グレート・ウェスタン鉄道2900形蒸気機関車 製造

グレート・ウェスタン鉄道2900形蒸気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/28 20:02 UTC 版)

製造

No.2920 'Saint David'
1907年に製造された第3次車。1953年、カーディフ総合駅にて。

本形式の量産車は、Nos.173 - 190(後にNos.2973 - 2990へ改番)・2901 - 2955がスウィンドン工場で1905年から1913年にかけて製造された。

なお、前述の通り4両の試作車は量産開始後もデータ収集のために様々な構造のボイラーを試用したが、全車とも1913年までにボイラーを量産品のNo.1形へ換装、アトランティック形軸配置のNos.171・172についてはテンホイラーへの改造を行うなどした上で量産化改造と改番[16]が実施され、本形式に編入されている。

本形式そのものの量産は通算77両を数えたところで打ち切りとなったが、前述の通り本形式の2925号機「セント・マーチン」を1924年に改造[17]してテストの上で、貨客機であるホール級として1928年より1943年にかけて258両が製造され、更にこのホール級を改良した改ホール級が1944年から1950年にかけて71両製造されており、いずれもその主要部分の設計は一切変更されていない。

つまり、運転台の大型化による乗務員の居住性改善など多少の仕様変更はあったものの、45年間に合計406両が基本的には同一設計のままで製造が続けられたということになる。

いかに保守的なイギリスの鉄道でもここまで長期間にわたって同じ基本設計で量産が続いた例は他になく、その先駆けとなった本形式の設計の優秀性とGWRにおける標準化の徹底ぶりがうかがい知れる。

運用

No.2935 'Caynham Court'
1931年5月にロータリーカムを使用するポペットバルブ搭載の試作車として改造された車両。シリンダー直上にポペットバルブによる弁装置本体が搭載され、機関士席から操作のためのロッドが伸びている。

本形式はGWRの主力機関車の一つとして大量導入され、シンプルで扱いやすく、しかも規格化された構造故に運転・保守の双方から好評を博した。

廃車は1931年のNo.2985 ペベリル・オブ・ザ・ピーク(Peveril of the Peak)を皮切りに順次進められ、1953年までに全車廃車解体処分された。

諸元

  • 軸配置 2C(テンホイラー)
  • 動輪直径 2,044.7mm
  • 弁装置:内側スティーブンソン式弁装置(ピストン弁使用)
  • シリンダー(直径×行程) 469mm×762mm
  • ボイラー圧力 15.82kg/cm² (= 225lbs/in2 = 1.55MPa))
  • 火格子面積 2.52m²
  • 全伝熱面積 199m²
  • 過熱伝熱面積 24.4m²
  • 機関車重量 72t
  • 最大軸重 20t
  • 炭水車重量 48t

  1. ^ 後のNos.2900・2998・2971。
  2. ^ a b 世界鉄道百科図鑑 p.65
  3. ^ a b 固有名は順にラ・フランス(La France)・プレジデント(President)・アライアンス(Alliance)。
  4. ^ a b 1907年ジ・アボット(The Abbot)へ改名、1912年に他の量産車と共通のテンホイラーに改造された。
  5. ^ 1892年5月20日のパディントン発スウィンドン行き最終列車をもって超広軌によるGWRの旅客輸送サービスは全て終了し、超広軌のみであったエクセター以西の区間の標準軌間への改軌工事が、翌21日と22日の2日を費やして実施された。
  6. ^ これは機関車総監督の座から退いた彼が、1865年にGWRの会長に就任し、後任者に対する影響力を保持し続けたことに一因があった。
  7. ^ 世界鉄道百科図鑑 pp.70-71
  8. ^ たとえばNo.100→2900は竣工直後は通常の缶胴部が同一断面積で真っ直ぐな外観形状のストレートボイラーが搭載されていたが、1903年に半円錐形に改造、1910年にはGWR初のシュミット式過熱装置の搭載試験車となるなど、GWRのボイラー改良のテストベッドとして重要な役割を果たした。
  9. ^ 高温の蒸気は火室上のチューブから加減弁へ送られる。
  10. ^ クラック弁は逆流防止機構を備える特殊な構造の弁。構造上、多段階の受け皿を介して注水が行われ、その過程で段階的に予熱が行われるため、一種の給水暖め器として機能する。熱効率の観点では原理的に冷水を必要とするインジェクタによるボイラへの直接注水よりも有利である。この弁による注水機構はイギリス国鉄最後の新製蒸気機関車となった9F形など四大私鉄の国有化後に設計された制式機にも採用されるなど、アメリカ流の給水暖め器および給水ポンプを用いたボイラへの給水機構が好まれなかったイギリスにあってその代用として好んで採用された。
  11. ^ 世界鉄道百科図鑑 pp.71・229-230
  12. ^ 当初はドイツから導入されたシュミット式過熱装置が採用されたが、後にスウィンドン工場で開発されたスウィンドンNo.3型過熱装置に置き換えられた。
  13. ^ アメリカン形軸配置(4-4-0または2B)のブルドッグ級 (3300 Class) やバード級 (3441 Class) 、あるいはタンク機関車の5101形 (5101 Class) や5600形 (5600 Class) などに多用された。
  14. ^ タンク機関車のバードケージ級 (3600 Class) などに採用された
  15. ^ アメリカン形軸配置(4-4-0または2B)の軽量列車用テンダー式機関車である3700形(シティ級)やカウンティ級 (3800 Class) あるいは大型タンク機関車の4200形 (4200 Class) や7200形 (7200 Class) などに採用された。
  16. ^ Nos.100・98・171・172→Nos.2900・2998・2971・2972へ変更。
  17. ^ 動輪を6フィート(1,828mm)径のものに交換し、4900へ改番した。





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