ていか‐かなづかい〔‐かなづかひ〕【定家仮名遣い】
定家仮名遣
定家仮名遣い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 08:47 UTC 版)
音韻の違いと無関係に語によって使い分ける「仮名遣い」が初めて起こるのは、鎌倉時代の藤原定家の著『下官集』からである。定家自筆本系統の伝本によれば、この文献には「緒之音」(ワ行のヲ)「尾之音」(ア行のオ)「え」「へ」「ゑ」「ひ」「ゐ」「い」の各項目について、合わせて60ほどの語彙を例示する形で仮名遣いが示されている。この書は文献の書写のマニュアルを示した書であり、仮名遣いもその一環として示されたものである。 南北朝期には行阿(ぎょうあ)によって用例の増補された『仮名文字遣』が著される。諸本によって1050語ないし1944語の語彙が例示されている。ただしヲとオの使い分けは定家のものとは異なっているが、大野晋はアクセントの歴史的変化が既にあり、定家の頃と違ったためとしている。行阿によって定められた仮名遣いのことを「定家仮名遣い」という。行阿のものを定家のものと区別して言うときは特に「行阿仮名遣い」ともいう。定家仮名遣いは主に和歌の世界で流通した。 定家仮名遣いは『万葉集』などに見られる万葉仮名とは一致しない。こうした指摘は早く権少僧都成俊の記す『万葉集』写本の識語(1353年)に見られる。しかしこれらは江戸時代に契沖が国学として研究するまで広く知られるものとはならなかった。そのほか定家仮名遣いに反対したものには長慶天皇による源氏物語の注釈『仙源抄』(1381年)などがある。 その後の音韻変化で同音となったものにはまた新たな仮名遣いが必要となった。「じぢずづ」(四つ仮名)の区別を示した『蜆縮涼鼓集』(けんしゅくりょうこしゅう)や、オ段長音の開合(「かう」と「こう」など)の区別を示した『謡開合仮名遣』などの書が出た。
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