【人海戦術】(じんかいせんじゅつ)
「あらゆる作業や作戦の難易度は、一人あたりの作業量(あるいは一人の敵に対処する人数)によって大きな影響を受ける」
という原則を最も重視する戦術上の指針。
「戦術」と銘打ってはいるが、現実的には戦略レベルでの大方針であり、当然ながら人口で優位に立てる大陸国家で支持される傾向にある。
また、現在の軍事研究では
「他の戦略で確実に優位を確保できる場合には採用すべきでない」
という見解が主流であり、しばしば愚策・無策を揶揄する言葉として使われる。
人海戦術の基本は、徴兵制を前提とする国家総力戦である。必然的に、充足が困難な海軍や空軍はそれほど重要視されない。
進攻を受けた場合には、正規軍のみならず現地の住民も民兵となって抵抗し、同様に近隣地域の部隊と民兵がこれを包囲、敵が遭遇戦を想定せずに通過できる地域が存在しないようにする。
攻勢に出る場合は可能な限り広い地域に分散し、可能な限り多くの目標に対して、敵の戦線維持が限界に達するまで同時並行的に作戦を遂行し続ける。
根本的には
「消耗戦を避けられなくなれば人数で優る自分達の方がより長く耐えられるので、自分達の消耗は気にせずひたすら敵に消耗を強いる」
という一点に尽きる戦略であり、戦端を開けばどうしても膨大な死傷者が発生する事は避けられず、また、消耗することが前提となるので、装備や士気などにさほど気を配らなくなる傾向にある。
しかし、当然このような運用を行えば離反や内紛を招きやすくなるため、組織が内部から瓦解することもありうる。
また、現代では数に勝ることが戦争において戦略的なアドバンテージになるとは言い難く、湾岸戦争やイラク戦争のように訓練を積み、新しい兵器を手にした少数精鋭の軍隊が、数に勝る敵に対して圧倒的勝利を収めた例は多い。
たとえば、敵より100人多い味方を引き連れていても敵の航空機から爆弾が一発落とされれば、その100人のうち大多数は一瞬で戦闘不能となり戦力差はなくなる。
この場合、頭数をかき集めても意味はなく、必要なのは空爆を防ぐレーダーや迎撃システムの構築と運用ができる訓練を積んだプロ集団である。
人海戦術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/05 17:41 UTC 版)
人海戦術(じんかいせんじゅつ)とは、兵数の優位に物を言わせて目的を達成する戦術思想をさす。類似した軍事思想に飽和攻撃がある。
- ^ Samuel Lyman Atwood Marshall. Infantry Operations & Weapons Usage in Korea. Greenhill Books. 1988: 5. ISBN 978-0-947898-88-5.(英文)
- ^ Appleman, Roy (1989), Disaster in Korea: The Chinese Confront MacArthur, College Station, TX: Texas A and M University Military History Series, 11, ISBN 978-1-60344-128-5 p. 353-262.
- ^ Roe, Patrick C. (2000), The Dragon Strikes, Novato, CA: Presidio, ISBN 0-89141-703-6 p. 435.
- ^ George, Alexander L. (1967), The Chinese Communist Army in Action: The War and its Aftermath, New York, NY: Columbia University Press, OCLC 284111 pp. 4–5.
- ^ Liang, Su Rong (梁肅戎) (1995), Memoir of Liang Su Rong (大是大非 : 梁肅戎回憶錄) (in Chinese), Taipei, Taiwan: World Culture Publishing Ltd. (天下文化出版股份有限公司), ISBN 978-9-57621-299-4 p. 63.
- ^ Liang Surong(梁肅戎)'s memoir《大是大非: 梁肅戎回憶錄》p.63
- ^ O'Dowd, Edward C. (2007), Chinese Military Strategy in the Third Indochina War, New York, NY: Routledge, ISBN 978-0-415-41427-2 pp. 150, 165.
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