2016年 - 2018年春:富ヶ谷セッション・ベストアルバム『魚図鑑』のリリースまで
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 11:54 UTC 版)
「834.194」の記事における「2016年 - 2018年春:富ヶ谷セッション・ベストアルバム『魚図鑑』のリリースまで」の解説
新宝島が完成し草刈がバンドに復帰してからは、5人での音楽制作のリズムを作り直す時期がしばらく続いた。新宝島の制作後、岩寺と江島で「多分、風。」を、江島と岡崎で「陽炎」を制作しはじめたが、草刈は子育てのために以前よりもスタジオに滞在できる時間が短くなり、岡崎は依然としてスランプからの回復の途中にあったことが重なりバンドのペースを取り戻すことがなかなかできなかったという。2015年の後半からNFを初めとした音楽制作のモチベーションを向上させる様々な試みを行ったにもかかわらず、新しい活動スタイルを確立出来ない状況に不安を感じていたと江島は振り返っている。 2016年10月19日、12枚目のシングル『多分、風。』をリリースする。この時期は新アルバムに向けて本格的に動き始めてはいなかったものの、「郷愁」や「東京」というコンセプトをもとにアルバムの構想を練っていたことを山口が当時のインタビューで語っている。 山口は前述したバンドのペースを取り戻すことが出来ていない状況に変化を与えるため、自宅とは別にバンド専用のスタジオを新たに作ることを提案し、2017年の8月に富ヶ谷にレコーディングスタジオ「Silent Studio」が設立される。このスタジオの設備やコンセプトについてはテレビ朝日系列「関ジャム 完全燃SHOW」2018年6月3日放送回やサウンド&レコーディング・マガジン2019年8月号で解説されている。さらに山口は新しい環境を整備したとしても目標がないままでは制作が進まないと考え、AORというテーマを提示し、新曲の試作に取りかかり始める。この富ヶ谷スタジオで制作をしていた期間(メンバーは富ヶ谷セッションと呼称している)に、1人が持ち寄ったメロディやコード進行を他のメンバーと共に練り直したり、互いの当時よく聞いていた音楽の共有を行ったりしたことで徐々にバンドの調子を取り戻すことができたという。 しかし、この富ヶ谷セッションで新たに作られた音源は完成度にはおおむね満足していたもののサカナクションの音楽ではないという山口の判断から全てボツとなった。ただし、このような結果になったものの、富ヶ谷での期間が無駄になったと考えるメンバーはおらず、バンド全員で同じ感覚を再び共有するための試運転という目標は達成できたとしている。また当時の音源は新アルバムに使用されていないながらも、この時期に獲得したAORの音楽性や演奏技術のお陰で後に「忘れられないの」を生み出すことができたと振り返っている。また特に演奏技術に関しては、この時期岩寺に「覚醒」が起きたと山口は語っている。 富ヶ谷セッションを経た後、以前からデモ音源のあった「陽炎」を映画『曇天に笑う』の主題歌として完成させる作業が始まった。同時に映画のオープニングテーマとして"NF Records launch tour"で披露した「SAKANATRIBE -TRANCE MIX-」のリアレンジ作業も行っていたが、この時期は富ヶ谷セッションの時期のような雰囲気ではなく、目の前の締め切りに間に合わせることで精一杯であったという。完成前の「陽炎」は2017年4月7日に開催された「SAKANAQUARIUM 2017 高崎アリーナオープン記念ライブ」以降ライブでも演奏されていたが、2017年の間に音源としてリリースされることはなかった。メジャーデビュー10周年でありながらも2017年にリリースされた音源はYouTubeでMVが公開された「SORATO」一曲のみであり、シングル・アルバム共にCDの発売は無くまたライブ映像作品のリリースも無かった。 2018年3月28日、ベストアルバム『魚図鑑』をリリースし6枚目のアルバム『sakanaction』以来のオリコン1位を達成する。当初このベストアルバムには「グッドバイ」から「多分、風。」までのものも含めた全てのシングルを収録するアイデアも浮上していた。しかし、もし実際に全てのシングルを収録してしまうと、「グッドバイ」「ユリイカ」「さよならはエモーション」「蓮の花」のマジョリティからの脱却を試みた時期を経ての「新宝島」「多分、風。」への再浮上というストーリーを表現する機会が失われてしまうことに気づき、最終的に「新宝島」「グッドバイ」をのぞいたシングル曲は収録されなかった。こうしてリリースされたベストアルバムが高く評価されたことで山口の中では次のオリジナルアルバムで表現するべきコンセプトが明確になり、7枚目のアルバム制作に向けて本格的に動き出すきっかけとなった。一方、他のメンバーの間では出来ることであればこのタイミングでベスト盤ではなくオリジナルアルバムを完成させたかったという思いもあったためいくらかネガティブな気持ちも抱えていたという。
※この「2016年 - 2018年春:富ヶ谷セッション・ベストアルバム『魚図鑑』のリリースまで」の解説は、「834.194」の解説の一部です。
「2016年 - 2018年春:富ヶ谷セッション・ベストアルバム『魚図鑑』のリリースまで」を含む「834.194」の記事については、「834.194」の概要を参照ください。
- 2016年 - 2018年春:富ヶ谷セッション・ベストアルバム『魚図鑑』のリリースまでのページへのリンク