拉致問題捜査の妨害行為
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月刊誌『文藝春秋』1998年6月号によれば、1987年の大韓航空機爆破事件の実行犯金賢姫の証言によって捜査が開始された「李恩恵(リ・ウネ)拉致容疑事案」に関連して、韓国側からの情報提供を得た警察庁は、警備局審議官をトップに十数名からなる「李恩恵身元割出調査班」を設置し、警視庁でも通称「ウネ・チーム」を設け、さらに、各都道府県警察でも同様のチームが設置されて全国規模の大がかりな捜査活動が展開された。その結果、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)幹部で北朝鮮に高額の献金をし、訪朝の際には国賓待遇を受ける大物商工人、その配下の2名、1人は偽装転向して多数の偽造旅券を隠し持った北朝鮮工作員、もう1人は海岸での拉致犯罪を補助する「沿岸徘徊人」、いずれも在日朝鮮人実業家の計3名が、田口八重子(朝鮮名、李恩恵)の拉致にかかわった人物として浮かびあがった。この資料は「むかご」リストと称されている。1990年5月初め、警視庁に警察庁、検察庁、警視庁外事など関係各所の幹部約150名が集められ、5月10日付の大物商工人(朝鮮総連幹部)の家宅捜索令状と、5月14日付の多数の偽造パスポートを保有する工作員の逮捕令状が用意された。さらに、朝鮮総連本部や朝鮮大学校にも家宅捜索令状が出され、機動隊も動員されて総勢450名体制で捜査にあたる予定であったが、突如、直前の5月9日に中止させられた。この件については緘口令がしかれたが、同年9月の金丸訪朝によってつぶされたという伝聞情報がある。 同事件については、2001年12月16日付『産経新聞』が「朝鮮総連元幹部の外国人登録法違反-故金丸氏捜査に圧力」という見出しで報じた。それは、以下のような内容である。 平成2年(1990年)5月に警視庁公安部が摘発した朝鮮総連の元幹部らによる外国人登録法違反事件の捜査過程で、日朝関係への影響を懸念した自民党の金丸信元副総裁が捜査を朝鮮総連などに拡大しないよう、捜査当局に圧力をかけていたことが明らかになった。警視庁による朝鮮総連中央本部や朝鮮大学校への家宅捜索は行われず、捜査当局内部からも捜査が不十分だと疑問の声が上がっていた。金丸氏は同年9月に訪朝した。 田口八重子拉致事件の真相を解明しようという営みは、金丸信の圧力で大きく妨害された疑いがもたれている。
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