戦後の低負担高福祉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 03:23 UTC 版)
「日本の消費税議論#景気への影響」および「日本の消費税議論#逆累進性」も参照 日本の国民負担率 は40%未満であり、高負担高福祉の欧州、特に70%を超える北欧諸国に比べれば低い状態にある。 北欧の社民主義の左派政党の政権の中では、グローバリズムが進展し企業などの国境を越えた拠点移動が容易となった現代においては、国内の雇用維持創出のために法人税や所得税を下げ、消費税をより優先的な財源とすることが高福祉国家を実現する上で重要だという意見もあり、日本の福祉財源確保に関する方針は基本的にはこのような考えの下で進められてきた。一方で、福祉財源の確保は消費税の増税よりも公共事業や地方交付税 の削減などを優先して確保すべきだという主張もあり、政治的には、福祉政策をどの水準に保つかということと、どのように税収を確保するかという議論は切り離せないものである。 近代の先進国における政党政治では、左派政党が高負担・高福祉の路線を、右派政党が低負担・低福祉の路線をそれぞれ主張して競う状況が多く見られたが、日本においては長らく与党を担う右派の自民党が中負担・中福祉として社民主義に近い路線を採用していた。しかし1960年代頃から、地方選挙等で野党側の候補が医療費無料対象の拡大など高福祉の政策を掲げて当選する場面が増え、東京都に始まり、他のいくつかの地方自治体でも同様に老人医療費の無料化などが導入されていった。 「高齢者の医療の確保に関する法律#法改正の経過」も参照 このように福祉政策に対する方針が選挙においてより争点化され影響力を持つようになった結果、現在の日本の福祉政策は、福祉財源全体を管理する与党側の思惑としては財源を据え置きにしたまま、福祉内容の面ではより拡充が進んでしまうという形になり、相対的に「低負担・高福祉」の歪んだ構造へと変化してきた。 社会体制が高福祉化へ転換する中で社会保障関係費が歳出に占める割合は年々増加し、また、高齢者の医療費負担が引き下げられたことで医学的治療の必要性が低い人々にまで過剰な通院を促してしまう(病院のサロン化)など、諸々の問題を生じさせることにもなった。
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