこと。ZF社などが製作している。
  5. ^ 2005年以降は統合車種に移行している。

出典

  1. ^ a b 2章 ノンステップバスの特徴”. 国土交通省. 2021年1月27日閲覧。
  2. ^ 三菱ふそう大型路線バス「エアロスター」ノーステップバスにCNGエンジン搭載車を追加”. 三菱自動車工業 (2000年2月9日). 2020年9月7日閲覧。
  3. ^ 新型大型路線バス「エアロスター」を発表”. 三菱ふそうトラック・バス (2014年6月19日). 2020年9月7日閲覧。
  4. ^ いすゞ、大型路線バス「エルガ」をフルモデルチェンジ”. いすゞ自動車 (2015年8月18日). 2020年9月7日閲覧。
  5. ^ 日野ポンチョ日野自動車
  6. ^ 標準仕様ノンステップバス認定車両の一覧国土交通省
  7. ^ 大型路線バスがノンステップ認定を取得いたしましたEV Motors Japan
  8. ^ 東北地方におけるノンステップバス導入促進について(報告書)平成24年3月作成 第1部 ノンステップバスの現況「2章 ノンステップバスの特徴」国土交通省東北運輸局
  9. ^ 『バスラマ・インターナショナル』通巻89号 p.24
  10. ^ 『バスラマ・インターナショナル』通巻106号 p.11
  11. ^ “連節バスのメルセデス・ベンツ「シターロ G」の新型を日本初公開”. トラベル Watch. (2016年10月13日). https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1024767.html 
  12. ^ 「国産連節バス」はダイムラーの牙城を崩せるか”. 東洋経済オンライン (2020年3月20日). 2024年2月19日閲覧。
  13. ^ いすゞと日野、国産初のハイブリッド連節バスを共同開発”. いすゞ自動車 (2019年5月24日). 2020年10月31日閲覧。
  14. ^ いすゞと日野、国産初のハイブリッド連節バスを共同開発”. 日野自動車 (2019年5月24日). 2020年10月31日閲覧。
  15. ^ いすゞ、国産初のハイブリッド連節バス「エルガデュオ」を発売”. いすゞ自動車 (2019年5月27日). 2020年10月31日閲覧。
  16. ^ 日野自動車、大型路線ハイブリッド連節バス「日野ブルーリボン ハイブリッド 連節バス」を新発売”. 日野自動車 (2019年5月27日). 2020年10月31日閲覧。
  17. ^ “長い! 全長18m「連節バス」発売 いすゞと日野、2年かけ開発 街の風景変わる?”. 乗りものニュース. (2019年5月30日). オリジナルの2019年5月30日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190530033919/https://trafficnews.jp/post/86537 2019年6月1日閲覧。 
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  22. ^ “公共交通の電動化を推進する中型電気バスを販売決定”. ビーワイディージャパン株式会社. (2023年11月16日). https://byd.co.jp/news/2023_1116_156.html 2023年11月19日閲覧。 
  23. ^ 年鑑バスラマ2017→2018』p.23「販売車型の動向」、ぽると出版、2017年12月20日発行。ISBN 978-4-89980-517-5
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  25. ^ 滝上町の電気バス アジアスター社「オノエンスター」を見学 札幌市南区、2021年10月4日更新
  26. ^ a b c d e バス車両のバリアフリー化について(令和5年3月末現在) 国土交通省
  27. ^ “西鉄、路線バスをすべてノンステップに” (日本語). 日本経済新聞 電子版. https://www.nikkei.com/article/DGXLZO78562770Y4A011C1TI0000/ 2018年11月2日閲覧。 
  28. ^ 東北地方におけるノンステップバス導入促進について(報告書)平成24年3月作成 第2部 アンケート調査等「2章 ヒアリング調査及び結果について」国土交通省東北運輸局
  29. ^ ノンステップバス導入率が高い乗合バス事業者ベスト30(平成31年3月31日現在)国土交通省





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