幹部候補生に対する評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/02 04:48 UTC 版)
「幹部候補生 (日本軍)」の記事における「幹部候補生に対する評価」の解説
幹部候補生出身の予備役将校は軍歴の長い下士官や兵から見て、士官候補生出身の現役将校と比べ教育期間が短く、また入営時には一般兵と同じ立場であったこともあり、概して軽侮されがちな傾向であったという著述が散見される。士官候補生出身の現役将校を「実弾」「実包」あるいは「本ちゃん」と呼び、一方の幹部候補生出身の将校を「空砲」「擬製弾」と呼ぶ例などがある。 連隊にはたくさんの将校がいたが、ほとんどが予備士官学校出の将校であった。予備士官学校出というと、いわば半プロで(後略)。さて“実包”の方はこれとは違う。小学校から幼年学校へと学び、それから士官学校と歩み続けて、軍人としてのプロの道を勉強してきた者である。正真正銘、まじりっ気なし、純金の将校である。バリバリの職業軍人なのである。 —春風亭柳昇『陸軍落語兵』69頁 兵隊達は、本当の士官学校を出て来たいわゆる職業軍人の将校達には頭が上らなかった。彼らを「本ちゃん」と称しておそれていたのだ。しかし、それまで連隊で特別教育を受けて候補生から昇進して予備役の少尉になった我々の先輩の予備役将校達には、「疑製弾」と称して小馬鹿にしていたのだ。 —中村八朗『ある陸軍予備士官の手記』上巻16頁 また軍服の襟に着用する特別徽章は制度開始以来、士官候補生とその出身の見習士官が星(五芒星)のみであるのに対し、幹部候補生とその出身の見習士官は差別化され円形の台座に星を配置したデザインから、徽章そのもの、あるいは着用した幹部候補生や見習士官を「座金」と揶揄する場合もあった。 しかし、この星には、まるい座金がついていて、厳密に区別された。つまり、一般の大学出身の幹部は「ザガネ」と呼ばれ、また「空砲」と呼ばれた。 —村上兵衛『桜と剣』224頁 1943年(昭和18年)10月、陸軍服制の改正(勅令第774号)により特別徽章が変更され、星(五芒星)を桜の枝葉が囲む共通のデザインになったが、徽章の色は士官候補生と出身の見習士官が金色、甲種幹部候補生と出身の見習士官が銀色に差別化された。 幹部候補生やその出身将校に対する評価の原因となったものは、主として本人の資質とは別の制度上の問題である。1944年(昭和19年)、新たに特別甲種幹部候補生の制度が作られた際には「従来ノ幹部候補生ニ在リテハ統率力特ニ指揮権承行ノ厳粛ニ付テ十分ナラザルモノアリ而シテ其ノ原因ノ最大ナルモノハ(中略)一般兵ヨリ選抜スル点ニ在ル」と、従来の幹部候補生に対する「少し前まではただの兵隊」という認識を改革する点も考慮されていたことがうかがえる。
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