寄生性昆虫の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 06:48 UTC 版)
過変態といわれるのは、上記のように1齢幼虫が宿主まで到達するための特別な運動器官を備え、2齢では宿主上、あるいは内部で寄生生活をするためにそのような構造や能力を大きく失う、という例が多い。ツチハンミョウ類に見られるような、扁平な紡錘形の体に高い運動性を備えたものをプラニデュウム Planidium と総称することがあり、これに類する幼虫を持つものは寄生性昆虫に多い。これを持つのは寄生性昆虫として、コウチュウ目のツチハンミョウ科、オオハナノミ科、それにホソカタムシ科のソシルス属 Sosylus があり、他にネジレバネ目、チョウ目のセミヤドリガ、ハエ目のツリアブ科から知られ、また非寄生性ではあるがコウチュウ目のハネカクシ科とホタルモドキ科でも知られる。 他にアミメカゲロウ目のカマキリモドキ科のものは幼虫がクモ類の卵塊に寄生することで知られ、その幼虫はアミメカゲロウ目の一般的な幼虫の形ながら胸脚がよく発達し、卵に到達するとそこで生じる2齢、3齢幼虫は歩脚を退化させてウジムシ状となり、やはり過変態とされる。 ハチ目とハエ目には多くの寄生性の種があり、その中には親が卵を宿主に産み付けない種が多数含まれる。それらにも1齢幼虫が高い運動性を有し、それによって宿主に辿り着くものがある。それらもプラニディウムである。たとえばアリヤドリコバチ科 Eucharitidae の雌は宿主であるアリの巣からやや離れた葉の上などに産卵し、孵化した1齢幼虫は全身をキチン板で覆われ、多くの棘状突起を持ち、乾燥に耐え、また一定の運動能力を持つ。幼虫はアリの通る場所まで移動して待機し、通りかかったアリに取り付いて巣まで運ばれる。ハエ目では、たとえばヤドリバエ科のセスジハリバエ Tachina nupta はチョウ目の幼虫に寄生するが、親は卵を植物の上などに産み、そこから孵化した幼虫は体表面にクチクラの小板を多数備え、乾燥にも耐える。幼虫は植物体上で待機の姿勢を取り、震動などで宿主動物の接近を感知すると身体を前後左右に振り動かし、宿主に摂食するとそこから侵入する。また甲虫の幼虫に寄生するアカアシナガハリバエ Dexiosoma canina では1齢幼虫の全身に長い毛があり、また触角が発達しており、幼虫は土や材の中を宿主を探し回る。 擬蛹についてはツチハンミョウ科でのみ知られ、その意味や機能などは不明であるが、ツチハンミョウ属はこの時期で夏を越し、またキゲンセイ属のものはこの時期で越冬する。
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