捕物帳と探偵小説の黎明期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 00:09 UTC 版)
「推理小説」の記事における「捕物帳と探偵小説の黎明期」の解説
日本では明治以前から勧善懲悪をテーマとした歌舞伎や講談の演目が存在していた。例えば大岡政談などの政談ものは発生した事件を正しく裁く筋立てが法廷推理小説に等しく、鼠小僧や石川五右衛門を題材とした作品群は犯罪心理小説に通じるものがある。しかし、これらは奉行や犯罪者の物語であり、民間人が犯罪を解決する役回りにはならない(もし民間人が犯罪を解決しようとすると仇討ちや義賊という形になり、民間人ではなく情に厚い犯罪者になってしまう)。日本における探偵小説は、文明開化以降、探偵という概念が西洋から輸入されることで生まれた。 黒岩涙香が明治22年(1889年)に発表した「無惨」(別題「三筋の髪、探偵小説」)が、日本人初の創作推理小説と言われる。涙香は1896年にも「六人の死骸」と題する作品を執筆している。 1917年、岡本綺堂は、アーサー・コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」に影響を受け、「三河町の半七」を主人公にして「半七捕物帳」のシリーズを開始。探偵小説の要素を盛り込んだ時代劇である「捕物帳もの」のさきがけとなる。ほかに、野村胡堂の1931年からはじまる「銭形平次捕物控」シリーズは、後年、たびたび映画やテレビドラマ化されている。「旗本退屈男」の佐々木味津三には「むっつり右門」、城昌幸にも「若さま侍」の捕物帳がある。変わったところでは、鳴海丈がセクシー路線の『彦六捕物帖』『柳屋お藤捕物帳』などを書いている。 「捕物帳もの」と並ぶ日本ミステリのジャンルに「奉行もの(お白洲もの)」がある。実在の遠山景元が登場の「遠山の金さん」が一例。「伝七捕物帳」 の陣出達朗や『桃太郎侍』で知られる山手樹一郎など複数の作家が、「遠山の金さん」ものを執筆している。 他には、時代小説のイメージが強い山本周五郎だが、『寝ぼけ署長』という連作の探偵小説がある。「木枯し紋次郎」の笹沢左保も多くの捕物帳以外に、現代を舞台にしたミステリを発表した。
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