スーパーシャーマン その他の派生型

スーパーシャーマン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/16 02:19 UTC 版)

その他の派生型

M4は特殊車輌のベースとしても多用され、イスラエルでも多くの派生型が使用されている。ここでは本家アメリカが開発・製造してイスラエルが導入した型と、イスラエルが独自にM4やM1/M50/M51を改修して製造した型とに分けて解説する。

アメリカ開発の車輌

M50スーパーシャーマン改造のM32戦車回収車
M32戦車回収車
通常のM4と共に導入され、後に退役したM1/M50スーパーシャーマンを改造した車輌も登場している。
アメリカ軍自衛隊のM32戦車回収車は車体前部に迫撃砲を装備しており、煙幕を張る為に使用されるが、イスラエル軍仕様では戦闘室前面に筒状の発煙弾発射機が装備されている。
M10アキリーズ駆逐戦車
M10アキリーズ駆逐戦車
イギリス軍北アフリカ部隊の中古品と見られる。M50スーパーシャーマンと共にCN-75-50砲が搭載されたとも言われているが詳細は不明。
M7B1プリースト自走榴弾砲
M7B1プリースト自走榴弾砲
フランスから導入。予備履帯装備方法など、細部にアメリカ軍使用との違いが見られる。後に砲を外して装甲兵員輸送車として使用された車両もある。(M50やM51と同じくHVSS・カミンズディーゼルエンジンに換装された物が存在するとする資料も有るが、写真や実車は確認されていない模様。)
シャーマンフレイル
シャーマンフレイル
地雷処理用のチェーンローラーを装備した地雷処理戦車。シャーマン・クラブと呼ばれる例も有る。第二次世界大戦中に主にイギリス軍で使用された。
ラトルン戦車博物館の現存車両では、M4A4車体、VVSSサスペンションのままエンジンをカミンズ製ディーゼルエンジンに換装し、車体側面にM50やM51に見られるような雑具箱、ジェリカン等が装着されている。

イスラエル独自の車輌

IDFは慢性的に各種の装甲戦闘車輌が不足しそれを導入・更新するための資金も決して潤沢なものではなかったため、スーパーシャーマンはその後継であるショットマガフが導入されてからも自走砲を始めとする各種の支援車輌に改造され、1967年の第三次中東戦争や1973年の第四次中東戦争、1978年の第一次レバノン侵攻(リタニ作戦)、1982年の第二次レバノン侵攻(レバノン戦争。イスラエル側の作戦名は「ガリラヤの平和作戦」)にも投入された。

自走砲

M50 155mm自走榴弾砲
M50 155mm自走榴弾砲
M4A4のエンジンを前部の補助操縦席部分に移して、オープントップの後部にフランス製M50 155mm榴弾砲を搭載している。後にHVSSとカミンズエンジンに換装されたがソルタムL33 155mm自走榴弾砲M107 175mm自走砲に更新され、後述のアンビュタンクに改装された。
L33 155mm自走榴弾砲
ソルタムL33 155mm自走榴弾砲
自走榴弾砲M50の後継として開発された。M4の車体上に密閉型の戦闘室を設けてイスラエル国産の33口径ソルタムM68 155mm榴弾砲を装備している。第四次中東戦争で運用されたが、後に前線部隊の装備はM109 155mm自走榴弾砲に更新されている。
マクマト 160mm自走迫撃砲
余剰化したスーパーシャーマンの車体前部をオープントップ式の戦闘室に改造して、ソルタム社製M66 160mm迫撃砲を装備した自走迫撃砲。車体前部の装甲板は乗員の乗降や砲弾の積載に有利なように蝶番によって下部方向に展開可能。
なお、マクマト(Makmat)とはヘブライ語でMargema Kveda Mitnayaat=自走重迫撃砲の略称であり、M3ハーフトラックソルタムM65 120mm迫撃砲を搭載した120mm自走迫撃砲もマクマトと呼ばれる。
シャーマンMRL
砲塔を外して多連装ロケット砲を装備した車輌。鹵獲したソ連製の多連装ロケット砲BM-24カチューシャ)のロケット弾をコピーした240mmロケット弾36連装ランチャーを搭載したMAR-240と、290mmロケット弾4連装ランチャーを搭載したMAR-290とが存在する。MAR-290にはショットを基にした車輌も存在するがMLRSに更新されて現役装備から外された。
キルション自走対レーダーミサイル。車体上部にAGM-45シュライクのランチャーを搭載している
キルション
退役したM51スーパーシャーマンの車体にAGM-45シュライク対レーダーミサイルの単装ランチャーを装備した対レーダー車両。第四次中東戦争の最中にエジプトやシリアのS-125(SA-3ゴア)2K12(SA-6ゲインフル)などの新型地対空ミサイルによって多数の航空機を撃墜されたイスラエル軍が、航空機を使用せずに地対空ミサイルを無力化するために開発した。Kachlilitとも言われる。なおキルション(Kilishon)はヘブライ語でトライデントを意味する。

