形成の過程
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 00:46 UTC 版)
中胚葉細胞が外胚葉と内胚葉の間を満たすものは無体腔動物、間に体腔を作って外胚葉の裏打ちのみを行うものは偽体腔動物、外胚葉・内胚葉の両側の裏打ちをするものを真体腔動物と言う。外胚葉と内胚葉の間にほとんど細胞の存在しないものを二胚葉性動物というが、実際に外皮と腸壁の間に細胞が存在しない例はヒドロ虫類しかなく、その意味では後生動物は全て三胚葉性とする主張もある。 中胚葉がどこに由来するかは動物群によって様々である。大きく分けると外胚葉の細胞に由来するものと、内胚葉の細胞に由来するものがあり、前者を外中胚葉 (ectomesoderm)、後者を内中胚葉 (endomesoderm)という。真の中胚葉は後者であるとみなされ、たとえば二胚葉性動物と言われる刺胞動物と有櫛動物では外中胚葉のみを持つ。だが、これをあえて内中胚葉と区別しない立場もある。 真体腔は、その発生の様式から、大きくは以下の二つに分けられてきた。 腸体腔 (entocoel) 腸管の側面に腸体腔嚢と呼ばれる膨らみを生じ、これがくびれて独立したものから発達する。 裂体腔 (schizocoel) 中胚葉に当たる細胞が分かれて、その後のその内部に体腔が形成される。 その典型的なものは環形動物に見られるもので、卵割の初期に形成される一個の端細胞(または中胚葉母細胞)が卵割腔内で分裂し、前方に向かって体節ごとの体腔を作ってゆく。 この二分法は古典的な動物系統論に基づくものである。それによると三胚葉性の動物は原口が口になる前口動物と原口が肛門になる後口動物に分かれ、前者は螺旋卵割を行い、裂体腔を持つのに対して、後口動物は放射卵割を行って腸体腔を発達させる。しかし、このような二分法は現在では疑問視されている。 なお、脊椎動物も後口動物であるから腸体腔であり、その中胚葉は原腸壁から袋の形で分離するとの判断があった。それによると両生類の場合、神経胚期に脊索の両側で二層の壁を持つ袋の形で外胚葉と内胚葉の間に入り込み、その後に脊索との間でくびれるようにして分離する。だが現在では脊椎動物は裂体腔であると判断されている。 実際の発生では状況はさらに複雑である。たとえば発生のモデル生物として使われてきたウニの場合、胞胚腔を埋める細胞には以下のような三つの形成過程がある。どれも内胚葉起源と見なせるものの、それぞれ出現する時期も場所も異なるが、その全てが中胚葉と見なされている。 まず原腸陥入に先だって、植物極層から胞胚腔内に細胞群がこぼれ落ちる。これを第一次間充織と言い、原腸陥入が進むと原口近く、胞胚腔の植物極側の底に位置する。これは幼生の骨片を形成する。 原腸陥入の際に原腸の先端部から胞胚腔内にこぼれ落ちる細胞群があり、これを第二次間充織という。これは原腸を引き込む運動に与って原腸が陥入する方向の先端に位置し、後に筋肉や体腔細胞などに分化する。 原口の反対側に新たに口が開いた後、腸管の側面から膨らみを生じ、独立して体腔嚢となる。これは変態の際にウニ原基の形成される元になる。
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