日本語における表記について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 00:04 UTC 版)
日本における教育・法律・行政文書の世界では2000年代ごろ、「子供」という表記を差別的な印象であるなどといった理由で敬遠し、代わりに「子ども」表記を用いることが多くなった。 小中学校の国語においては「子」は小学校1年生で、「供」は小学校6年生でそれぞれ読みを学ぶ漢字であり、小学校の5年生までは交ぜ書きの「子ども」表記であるが、教科書においては小学校6年生以降でも出版社によって「子供」「子ども」両方の表記が混在していた。 例として、中学3年生の全社の検定教科書に収録されている魯迅の『故郷』では、学校図書、教育出版、光村図書が「子供」としているのに対して、東京書籍と三省堂は「子ども」と表記している。教員採用試験の参考書でも、かつての文部科学省の表記を根拠に「子ども」表記を推奨しているものがあった。なお当て字ないしは誤表記として「小供」や「子共」も見られた。 しかし、文部科学省が2013年(平成25年)5月に、省内で多用されてきた「子ども」の表記の経緯について調査。表記についての内規が存在しないことを確認した上で、文部科学大臣下村博文(第2次安倍内閣)は省内での表記を統一するよう指示した。協議の結果、「子供」表記は差別表現ではないとの判断が示され、6月下旬から公用文に用いられる表記を「子供」に統一した。 「子供」表記への統一は、当初あくまで公文書に限るとされていたが、2010年代以降はこれに倣って公文書以外でも「子供」表記が以前に比べて増加傾向にある。前述の国語の検定教科書においても、これまで積極的に「子ども」表記を採用していた東京書籍なども、小学校6年生以降の教科書において「子ども」と表記していた部分を「子供」に改めている。新聞社など民間のメディアは表記の統一を行なっていないが、毎日新聞の新聞記事における使用実態は2000年ごろ以降「子ども」表記が多数となったものの、2010年ごろ以降は再び「子供」表記が増え「子ども」と同数程度になった。ただし、同社による一般へのアンケートによれば、「子ども」表記を好む読者が63.3%、「子供」表記は25.4%に留まり、「子ども」が優勢である。 2020年(令和2年)の神戸新聞の記事によれば、国語辞典編纂者の飯間浩明の意見として、「供」の字にまつわる差別的なイメージは「史実に基づいておらず、まったくの俗解です」と断言した上で、一方「日本語は漢字と仮名の交ぜ書きが普通であり、『子ども』が美しくないとは、必ずしも言えません」と、「子ども」表記のより柔らかなイメージについても肯定したことを紹介。また、全国の地方紙にアンケートを実施したところ、多くの記者は「『子ども』の方が字面の印象が柔らかい(ので使用する)」と回答。どちらの表記を選ぶかは書き手の自由であり、「ことさら競う」ことなく「好きな表記をすればよいと思います」とした。 児童文学作家の矢玉四郎は「子供は当て字であり、差別的な意味は全くない」と断言し、『子ども教の信者は目をさましましょう』という運動を展開している。
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