水代謝
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/04 15:01 UTC 版)
水代謝(英:water metabolism、独:Wasserstoffwechsel)は水が生体内に出入りし、分布する動態をいう。水分は地球の全生体に不可欠な成分で、人体においては体構成成分の60 - 70%を占め、含量は年齢、性別、脂肪量により差がある。人体内の水分は飲料水、摂取食物中の水(食品の水分含量は果実・野菜類で80 - 95%、肉・魚類で60 - 80%、穀・豆類で12 - 16%)、代謝水が給源となる。水は体内で栄養素の運搬、代謝の媒体、浸透圧の維持、老廃物の搬出、体温調節など様々な生理的役割を果たす。正常な場合の水代謝はバソプレッシン(抗利尿ホルモン、ADH)分泌と口渇による飲水で調節される。この調節に関与する受容体は、前視床下部に局在する浸透圧受容体 osmoreceptor と左心房の容量受容体である。水過剰の状態ではADH分泌は抑制され、濃度の低い尿が多量に排泄されて体内の水分は減少し、口渇感が抑止されて飲水量は低下する。これと反対に水欠乏状態ではADH分泌が促進されて尿量は減少し、口渇感が刺激されて飲水量が増大する。また水代謝には腎機能に関するものの他に不感蒸散、消化管からの水分排泄があり、さらに副腎皮質や甲状腺の機能、腎における尿素やナトリウムの負荷量なども関与する。病態として、ADHの欠損した尿崩症では高度の多尿とそれに伴う多飲があり、また心因性多飲症では多飲に続発する多尿が認められる。このほか、各種の多尿性疾患や浮腫性疾患も水代謝に異常を来した病態で、ADH不適合分泌症候群(SIADH)などで体内の水が他の溶質、特にナトリウムに対して過剰になった病態が水中毒である。
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