社会とSSRI
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/20 18:23 UTC 版)
「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」の記事における「社会とSSRI」の解説
1999年に起きたコロンバイン高校銃乱射事件では、犯人である少年二人のうち、一人は血液検査から大量のフルボキサミンを服用していたことが確定しており、もう一人も服用していた可能性が極めて濃厚と言われる。事件の被害者の一人は、二人を凶行に走らせた原因はSSRIにあるとして、製作元である会社を告訴したが、裁判によって退けられた。 2001年8月、米国ではカリフォルニアの患者35人が、パロキセチンの重篤な離脱反応で、製造元の英国グラクソ・スミスクライン社を相手に集団訴訟を提訴した。この離脱反応は英国でも問題となり、同社は2003年6月に添付文書での離脱反応が生じるリスク予測を、0.2%から一挙に25%に修正した。 FDAは、2003年6月パロキセチンを18歳以下に使用しないよう勧告、2004年10月には、全抗うつ剤の添付文書に18歳以下での自殺傾向のリスクについて、最も厳しい「黒枠警告」を行うよう指示した。 日本の厚労省は、欧米の動きを受けて、2003年8月パロキセチンを18歳以下の大うつ病性障害には禁忌とするよう添付文書を改訂した。 2012年7月2日、英国グラクソ・スミスクラインがパロキセチンなどの違法販売促進を認め、30億ドルという製薬業界史上最高額の支払いに合意したことを、米司法省が発表した。 日本においては、服用後に突然他人に暴力を振るうなど攻撃性を増したり激高するなど副作用と疑われる症例が、2008年秋までの4年半に医薬品医療機器総合機構に42件寄せられており、使用の際、注意を促しているが、SSRIの副作用は海外でも報告されており、氷山の一角であるとされる。 2009年6月1日に放送された『クローズアップ現代 抗うつ薬の死角~転換迫られるうつ病治療~』で、SSRIの不適切な投与により傷害行為(強盗)に及んだ患者が、医療鑑定で「SSRIの影響がある」と認められた事例が報告された。これは薬害であるが、SSRIの知識に乏しい医師が、SSRI服薬量の急激な増減が危険であることを知らずに、患者の体調報告にあわせて頻繁に投薬量の増減を繰り返していたことも一要因であるとされた。また、この薬はパニック障害で服用した場合、飲み始めてからきちんとした効果が出るまでに二週間前後の時間を必要とするので注意が必要である。また、服用によって、逆に精神のバランスを崩す可能性もあるので、経過観察には注意を要する。 うつ病が20世紀になって増加しているが、SSRIの普及と軌を一にする。SSRIという薬価が高いうつ病の薬が販売されると世界各国で軒並みうつ病患者が増え、その背景には製薬会社の病気喧伝キャンペーンが影響している。SSRIの導入後、6年間でうつ病の患者が2倍に増えるという経験則がある。 2013年、日本の厚生労働省は、大うつ病性障害に対し、18歳未満に投与しても効果を確認できなかったとして、添付文書を改訂し。医師に慎重な投与を求めるよう日本製薬団体連合会に要請した。対象は「レクサプロ」「ジェイゾロフト」「ルボックス」「デプロメール」、他はSNRIが2製品、NaSSAが2製品の計8製品である。
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