電子の波長
電子の波長
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 06:56 UTC 版)
電子の波長は、ド・ブロイの方程式で与えられる。 λ = h p {\displaystyle \lambda ={\frac {h}{p}}} ここで h {\displaystyle h} はプランク定数、 p {\displaystyle p} は電子の運動量である。電子は電位 U {\displaystyle U} において次のような速度まで加速されている。 v = 2 e U m 0 {\displaystyle v={\sqrt {\frac {2eU}{m_{0}}}}} m 0 {\displaystyle m_{0}} は電子の質量、 e {\displaystyle e} は電気素量である。電子の波長はしたがって、次の式で表される。 λ = h p = h m 0 v = h 2 m 0 e U {\displaystyle \lambda ={\frac {h}{p}}={\frac {h}{m_{0}v}}={\frac {h}{\sqrt {2m_{0}eU}}}} しかし電子顕微鏡では、加速ポテンシャルは一般に数千ボルトにもなり、電子は光速の何分の一という速度で飛び出す。SEMでは加速ポテンシャルは10,000ボルト (10kV) 程度で運用し、電子の速度は光速の約20%となるが、TEMでは200kVで運用し、電子の速度は光速の70%にもなる。そのため、相対論的効果を考慮する必要がある。すると、電子の波長は次のように修正される。 λ = h 2 m 0 e U 1 1 + e U 2 m 0 c 2 {\displaystyle \lambda ={\frac {h}{\sqrt {2m_{0}eU}}}{\frac {1}{\sqrt {1+{\frac {eU}{2m_{0}c^{2}}}}}}} c {\displaystyle c} は光速である。この式の1つ目の項は上で求めた非相対論的波長であり、次の項が相対論的補正因子である。すると、10kVのSEMにおける波長は 12.3 x 10-12 m (12.3 pm) となり、200kVのTEMでの波長は 2.5 pm となる。ちなみにX線回折で使われるX線の波長は、100 pm 台である(Cu kα: λ=154 pm)。
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