新旧対照表方式の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 15:06 UTC 版)
「新旧対照表方式」の記事における「新旧対照表方式の問題点」の解説
改め文方式では、法律・政令を基準として、法令・例規を通したおおよそ統一された表現方法が確立されているのに対し、新旧対照表方式では、府省令等同士、例規同士ですら、その表現方法が必ずしも統一されていない。これが第一の問題点といえる。 つまり、本文は、基本的に表中の記号の趣旨を明らかにするため、定型的に記載されるものであることから、その書き方に多少の不統一があっても、法的に疑義なく記載されてさえあれば、事実上読む者の理解にはかかわらないといえる。 一方、新旧対照表本体は、改正内容を実質的に定める部分であり、その記載方法をどのように定めるかは、まさに現実に法令の適用等を受ける国民の理解に関わる部分である。それにも関わらず、新旧対照表の記載方法は各省庁・自治体ごとに少なからず異なっており、このことは国民が各改正規定の趣旨を理解する上での障害となりうるといえる。 また、記載方法に揺れがあることは、新様式方式でも同様である。その要因の1つは、イメージサンプルが(法令審査事務提要に載っているような比較的一般的な改正も含め)あまり多くを語っていないこと、そして(様式の改正などの)府省令等レベルでの改正は考慮されていないことである。例えば、1項からなる条に第1項を加える場合、1項からなる本則又は附則に項又は条を加える場合、様式の改正を行う場合の記載方法については、新様式方式を採用する府省庁等の間で揺れがある。 次に、内閣官房・内閣法制局「新たな改正方式について(検討状況)」(平成15年12月9日)では、新旧対照表方式の技術的問題点として、次のものを挙げている。 1. 新旧対照表方式の適用範囲(改め文との使い分け) 2. 早期に提出を要する大部な法案等における適用の可否 3. 印刷、校正等に要する時間の増大への対応 4. 紙量の増大の抑制方案 5. 参考記載部分のチェック等の省略化方策 6. 現行法令のデータベースの整備 これらについては、「新旧対照表方式による法令等の改正について(調査依頼)」(内閣官房行政改革推進本部事務局平成29年2月13日)別添によると、平成29年2月9日、自由民主党の行政改革推進本部長(河野太郎氏)から次のような指摘があったとする。 改め文を作る前に新旧対照表を作るため、新旧対照表方式を採用すれば改め文を作る手間が確実に省ける。 新旧対照表方式の場合、旧の箇所のチェック等が大変というが、IT も使えるし、正確な条文とするのは役所として当然の仕事であり、官報が大部になりチェックの量が増えることは理由にならない。 また、「改正対照表方式による法律の改正について(意見聴取)」(内閣官房行政改革推進本部事務局平成29年3月1日)の別添資料でも、「ITの活用により参考記載部分を含めてその正確性の確保は容易であるとの認識に基づき、改正対照表の全体について正確性を確保する必要があること」を意見聴取の前提としている。そもそも、現在でも、参考資料としての新旧対照条文の訂正等は行われる。 このように、法令案の起案者としては、新旧対照表から作成する官庁が大半であること、現状でも新旧対照表の参考記載部分の誤りの訂正は行われていることから、法令案の起案上の負担は、多くの場合新旧対照表方式に移行した方が減少すると考えられている。もっとも、新旧対照表方式では、法令案の本文自体に表を入れ込まなければならないこと、方式書方式のまま導入する場合、不整形な破線の使用が必要になることなどから、単純に作業量が減少するのみとはいえない。 一方、国民の分かりやすさという観点からは、現状でも新旧対照表はホームページ等で提供されていることからして、どうしても法令自体を新旧対照表方式にしなければならない理由を見いだしがたいとも考えられる。
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