シュードウリジン シュードウリジンシンターゼ

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シュードウリジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/16 09:11 UTC 版)

シュードウリジンシンターゼ

シュードウリジル化は、転写後、すなわちRNAが形成された後に行われるRNA修飾である。この修飾を行うタンパク質はシュードウリジンシンターゼ(PUS)と呼ばれている。PUSは生物の全てのドメインに存在する。研究の大部分はPUSがtRNAを修飾する機構に関して行われており、そのためsnRNAやmRNAに関する機構は明確ではない。PUSタンパク質のRNAに対する特異性、構造、そして異性化機構はさまざまである。さまざまなPUSの構造は4つのファミリーに分類される。ファミリー内では、共通した活性配列と重要な構造モチーフが存在する[2]

TruA

TruAドメインは、tRNA、snRNA、mRNAのさまざまな部位を修飾する。このファミリーによるウリジンの異性化機構にはまだ議論がある[6][9]

tRNAと結合したシュードウリジンシンターゼ

PUS1英語版内に存在し、tRNAのさまざまな部位、U2 snRNAU44、U6 snRNAのU28を修飾する。PUS1の発現は環境ストレス時に増加し、RNAスプライシングの調節に重要であることが示されている。また、PUS1は核内で合成されたtRNAを細胞質へ送る際にも必要である[6]

PUS2英語版はPUS1にきわめて類似しているが、ミトコンドリアに位置し、ミトコンドリアのtRNAのU27とU28のみを修飾する。ミトコンドリアのtRNAは他のtRNAと比較してシュードウリジンの量は少ない。他のミトコンドリア局在タンパク質と異なり、PUS2にはミトコンドリア標的化シグナルが見つかっていない[6]

PUS3英語版はPUS1と相同であるが、細胞質とミトコンドリアでtRNAのU38/39を修飾する。このタンパク質はTruAファミリーの中で最も保存性が高い。tRNAが不適切なフォールディングをしている際には、PUS3による修飾が低下する。tRNAの他にもノンコーディングRNAやmRNAを標的化するが、この修飾の重要性に関してはさらなる研究が必要である。ヒトでは、PUS3はPUS1とともに、SRA1英語版ノンコーディングRNAを修飾する[6]

TruB

TruBファミリーはミトコンドリアと核に位置するPUS4英語版のみから構成される。PUS4は、tRNAのエルボーに位置する高度に保存されたU55を修飾する。ヒトのPUS4は、PUA(pseudouridine synthase and archaeosine trans-glycosylase)ドメインと呼ばれる結合ドメインを欠いている。PUS4はtRNAのTループ部分に対する配列特異性を有する。PUS4がmRNAを修飾する予備的なデータが存在するが、その確証にはさらなる研究が必要である。また、植物に感染するRNAウイルスであるブロムモザイクウイルス英語版に対して特異的に結合する[6][10]

TruD

TruDはさまざまなRNAの修飾を行うが、どのようにRNA基質が認識されているのかははっきりしない。PUS7英語版はU2 snRNAの35位を修飾し、この修飾はヒートショックによって誘導される。他には細胞質のtRNAの13位とpre-tRNATyrの35位が修飾される。PUS7はmRNAのシュードウリジル化も行い、特異性はRNAの種類に依存しない。PUS7はUGUARの配列を認識し、2番目のUが修飾される。PUS7はヒートショック時に核から細胞質へ移行し、mRNAのシュードウリジル化を増加させる。修飾はRNAの核から細胞質への再局在と相関しており、ヒートショック時にmRNAの安定性を増加させていると考えられているが、さらなる研究が必要である[6][9]

RluA

RluAドメインによる認識は、タンパク質の結合によって誘導される二次構造に対する形状相補性に依存しているようである[2]

PUS5英語版は研究は進んでいないが、ミトコンドリアに局在するシュードウリジンシンターゼである。PUS2と同様、ミトコンドリア標的化シグナル配列は見つかっていない。このタンパク質はミトコンドリアの21S rRNAのU2819を修飾する。PUS5はmRNA中の一部のウリジンを修飾する可能性があるが、これに関してもさらなるデータが必要である[6]

PUS6英語版は細胞質とミトコンドリアのtRNAのU31を修飾する酵素である。mRNAを修飾することも示されている[6]

PUS8英語版はRib2としても知られ、細胞質のtRNAのU32を修飾する。C末端にはDRAPデアミナーゼドメインが存在し、リボフラビンの生合成に関係している。RluAドメインとデアミナーゼドメインは完全に別個の機能であり、両者が互いに相互作用するかは不明である。PUS8は酵母では必須であるが、シュードウリジンの修飾ではなくリボフラビン合成と関係した機能のためであると考えられている[6]

PUS9は、細胞質ではなくミトコンドリアのtRNAに対し、PUS8と同じ部位を修飾する酵素である。N末端にミトコンドリア標的化シグナルドメインが存在する唯一のPUSタンパク質である。PUS9はmRNAも修飾する可能性が示唆されており、基質特異性は低いと考えられる[6]


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  2. ^ a b c Hamma, Tomoko; Ferré-D'Amaré, Adrian R. (November 2006). “Pseudouridine Synthases”. Chemistry & Biology 13 (11): 1125–1135. doi:10.1016/j.chembiol.2006.09.009. ISSN 1074-5521. PMID 17113994. 
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  4. ^ “The spliced leader-associated RNA is a trypanosome-specific sn(o) RNA that has the potential to guide pseudouridine formation on the SL RNA”. RNA 8 (2): 237–246. (2002). doi:10.1017/S1355838202018290. PMC 1370245. PMID 11911368. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1370245/. 
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  10. ^ Keffer-Wilkes, Laura Carole; Veerareddygari, Govardhan Reddy; Kothe, Ute (2016-11-14). “RNA modification enzyme TruB is a tRNA chaperone”. Proceedings of the National Academy of Sciences 113 (50): 14306–14311. doi:10.1073/pnas.1607512113. ISSN 0027-8424. PMC 5167154. PMID 27849601. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5167154/. 
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  13. ^ Kalsotra, Auinash (2016-11-02). Faculty of 1000 evaluation for Transcriptome-wide mapping reveals widespread dynamic-regulated pseudouridylation of ncRNA and mRNA.. doi:10.3410/f.718875945.793524920. 
  14. ^ a b Zhao, Yang; Karijolich, John; Glaunsinger, Britt; Zhou, Qiang (October 2016). “Pseudouridylation of 7 SK sn RNA promotes 7 SK sn RNP formation to suppress HIV ‐1 transcription and escape from latency”. EMBO Reports 17 (10): 1441–1451. doi:10.15252/embr.201642682. ISSN 1469-221X. PMC 5048380. PMID 27558685. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5048380/. 





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