甲骨文の記録内容
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/28 07:17 UTC 版)
甲骨を用いた占いは以下に大別される。 定期的な占い - 癸(みずのと)の日に、以後10日間の吉凶を判断する。 不定期的な占い - 開戦・豊作・異常気象の終わりを祈願する。 占いは吉兆か凶兆かの二者択一だが、実際は凶兆が出ても、決行日を先送りしたり生贄の数を増やすなどしたうえで問い直し、吉兆が出るまで繰り返された。 そのため、定期的な占いに用いた甲骨の場合、凶兆が出ない限り「癸○の日に貞人□が占う、この旬間に凶事はないか?」という文言が延々と並ぶだけになる。仮に凶兆が出た場合は、その対処法として「神前に生贄として△を×匹捧げる」などの処置が追記される。 記録内容は一応の定型文がある。 前辞 「(日付)に(貞人)が占う」という意味を持つ定型文「(日付)卜(貞人)貞」 命辞 占う内容に該当する主文 占辞 王の判断 験辞 実行後の結果 実際に出土した甲骨ではこの定型文全てがそろったものは少なく、やはり占いが外れたことも多かったのか、占辞・験辞が欠落している甲骨文が圧倒的に多い。 実際の出土例は今のところないが、筆や木簡を像った文字が甲骨に刻まれていることから、甲骨文に刻まれた文章の草稿は木簡に記録されていたと思われる。また、甲骨文の中に横画を刻み忘れたものが混じっていることから、甲骨に下書きをしたうえで字を刻んだと推定される。 亀の腹甲を用いる場合には、中心線を基準として線対称の位置に肯定文と否定文のセットを刻むことが多く、牛の肩甲骨を用いる場合は線対称を意識せずに羅列していくことが多い。 各文字の縦線だけを刻み、横線をほとんど刻んでいないという甲骨文字がこれまでに数例発見されている。これは縦線を刻み終わった段階で、なんらかの理由によって刻字を中断し、廃棄されたものと思われる。この例から考えると、甲骨に文章を刻む時にはまず文章全体に含まれている各文字の縦の筆画だけを刻み、それから骨や甲羅を九十度回転して、横線を各文字に刻みつけていったようである。このようにまず全体の縦線だけを刻み、あとから横線を刻んでいくとういうのは、後世の木版印刷でも採用された刻字手法である。表面が硬い素材にナイフで文字を記録する時には、このようにするのがもっとも能率的だったのだろう。これもまた筆記用具の影響によって発生した文字記録の特徴である。
※この「甲骨文の記録内容」の解説は、「甲骨文字」の解説の一部です。
「甲骨文の記録内容」を含む「甲骨文字」の記事については、「甲骨文字」の概要を参照ください。
- 甲骨文の記録内容のページへのリンク