スペースシャトル固体燃料補助ロケット 発展型SRB

スペースシャトル固体燃料補助ロケット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/10 00:46 UTC 版)

発展型SRB

チャレンジャー号の事故以後、NASAはSRB製造用の工場を、ミシシッピー州イエロー・クリークに建設が計画されその後中止となったテネシー川流域開発公社の原子力発電所の予定地に新たに建設し、発展型固体燃料補助ロケット (Advanced Solid Rocket Booster, ASRB) を外部発注ではなくNASA自身で製造することを計画していた。ASRBは国際宇宙ステーションにより多くの区画や建設資材を搬送できるよう、推力を増強させる予定であった。しかしながら計画予算が19億ドルから38億ドルにまで膨れあがったため1993年に中止が決定され、その後は初期の飛行の時から使用されてきた軽量外部燃料タンクに替わって「超軽量外部燃料タンク(Super Light-weight Tank, SLWT)」が使用されるようになり、現在まで継続している。

試験的に2機製造されたASRBの外殻は、アラバマ州ハンツヴィルにある合衆国宇宙ロケットセンター (U.S. Space & Rocket Center) のスペース・シャトルパスファインダー号に取り付けて展示されているものを見ることができる。

フィラメント補強型外殻

シャトルはカリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地のSLC-6発射台を使って、極軌道に乗ることができる。その際は、ケネディ宇宙センターから発射するときに使用する鋼鉄製の外殻に替わり、より軽量化されたフィラメント補強型の外殻が使用される[8]。チャ号事故を招いた接合部分に隙間のある通常型のSRBと違い、フィラメント補強型は接合部が二重の入れ子になっている(これは発射台上でメイン・エンジンが点火され機体が大きく揺れる際に、ブースターを適切に直線状に保つために必要なものである)かわりに、Oリングは2本だけになっている(チャ号事故以降は3本になった)。SLC-6が廃止されたことにともない、フィラメント補強型ブースターはATK社とNASAによって破壊されたが、そこで使用された接続部分に関する技術は、3本型Oリングや接続部のヒーターなどに応用され、現在も使用されている。

5セグメント型ブースター

2003年コロンビア号空中分解事故が発生するより以前、NASAはSRBを従来型の4セグ型から5セグ型のものに増強するか、あるいはアトラスVデルタIVで培われた技術を流用した液体燃料ロケットに改めることを検討していた。5セグ型SRBは、現行のものにわずかな改良を施すだけで国際宇宙ステーションに今よりさらに9.1トンも多くの物資を搬送することができ、また機体に異常が生じた際の「発射基地帰還中止」や「大西洋横断中止」などの危険をなくし、さらに「ドッグ・レッグ(犬の足のように曲がった)操作」と呼ばれる上昇途中での軌道を曲げる操作をすることにより、ケネディ宇宙センターからシャトルを極軌道に乗せることができるようになる。しかしながらコロンビア号事故により5セグ型SRB計画も棚上げとなり、残されたディスカバリーアトランティスエンデバーの3機の軌道船も、2010年の国際宇宙ステーションの完成とともに退役することとなった[9]

2009年9月10日、ユタ州の砂漠にあるATK社の試験場で、アレスI ロケットの一段目に使用される5セグ型SRBの燃焼試験が行われたが、オバマ大統領コンステレーション計画の中止を表明したことにより、アレスの開発も無期延期となった[10]

後述のスペース・ローンチ・システムの初期の形態(ブロックI)では改修型が装備されることが決定されている。


注釈

  1. ^ 「固体燃料推進器 (solid rocket booster, SRB)」と「固体燃料ロケット (solid rocket motor)」はしばしば混同されるが、技術的にはそれぞれ独自の意味を持つ。「推進器」とは、回収用パラシュート・電子機器・分離用ロケット・安全用自爆装置・推力偏向装置などを含むロケット全体の装置を指すのに対し、「固体燃料ロケット」は燃料・外殻・点火装置・ノズルによって構成されるロケットそれ自体を表す。
  2. ^ 一例を挙げれば、シャトル初飛行のSTS-1で使用された本体下方部分は、その後30年間に6度飛行し、一回の燃焼試験を受け、2009年にはアレスI ロケットの試験飛行でも使用された。アレスI 自体も、シャトルの48回の飛行と5回の地上試験で使用された別々のSRBの部品を寄せ集めて作られたものであった。NASA Ares I First Stage Motor to be Tested August 27”. NASA (2009年8月17日). 2010年3月29日閲覧。

出典

  1. ^ Shuttle Solid Rocket Booster Facts”. NASA. 2010年4月2日閲覧。
  2. ^ A Horse’s Behind, and Railroad Tracks, オリジナルの2014年8月27日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20140827145838/http://nonsensefactory.com/a-horses-behind-and-railroad-tracks/ 
  3. ^ a b Solid Rocket Booster (SRB) - Evolution and Lessons Learned During the Shuttle Program”. NASA. 2022年2月17日閲覧。
  4. ^ Salt Water Activated Release for the SRB Main Parachutes (SWAR)”. NASA (2002年4月7日). 2010年4月2日閲覧。
  5. ^ Report of the Presidential Commission on the Space Shuttle Challenger Accident, Chapter IV: The Cause of the Accident”. NASA. 2010年4月2日閲覧。
  6. ^ Space Shuttle Challenger Case”. 2010年4月2日閲覧。
  7. ^ Orbiter Manufacturing and Assembly”. NASA. 2010年4月2日閲覧。
  8. ^ "Jerry L. Ross" NASA Johnson Space Center Oral History Project, 26 January 2004.
  9. ^ Jenkins, Dennis R. "Space Shuttle: History of the National Space Transportation System – The First 100 Flights"
  10. ^ NASA and ATK Successfully Test Ares First Stage Motor”. NASA. 2010年3月29日閲覧。





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