甲骨文の時代考証
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/28 07:17 UTC 版)
殷王室の卜占に用いられた甲骨文は、あらゆる状況から5つの時代に分類できる。この5つの時代に甲骨文を当てはめる作業を「断代」と呼んでいる。 董作賓は1932年に「甲骨文断代研究例」を著し、10種の標準を示した。 世系 殷王家の血統を判断することで、どの代の甲骨か判断できる。 称謂 称謂とは父・兄・先祖を十干で示したもので、「父乙」を祭った王は当然ながら小乙の嫡子27代武丁・武乙の嫡子33代文武丁・帝乙の嫡子35代帝辛の3人に絞り込まれる。 貞人 占いを担当する神官である。代々の王は専属の貞人ら神官団を抱えており、前王が崩御すると前王の神官団を追放して専属の神官団にゆだねる習慣があり、貞人が判明すればおのずと王が誰か断代できる。 坑位 新たに出土した甲骨についてはどこで出土したかによって祭祀の場所が確定できるため、時代もおのずと断定できる。 方国 方国とは殷周辺の小国で、友好・敵対関係の変化や勃興・滅亡の変化を読み取ることによって時代が限定できる。 人物 神官団に加わっていない后や子など、周辺の人物の変遷でも時代を限定できる。 事類 戦乱や収穫の変遷、天変地異など、占う内容の変遷によっても時代が限定できる。 文法、字形、書体 貞人に隷属する書記官も、神官団のメンバーとして王に従い代替わりする。そのため、文章を編む書記官のくせによって文法は変わり、下書きをする書記官と字を刻む書記官によっても字形・書体が変わる。董作賓の「雄偉」「謹飭」「頽靡」「勁峭」「厳整」という5代の分類は、この書記官の代替わりによって生じるものである。 この結果、 第1期(27代武丁の時代) - 甲骨の57% 第2期(28代祖庚・29代祖甲兄弟の時代) - 11% 第3期(30代祖辛・31代康丁兄弟の時代) - 12% 第4期(32代武乙・33代文武丁親子の時代) - 8% 第5期(34代帝乙・35代帝辛親子の時代) - 10% と断代できる。
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