硬度と比重
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/03 08:34 UTC 版)
モース硬度は引っかき傷に対する抵抗性で示される非線形の鉱物硬度指標である。ダイヤモンドは、天然石としてはこの指標において最高位の10にランクされている(人工物としてはダイヤモンド・ナノロッド凝集体など、ダイヤモンドより高い値を示す超硬度材料がある)。それゆえにダイヤモンドはダイヤモンドを用いた場合を除いてその研磨が非常に困難であり、宝石として通例傷がつくことはない。ダイヤモンドがとてつもなく硬いことは、語源となったギリシャ語のアダマントという形容詞からわかるように、丁寧にファセット・カットされたその光沢面をルーペや顕微鏡下で見れば、平面は傷一つなく滑らかで、エッジ(角)にも磨耗一つ見られず鋭敏であることが視覚的に明白に確認できる。この性質は当然ダイヤモンド類似石にも要求され、ダイヤモンド類似石に用いられる素材は他の宝石よりずっと硬いのではあるが、さすがに本物にははるかに及ばず、それゆえ表面の傷やエッジの磨耗の有無から区別できる。 ごく最近まで「窓ガラス検査」と呼ばれる判別法がダイヤモンドの真贋を見極めるのに妥当な方法であると一般的には考えられていた。これは破壊検査の一種で、検査対象石で窓ガラスをこすって傷の有無を見るものである。石が本物であれば窓ガラスにだけ傷がつき、石のほうには傷がつかない。通常のガラスの代わりにサファイアガラス(コランダム、モース硬度9)製の板を用いることもある。だが、この方法は以下に示した3つの理由からお勧めできない。まず、ガラスの硬度はふつう6あたりでかなり低く(サファイアガラスは9で相当硬いが)、多くの鉱物(ダイヤモンド類似石に用いられるものも多数含まれる)はこれよりは高い硬度値を示す。次に、ダイヤモンドは結晶構造上四方向のへき開面を有しており、これらの面に沿って力を加えると簡単に割れてしまう。すなわち、場合によっては検査の過程で砕けてしまう可能性が否めない。最後に、多くのジュエリーに組み込まれた《ダイヤモンドかもしれない石》は、その真贋とは別にそれなりの価値があるとされており、万一傷などついたらその価値を損なうからである。 宝石用ダイヤモンドの比重もしくは密度は3.52で、ほぼこの値から外れない。ほとんどのダイヤモンド類似石はこれよりずっと重いか、あるいは若干軽いため、裸石の場合はこの差を利用して簡単に真贋を見極めることができる。ジヨードメタンのような比重値の高い液体がこの目的のために使用されるが、こうした液体は強い毒性を有するのでこの鑑定法はあまり用いられない。より実用的な方法は、対象石の各パラメータを測定し、想定される容積値や重量値と比較する方法である。一例を挙げると、キュービックジルコニア(比重5.6-6)は、同サイズの本物のダイヤモンドに比較して、1.7倍ほどの重量になる。
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