その他の各種支援車輌

アンビュタンク, シャーマン装甲救急車
負傷者搬送用の車輌。アンビュタンク(Ambutank)とはAnbulanceとTankを組み合わせた造語である。M4A1(76)Wの砲塔を外してその下にエンジンを移して後部を救護室にした前期型と、余剰化したM50 155mm自走榴弾砲の戦闘室を密閉して救護室にした後期型の2種類が存在する。
ヤール観測戦車
ヤール観測戦車
M1スーパーシャーマンの砲塔を外して巨大な伸縮式の観測台を備えた観測車輌。最大30メートルに達する。3台が改造され第四次中東戦争で使用された。
モンスター標的戦車。
車体左右に斜めに傾けた装甲板が取り付けられている
モンスター標的戦車
退役したM4戦車の砲塔を撤去して車体外部に斜めに傾斜した装甲板をボルト止めした車輌で、イスラエル軍では戦車部隊の移動目標砲撃訓練の仮想標的として用いられる。現代のイスラエル軍の主力戦車であるメルカバマガフショットが主砲上部にM2 12.7 mm 重機関銃を搭載して同軸機銃としている理由の一つはこのモンスター標的戦車を相手にした移動目標砲撃訓練に使用するためである。
トレイルブレイザー戦車回収車
トレイルブレイザー戦車回収車
M51スーパーシャーマンをベースにした回収車。車体右側の補助運転手兼機銃射手の席の部分に巨大なクレーンを装着し、車体前面にドーザーブレード、車体上面には平面で構成された密閉式の乗員室、車体側面にも大型の雑具箱が装着されている。ドイツ連邦軍レオパルト1戦車をベースとしたベルゲパンツァーや、陸上自衛隊78式戦車回収車に似た車体構成となっている。生産数、時期など詳細は不明。

輸出型

M50 APC
1970年代、余剰となったM50スーパーシャーマンの一部がレバノン内戦時にレバノン軍団南レバノン軍South Lebanon Army)に供与された。南レバノン軍に供与されたM50スーパーシャーマンの中には、後に、砲塔を撤去し防弾版とM2重機関銃を装備したAPC(装甲兵員輸送車)に改造された車両が存在する。また、南レバノン軍にはM50スーパーシャーマンと同時期に、M32戦車回収車も供与されている。
M60
1970年代に退役したM50/M51スーパーシャーマンの一部はチリ陸軍に供給されたが、更に1980年代にはイスラエル軍事工業社(Israel Military Industries、通称IMI)が開発した60 mm 高速砲(HVMS)を搭載し、エンジン改装などの改良が加えられてM60と改められた。現在は同砲を搭載したピラーニャ装甲車への転換が進められている。

  1. ^ SabIngaMartin Publications - Lioness & Lion of the Line Volume 2 - M50 and M51, P.32-38






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