探査機による尾の通過
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/04 21:04 UTC 版)
「百武彗星 (C/1996 B2)」の記事における「探査機による尾の通過」の解説
太陽探査機ユリシーズは1996年5月1日に百武彗星の尾を通過した。尾を通過することは計画されていたものではなく予想外だった。ユリシーズがこのような遭遇をしていたことは知られていなかったが、1998年にある研究者達がユリシーズの古いデータを解析した際に、ある時期に陽子の通過個数が大きく減少し、また局所的な磁場の方向と強度が変化していることをユリシーズの観測装置が検出しているのを見つけた。研究者らは、このデータは探査機がある天体、おそらくは彗星の「航跡」を横切ったことを示すものと考えたが、これに対応する天体を同定することはできなかった。 2年後、2つの研究チームが独立にこの時の現象を分析した。磁力計担当のチームは、上述の磁場の方向の変動の様子が、彗星のイオンテイル(プラズマテイル)で生じると考えられる「ひだ」状構造のパターンと一致することに気づいた。磁力計チームはこの原因となる容疑者を探した。当時の探査機の位置近くには既知の彗星は存在しなかったが、さらに広い範囲を探したところ、百武彗星が1996年4月23日にユリシーズから約5億km離れた位置でユリシーズの軌道面を横切っていることを突き止めた。この時の太陽風の速度は約750km/sだったため、彗星の尾の物質がこの速度で、黄道面から約45度離れ、3.73AUの距離にあったユリシーズ探査機の位置まで流されるには約8日かかると推定された。この磁場測定データから推測されたイオンテイルの配置は百武彗星の軌道面上にある彗星核の位置とよく合っていた (Jones, BAlogh & Horbury 2000)。 もう一つのチームは探査機のイオン組成分光計のデータを調査し、磁場の変動と同時に荷電粒子の検出個数が突然大きく増えていることを発見した。この時に検出された元素の相対存在度から、この現象に対応する天体は彗星に間違いないことが明らかになった (Gloekler, Geiss, Schwadron et al. 2000)。 このユリシーズと百武彗星の遭遇から、百武彗星の尾は少なくとも5億7,000万km (3.6AU) 以上の長さを持っていたことが分かった。これはそれまで知られていた最も尾の長い彗星である1843年の大彗星の尾の2.2AUに対してそのほぼ2倍に達する長さである。
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