相掛かり横歩取り
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相掛かりで1980年代半ばに指される塚田スペシャルのように、再度▲2四歩と合わせて横歩を狙う手は以前からあり、1970年代から内藤国雄が先手番で指していた相掛かり▲3六歩-3七桂型をもとに、小林健二が1980年代に駒組を進めてから機を見て横歩取りを狙う『新・急戦相がかり』(将棋世界1983年9月号付録)として戦法化されて後に至っている。ただし 再度▲2四歩と合わせて横歩を狙う手は英春流横歩取らせ型で鈴木英春も指摘しているが、再度の▲2四歩とすることで先後が変わり手損と化している。2018年7月の順位戦C級2組脇謙二vs遠山雄亮戦(相掛かり#戦法の概要参照)でのように△7四歩~3四歩として、▲3六歩ならば△8六歩として後手から先手の横歩を取る構想がみられていったため、先手が▲2四歩としたことで先後同型となるが、先後も入れ代わっている。このため2010年代後半からは相掛かりで先手も7手目すぐに▲2四歩の交換をせずに、▲6八玉や5八玉と様子をみる手が多くなる。 このように様子を見ながら飛車先の歩を切る手を指すようになっていったのは、こうした横歩取りがある程度有力と見られているのも一因である。 △持ち駒 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 香 桂 金 銀 桂 香 一 王 金 角 二 歩 歩 銀 歩 歩 歩 三 飛 歩 歩 歩 歩 四 五 歩 歩 飛 歩 六 歩 歩 歩 歩 歩 桂 七 角 金 玉 銀 八 香 桂 銀 金 香 九 ▲持ち駒 無し図は▲2四歩 まで △米長 持ち駒 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 香 桂 王 銀 桂 香 一 金 金 角 二 歩 歩 銀 歩 歩 歩 歩 三 飛 歩 歩 四 歩 歩 五 歩 飛 六 歩 歩 歩 歩 歩 桂 七 角 金 玉 銀 八 香 桂 銀 金 香 九 ▲内藤 持ち駒 歩図は▲3五歩 まで △谷川 持ち駒 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 香 桂 銀 桂 香 一 金 王 金 角 二 歩 歩 銀 歩 歩 歩 歩 三 飛 歩 歩 歩 四 歩 五 歩 歩 飛 六 歩 歩 歩 歩 歩 七 角 金 玉 銀 八 香 桂 銀 金 桂 香 九 ▲小林 持ち駒 なし図は▲2四歩 まで 小林が参考にした内藤の局面は端歩が▲1五歩-△1三歩型で(図中央)、内藤は▲2四歩からの横歩取りではなく▲3五歩から仕掛けている。そして1四歩の突き捨て、角交換から4五角で、後手の6三の銀と1二の地点を睨んでから飛車を5六に回し、桂馬とともに中央に殺到している。これを参考に小林は後手番で端歩も△9四歩-▲9六歩型でとし、これで△7五歩と内藤同様の攻め方を実施するが、端歩の関係で、角の睨み先の9八地点は後の進行で▲9六飛とする手が利き、失敗となる。これを機に小林は仕掛けを▲2四歩として横歩を取る順に切り替える。 1982年7月15日 オールスター勝ち抜き戦で小林健二はvs. 谷川浩司 戦で試みる。後手谷川の陣形は△1三歩型で、5二金が入っている。先手は桂馬を跳ねずに▲2四歩以下 △同歩 ▲同飛 △6五歩 ▲2五飛 △5四銀 ▲2四歩 △8八角成 ▲同銀 △2二銀 ▲2三角から▲1四歩以下98手で先手快勝。次の1982年7月21日 オールスター勝ち抜き戦のvs. 加藤一二三 戦では、図より △同歩 ▲同飛に △8二飛とし、以下 ▲1五歩 △同歩 ▲1三歩 △2三歩 ▲3四飛 △8八角成 ▲同銀 △3三金 ▲1四飛 △1三香 ▲同飛成 △同桂 ▲1四歩 △2五桂 ▲同桂 △2四金 ▲8三香 と攻めが切れず続いた。その後1982年12月09日 第34期王位戦予選 vs.有吉道夫 戦では後手が△6四歩型でなく7四歩型に構えて、▲2四歩 △同歩 ▲同飛に △7五歩とし、以下 ▲2五飛 △7三桂 ▲1五歩 △同歩 ▲2四歩 △8八角成 ▲同銀 △2二歩 ▲7五飛 △5四飛 ▲8二角とその後も先手が快調な攻めが続いた。一方で1983年01月21日 十段戦予選の vs.南芳一 戦では、▲1六歩-△1三歩型で▲2四歩を決行し以下△同歩 ▲同飛 △8二飛 ▲3四飛とし △2三金 ▲2二角成 △同銀 ▲3五飛 △2四金に新手の▲1五角打ちをみせたが、以下△同金 ▲同歩以降一段落し、再度駒組みが続くことになる。 1990年には前述の 米長邦雄 対 南芳一戦(1月17.18日 王将戦第一局と2月8.9日 同第3局)と4月12.13日 名人戦第一局、中原誠 対 谷川浩司 戦など、タイトル戦でも指されている。 2017年以前には後手番は△6四歩が実戦例の9割以上であったが、前述の小林対有吉戦や脇対遠山戦のように△7四歩など、▲2四歩からの攻めを警戒していろいろな指し方が試されている。 △持ち駒 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 香 桂 金 銀 桂 香 一 飛 銀 王 金 角 二 歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩 三 歩 四 歩 五 歩 歩 六 歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩 七 角 金 玉 銀 飛 八 香 桂 銀 金 桂 香 九 ▲持ち駒 無し図は△8六歩 まで △千田 持ち駒 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 香 桂 金 銀 桂 香 一 銀 王 金 角 二 歩 歩 歩 歩 歩 歩 三 飛 歩 歩 歩 四 五 歩 歩 飛 六 歩 歩 歩 歩 歩 歩 七 角 金 玉 銀 八 香 桂 銀 金 桂 香 九 ▲郷田 持ち駒 なし図は▲2四歩 まで △高見 持ち駒 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 香 桂 金 王 銀 桂 香 一 銀 金 角 二 歩 歩 歩 歩 歩 歩 三 歩 歩 四 歩 五 歩 飛 歩 六 歩 歩 歩 歩 桂 歩 七 角 金 玉 銀 飛 八 香 桂 銀 金 香 九 ▲斎藤明 持ち駒 歩図は▲3七桂 まで 図のように▲7六歩で△7四歩や3四歩には▲2四歩△同歩▲同飛と横歩を狙う手が生じ、また次に▲7七角と飛車先交換を防ぐ手があるので、後手は△8六歩▲同歩△同飛と交換にいき、先手もこれをみて▲2四歩と交換する細かい工夫をし、ダイレクトに横歩取りを狙う手段を警戒した手順である。この横歩取りを狙う戦術は飛車の位置もいろいろ考えられ、玉の位置、端歩の関係と、様々な要素が形勢を分けていく。 2018年12月の朝日杯二次予選、郷田真隆対千田翔太戦のように端歩の交換がなく、図より▲2四歩△同歩▲同飛△7五歩▲2二飛成△同銀▲5五角打と進む。以下△2八歩▲3七桂△2九歩成▲2二角成△同金▲同角成△2八と▲1一馬△3八と▲同金で、△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△7六飛と進行した。△8六歩で△2九飛は▲3九金打△1九飛成▲2八銀から竜を取りにいけるが、もし▲1六歩△1四歩の交換があれば、△1六竜と逃げる手が効く。
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