風神の風袋
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 00:15 UTC 版)
詳細は「風神」を参照 松本栄一は、西域にあるキジル石窟、サイラム石窟、シムシム石窟(中国語版)、クムトラ石窟の風神はいずれも東洋の風神像でなじみ深い膨らんだ布をもっており、特にシムシム石窟の風神は明らかに風袋の口を握っていることから、バーミヤン遺跡の壁画などのさらに西方のガンダーラ美術と同じ様式であり、これらのすべてが古代ギリシアと古代ローマに起源を持つとした。 また、『オデュッセイア』10巻には、アネモイの主・アイオロスが、9歳の牡牛を屠って作った牛皮の袋にあらゆる暴風を詰めてオデュッセウスに渡し、一行が穏やかなゼピュロスの風だけで航海できるように計らう話がある。ただし、『オデュッセイア』の風袋をモチーフとした作品はオデュッセウスの従者と袋が描写されたエトルリアのカメオしかなく、アイオロスと風袋を直接取り上げたものは見つかっていない。この点と袋の形状の違いから東洋の風神像への影響を否定し、風神の持つ布がはっきりと袋状になったのは6~8世紀の中国とする意見もある。 布を握り巻貝を吹く神々 ファルネーゼの杯(英語版)、プトレマイオス朝エジプト(紀元前2世紀) 袋を背負い巻貝を吹く有翼のボレアース 風の塔、アテネ(紀元前1世紀) 袋を背負うエウロス 風の塔 袋から花を撒くゼピュロス 風の塔 ガンダーラ美術のボレアース ハッダ(2世紀) 中央がキジル石窟の風神 東洋と西洋を結ぶシルクロードの中間にあったクシャーナ朝で発行された硬貨には、風神をモチーフにしたものが大きく分けて2種類ある。2世紀前半のカニシカ1世の時代の金貨にはギリシア文字(バクトリア語)で「アネモス(希: ΑΝΕΜΟΣ、アネモイの単数形)」と書かれており、有翼の風神が大きな布を広げて走る様子が描かれている。他方で、カニシカ1世の銅貨や2世紀後半のフヴィシュカ(英語版)の時代の硬貨には、ほぼ同じ構図で「オアドー(希: ΟΑΔΟ)」と書かれ翼がない。この変更が、東洋の風神に翼がない理由だという説がある。 布を両手で掲げて走る無翼の風神 カニシカ1世の銅貨(2世紀)
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