打ち上げシステムの革新
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 16:17 UTC 版)
「イプシロンロケット」の記事における「打ち上げシステムの革新」の解説
M-Vロケットの開発ではロケットの大型化による打ち上げ能力の増強に注力した結果、アビオニクスや地上設備等の打ち上げシステムは旧来から大きく変わっておらず、運用中に大幅な刷新が検討されていたが、実現しないまま運用を終了していた。このため、イプシロンロケットでは打ち上げシステムの革新が大きなテーマになった。 イプシロンロケットでは、H-IIAロケットなど従来のロケットで行われている搭載電子機器を一対一で接続する方法ではなく、LANのようなシリアルバス接続とすることで簡素化する手法をさらに進化させて、新たに開発した搭載点検系の機器と簡素な地上設備をネットワークで結んで自律点検機能を持たせる。これにより、数人とパソコン数台でロケットの打ち上げ前点検や管制を行うことが可能になった。これを「モバイル管制」と称している。この打ち上げ前点検作業は、点検項目が約2,000に及び、コンピュータ制御に切り替わる70秒前からでも約300項目あり、数十人がかりで数時間かかるものが、この新システムでは70秒で終えることができる。セキュリティ上の問題から実現はしないが、原理的にはインターネットを通じて世界中のどこからでもパソコン1台で全ての管制が可能である。一方、少数のパソコンでの集中管理の危険性として、管制用パソコン、たった1台の誤作動やウイルス感染、クラッキングによるプログラムの改竄が致命傷につながる恐れがある。冗長性を得るために2台のパソコンで管制を行うが、従来の数十台パソコンで管制されるシステムに比べた危険性も指摘されている。 新たに開発した搭載点検系のうち、機体に搭載されて射場整備時に機体の状況を監視する機器がROSE(Responsive Operation Support Equipment)、火工品回路の健全性を点検した後、打ち上げ前に取り外されて繰り返し使用される機器がMOC(Miniature Ordnance Circuit Checker)である。 また、ロケットに搭載されている各種機器は固有仕様の物が多く、機器の置き換えや組み替えをするためには適合のための開発作業が必要だったが、イプシロンロケットでは、次世代の宇宙機用ネットワーク規格として国際的に標準化が進められているSpaceWireを取り入れることで互換性を高め、機体構成の変更や、部品の枯渇への対応を容易にすることとした。
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