STENDEC
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/21 10:17 UTC 版)
「ブリティッシュサウスアメリカン航空スターダスト号事故」の記事における「STENDEC」の解説
サンチアゴ空港のチリ空軍無線技士の報告によれば、午後5時41分、最後の言葉として、“STENDEC” というモールス符号による無線通信を受信した。「大音量かつ明瞭」な通信だったが非常に速かった、という。電文は ” ETA SANTIAGO 17.45 HRS STENDEC” で、自機の位置、高度、予想到着時刻は午後5時45分などといった一連のメッセージのうちの最後の一文だった。“STENDEC” はこの無線オペレータにはなじみのない単語であり意味が分からなかったので再送信を要求し、通信が途絶える前に2度同じ電文を受信している。この単語は現在においてもその意味に関して決定的な説明がついておらず、様々な憶測を呼んだ。 2000年にスターダスト号失踪に関するエピソードを放送したBBCテレビシリーズHorizon のスタッフには、視聴者から “STENDEC” の解釈に関する何百ものメッセージが寄せられた。これらは諸説あったが、おそらく低酸素症に苦しんでいた(当該機種は与圧システムを備えていなかった)スターダストの無線技士が "DESCENT"(降下)という単語の文字順を滅茶苦茶に送信してしまった、という推理(DESCENT は STENDEC のアナグラムとなっている)や、STENDEC は何らかのフレーズの頭文字を並べたものという説、空港の無線技士が複数回繰り返されたと報告されているにもかかわらず、そのモールス符号を誤って聞き取った可能性などが含まれていた。番組スタッフは、モールス符号の特質に起因する誤解釈の可能性を除いて、これら視聴者による謎解きの中には皆を説得させられるものはない、と結論付けた。視聴者情報の中に、第二次世界大戦中のパイロットは、航空機が危険な天候に遭遇し、墜落する可能性が高くなった際に、しばしばこのような言い回しを用いたというものがあった。"Severe Turbulence Encountered, Now Descending Emergency Crash-landing"(激しい乱気流に遭遇し、これから不時着のための緊急降下をおこなう)。また、客室乗務員を含むすべてのクルーが第二次世界大戦中に軍における航空関連の経験があったことも知られている。ただし、この理論は、無線通信でフライトの推定到着時間を報告している事実と矛盾する。 これまでに提唱された最もシンプルな説明は、モールス符号の打電速度が速すぎて、文字を区切るスペースが短すぎたか、または一定しないテンポで送信されたため受信者が正しく聞き取れなかったというものだ。モールス符号では、文字と文字の間に正確な間隔(スペース)を設けることが、電文を適切に解釈するために不可欠である。 “STENDEC” は、”SCTI AR”(SCTI はサンチアゴ空港のコード、ARは通信終了の意)と短点長点の並び順が全く同じでスペースの位置のみが異なる。送信された文字列である ”SCTI AR” は、この事故当時の状況を考慮すると、発せられたとしても矛盾は生じない。
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