絶対ガロア群と不変量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 23:33 UTC 版)
「子供のデッサン」の記事における「絶対ガロア群と不変量」の解説
次の多項式 p ( x ) = x 3 ( x 2 − 2 x + a ) 2 {\displaystyle p(x)=x^{3}(x^{2}-2x+a)^{2}\,} に a = 34 ± 6 21 7 {\displaystyle a={\frac {34\pm 6{\sqrt {21}}}{7}}} を代入するとシャバット多項式になる。a の符号の選択肢に応じて2つのベールイ関数 f1 と f2 が得られる。この2つの関数は密接な関係にあるが、図に示しているように対応する木が同型ではなく、同値ではない。 しかし、これらの多項式は代数体 Q(√21) 上定義されているので、有理数体の 絶対ガロア群 Γ の作用で移り合う。√21 を −√21 に変換する Γ の元は、f1 と f2 を交換するので、図の2つの木に交換で作用していると考えることができる。一般に、任意のベールイ関数の臨界値は純粋な有理数(0、1、∞)なので、絶対ガロア群の作用で不変であることから、ベールイ対を他のベールイ対に移す絶対ガロア群の作用を定義できる。デッサンとベールイ対の対応を使って、この作用からデッサン全体のなす集合への Γ の作用を定義できる。この作用は、例えば図の2つの木の集合に置換群として作用する。 ベールイの定理により、デッサンの全体へのこの Γ の作用は忠実である。。すなわち、Γ の異なる2つの元はデッサンの全体の上に異なる置換を定義する。このことから、デッサンの研究は Γ について非常に多くのことを教えてくれる可能性がある。この観点からは、Γ の作用でどのデッサンが互いに変換され合い、どれがそうでないのか理解することは、非常に興味深い問題である。例えば、図に示した2つの木は、黒点・白点のそれぞれで同じ次数列(英語版)を持つことが観察できるだろう。ともに、次数が3の黒点を1つ持ち、次数が2の黒点を2つ持ち、次数が2の白点を2つ持ち、そして次数が1の白点を3つ持っている。これが成り立つことは偶然ではない。Γ がデッサンを他のデッサンに変換するとき、両者は必ず同じ次数列を持っている。次数列は、複数知られているガロア群作用の不変量のうちの1つである。 あるデッサンの固定部分群(stabilizer)とは、そのデッサンを変化させない Γ の要素からなる部分群のことである。Γ の部分群と代数体はガロア対応するので、この固定部分群に対応する体、デッサンのモジュライ体(field of moduli of the dessin)がある。デッサンの軌道(orbit)とは、デッサンの集まりであって、各要素はガロア作用により互いに変換され合うもののことである。次数不変量の存在から、デッサンの軌道は有限でなければならず、したがって固定部分群の指数も有限である。同様に、軌道の固定部分群(軌道に含まれる全ての要素を固定する部分群)を定義することができ、対応する軌道のモジュライの体はデッサンの別の不変量である。軌道の固定部分群は、デッサンの固定部分群に含まれる Γ の正規部分群の中で最大のものであり、軌道のモジュライの体はデッサンのモジュライの体の正規閉包となっている。例えば、この節で考えた2つの共役なデッサンについては、軌道のモジュライの体は Q(√21) である。この例では、2つのベールイ関数 f1 と f2 はモジュライの体上で定義されているが、ベールイ関数の定義体がモジュライの体より真に大きくならなければならないデッサンが存在する。
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