Cas12a/Cas13の発見と診断技術・治療技術への応用
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「CRISPR」の記事における「Cas12a/Cas13の発見と診断技術・治療技術への応用」の解説
2015年、細菌Francisella novicidaに由来するCpf1系において、ヌクレアーゼCas12a(旧名Cpf1)が発見される。2016年にはRNAを標的とするエンドヌクレアーゼCas13a(旧名C2c2)が発見された。Cas13はRNA誘導型RNAエンドヌクレアーゼであり、DNAは切断せず、一本鎖RNAのみを切断することを意味する。Cas13はそのcrRNAがssRNAの標的に誘導され標的と結合して切断する。Cas13の特徴はCas9と比較して標的を切断した後も標的に結合したままで、他のssRNAを無差別に切断することである。この性質はcollateral cleavagと呼ばれ、SHERLOCK法(Specific High Sensitivity Enzymatic Reporter Unlocking、邦訳:高感度核酸検出)またはCas12aとCas13を併用したSHERLOCK v2として様々な診断技術の開発に利用されており、具体的にはHUDSON(Heating Unextracted Diagnostic Samples to Obliterate Nucleases)と併用されることで、4種のデング熱ウイルスと2015年から2016年にわたって流行した地域特異的な鎖を有するジカ熱ウイルスの判別や患者から直接得られたデング熱ウイルスの高度な器具の不要な迅速検査の他、無細胞による悪性腫瘍のDNA変異の診断等に応用される。この技術をさらに応用し、Cas13の特定のssRNAウイルス(A型インフルエンザウイルス・水胞性口炎ウイルス・リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスの3種)への抗ウイルス的な作用に着目して、CARVER(Cas13-assisted Restriction of Viral Expression and Readout)が開発され、抗ssRNAウイルス薬への応用の可能性も示された。さらにCRISPR-Casシステムには抗菌作用も存在し、DNA編集を行うCas9を使用した場合にはプラスミド上に遺伝子があると適切な殺菌ができず、細菌の変異をもたらすリスクがある一方、RNA編集を行うCas13aを使用する場合はそのような懸念がなく薬剤耐性菌を標的とした増殖の抑制に臨床上使いやすいと期待する研究もある。
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