カーボンオフセット カーボンオフセットの概要

カーボンオフセット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/26 05:02 UTC 版)

日本では、2008年環境省が「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」を公表している[1]

取り組みの流れ

  1. 特定の活動によって、排出される二酸化炭素の量を算出する。
  2. (排出される二酸化炭素の量を削減する努力をする)。
  3. どうしても排出されてしまう二酸化炭素の量を排出権(クレジット、オフセット・クレジットとも呼ばれる)などを用いてオフセット(埋め合わせ)する。[2]

語源

発生してしまった二酸化炭素の量を何らかの方法で相殺(埋め合わせ)し、二酸化炭素排出を実質ゼロに近づけようという発想がこれら活動の根底には存在する。「カーボン・オフセット」という用語の「カーボン」は二酸化炭素の中の「炭素」を意味し、「オフセット」は「相殺する」という意味である。

歴史

1997年イギリスの植林NGOであったフューチャーフォレストという団体の取り組みからカーボン・オフセットは始まった。 イギリス、アメリカドイツオーストラリアなど、欧米ではカーボン・オフセットの浸透が進行していた。 英国や米国では、企業やNPO団体など、数10社がカーボン・オフセットを提供しており、ここ数年で市場が急成長している。英国においては、2006年に約500万トンCO2/年のクレジットがカーボンオフセットを目的として取引されており、世界のVERの1/4が英国で取引されている。米国の企業向けプロバイダーの中には、地中炭素貯留 (CCS) 等の大規模なプロジェクトによってクレジット生成に取り組む企業も出てきている。

日本では環境省が、オフセットするための削減活動が実質的な温室効果ガスの削減に結びついていないと指摘される事例などの発生[3]をうけ、2008年2月に取りまとめた「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」に基づいて、適切かつ透明性の高いカーボン・オフセットを普及するため、カーボン・オフセットフォーラム(J-COF)を設立し、オフセットの取組に関する情報収集・提供、相談支援等を行うとともに、各種ガイドラインの策定及び取組支援など、取組を行ってきた[4]。また、環境省、経済産業省、農林水産省が3省合同でカーボン・オフセットに用いる温室効果ガスの排出削減量・吸収量を信頼性のあるものとするため、国内の排出削減活動や森林整備によって生じた排出削減・吸収量を認証する「J-クレジット制度」を創設。(経産省の国内クレジット制度、J-VER制度が発展的に統合した制度)[5]郵便事業株式会社では、京都議定書第一約束期間に合わせて2008年から2012年までの5年間、カーボン・オフセットはがきを発行した。カーボン・オフセットはがきは、50円のはがき代に加え5円の寄付が付与され55円で販売され、この寄付金をカーボン・オフセットを伴う各種申請事業に配分し、国内のカーボン・オフセットの普及啓蒙に重大な役割を果たした[6]

取り組み事例

なお水素自動車はその原料である水素の製造を伴うため、全体ではカーボンオフセットにあたらないとの見解は根強い[7]

省エネ商品への代替、冷暖房使用や照明時間管理による節電活動、廃棄物発電間伐を含む森林保全事業(森づくり)、エコドライブなどの事例がカーボン・オフセット認証を受けている[8]

グリーン電力証書によるカーボン・オフセット

日本においては新エネルギーの普及を目的としたグリーン電力証書を用いてオフセットしていると公言している事業者も存在する。グリーン電力証書は発電による環境価値を販売している。このことから二酸化炭素を排出しない発電という部分を環境価値と評価するならば、グリーン電力証書を販売した時点で、購入者の二酸化炭素排出量をグリーン電力発電事業者が排出したこととする「付け替え」になる。そのため、排出元の転換はあるものの、全体の二酸化炭素排出量自体は減っていない。マクロ的視点で見れば、グリーン電力の普及が促進されれば日本における二酸化炭素排出抑制に貢献するという予測も可能ではあるが、あくまで「付け替え」であり「削減」ではないことから、グリーン電力証書によるカーボン・オフセットについては環境省がVERとしての取り扱いについて、海外の事例、日本の既存の手法などを参考に検討を進めている。


  1. ^ 我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)の公表”. 環境省  . 2014年3月1日閲覧。
  2. ^ 我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)の公表”. 環境省  . 2014年3月1日閲覧。
  3. ^ カーボン・オフセット”. 環境省. 2014年3月1日閲覧。
  4. ^ カーボン・オフセット”. 環境省. 2014年3月1日閲覧。
  5. ^ J-クレジット制度”. 環境省経済産業省. 2014年3月1日閲覧。
  6. ^ カーボンオフセットはがき”. 郵便事業株式会社. 2014年3月1日閲覧。
  7. ^ http://cleantechnica.com/2014/06/04/hydrogen-fuel-cell-vehicles-about-not-clean/
  8. ^ http://www.j-cof.go.jp/cof/practices.html
  9. ^ カーボン・オフセットフォーラム(J-COF)”. 環境省. 2014年3月14日閲覧。
  10. ^ カーボン・オフセット推進ネットワーク”. カーボン・オフセット推進ネットワーク. 2014年3月14日閲覧。
  11. ^ カーボン・オフセット特定地域協議会”. 環境省. 2014年3月1日閲覧。
  12. ^ カーボン・オフセット特定地域協議会”. 環境省. 2014年3月1日閲覧。
  13. ^ 我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)”. 環境省   (2008年2月7日). 2014年3月1日閲覧。
  14. ^ カーボン・オフセット制度”. 環境省. 2014年3月1日閲覧。
  15. ^ カーボン・オフセット大賞とは”. カーボン・オフセット推進ネットワーク  . 2014年3月1日閲覧。
  16. ^ 「第3回カーボン・オフセット大賞」のエントリー募集について(第1報)(お知らせ)”. 環境省  . 2014年3月1日閲覧。
  17. ^ 「第3回カーボン・オフセット大賞」のエントリー募集について(第1報)(お知らせ)”. 環境省  . 2014年3月1日閲覧。
  18. ^ 「第1回カーボン・オフセット大賞」の受賞者の決定について(お知らせ”. 環境省  . 2014年3月1日閲覧。
  19. ^ 「第2回カーボン・オフセット大賞」の受賞者の決定について(お知らせ”. 環境省  . 2014年3月1日閲覧。
  20. ^ 「第3回カーボン・オフセット大賞」の受賞者の決定について(お知らせ”. 環境省  . 2014年3月1日閲覧。
  21. ^ カーボン・オフセット”. 環境省. 2014年3月1日閲覧。


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