タツナミガイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/16 22:30 UTC 版)
生殖
雌雄同体で、他個体との交接を行う。産卵は5-6月。卵は紐の中に多数の卵が入った形で、この紐が団子のようにまとまった卵塊を作る。アメフラシのいわゆるウミソウメンと同じであるが、アメフラシのものが鮮やかな黄色であるのに対して、タツナミガイのものは青緑色を帯びている。
分布
インド洋・太平洋の熱帯域を中心に広く分布する[6]。日本では房総半島以南の太平洋沿岸に普通に見られる。
利害
普通には特に実用的な利害はない。フィリピンなどでは卵や内臓が食用にされる[7][1][8]。古代ギリシアやローマでは薬として用いられたという。現在では強い抗腫瘍作用のあるペプチド系の成分が含まれることが発見されている。ただしそれらはごく微量であり、化学構造が明らかにされていないものもある。代表的な物質はドラスタチン10で、すでに立体構造が決定され、全合成が行われ、臨床試験も行われている。現実的な利用には至っていない[9]。卵はミネラル分などの栄養素を含むことが明らかにされている[10]。また、モデル生物として神経作用などの研究に使われることもある。ニューロコンピューターの開発にもその神経系が活用されている[11]。
分類
Dolabella 属の生物は日本近海には本種のみが分布する。インド洋には別種の D. gigas Rang, 1828 が生息するほか、化石種として D. aldrichi も報告されている。他の以外のアメフラシ類とは形、大きさにおいてかけ離れているので、混同されることはない。
- ^ a b 辻貴志 (2019). “タツナミガイ (Dolabella auricularia)の内臓の採取活動と食用慣行−フィリピン・セブ州マクタン島コルドヴァ町の事例”. 人間文化 45: 37-46.
- ^ 一般的なアメフラシ類の体長は10cmくらいなので、タツナミガイはずっと大きい。ただし、アメフラシ類の日本での最大種はアマクサアメフラシなどで時に40cmに達する。
- ^ タツナミガイの隠ぺい的な形態と色彩 - 動物行動の映像データベース
- ^ Dolabella auricularia [タツナミガイ] - 微小貝データベース(関西学院大学)
- ^ 以上の記載は主として岡田(1976)による。
- ^ Singh, S. and V. Vuki (2015). “An Ecological Study of the Sea Hare, Dolabella auricularia, on the Southeastern Coast of Viti Levu, Fiji”. SPC Women in Fisheries Information Bulletin 26: 17-23.
- ^ 辻(2007)
- ^ Tsuji, T. (2019). “An Ethnography on the Wedge Sea Hare in Mactan Island, the Philippines”. Naditira Widya 13 (2): 135-150.
- ^ 北川・小林(1991) p.1054
- ^ Pepito, A., G. Delan, M. Asakawa, L. Ami, E. Yap, M. Olympia, K. Yasui, A. Maningo, R. Rica, and M. Lamayo (2015). “Nutritional Quality of the Egg Mass Locally Known as “Lukot” of the Wedge Seahare Dolabella auricularia (Lightfoot, 1786)”. Tropical Technology Journal 19: 1-6.
- ^ ニュ-ロコンピュ-タへの挑戦−アメフラシから電脳を学ぶ. アグネ承風社. (1990)
固有名詞の分類
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