堕胎について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/26 13:56 UTC 版)
近親相姦で妊娠した場合に出産するか否かについての問題もある。堕胎(または人工妊娠中絶)が完全に違法になるかなど各国の司法権によって対応が異なる。アメリカ合衆国では女性の権利して堕胎が認められており、近親相姦で妊娠した場合も産む産まないの選択が可能である。しかしながら、胎児の人権を重視する立場のプロライフ派はこの対応を批判しており、激しい論争が発生している。 2006年3月6日にサウスダコタ州で、母体に危険がない場合は近親姦や強姦によるものを含む全ての妊娠における堕胎を犯罪とする法律に、州知事が署名した。しかしこの州法に対し、2006年11月7日に住民投票が行われ、反対56%賛成44%の反対多数で廃止が決定された。だがこの話はその後もアメリカ合衆国で問題となり続け、2019年にもアラバマ州で同様の法律が成立した。このアラバマ州の件を受けて大統領のドナルド・トランプは、近親姦や強姦の場合は堕胎禁止の例外だという自らの見解を2019年5月19日に示した。一方、スティーブ・キングは2019年8月14日に、我々だって近親相姦で生まれた子供の子孫じゃないかと指摘し、人工妊娠中絶に徹底して反対する姿勢を正当化した。 日本では刑法第2編第29章に「堕胎の罪」という章があり堕胎は犯罪とされているが、母体保護法(法令番号は昭和23年7月13日法律第156号)2条2項に定義される「人工妊娠中絶」が、同法14条1項に掲げられる適応事由に当てはまる場合に可能とされているため、事実上は非犯罪化されている。昭和23年7月13日法律156号のかつての名称は優生保護法であり、障害のある胎児が生まれてこないようにすることが目的で、差別的だということで女性の権利を重視する内容にして1996年に改名された経緯がある。だが、適応事由に当てはまるか否かは指定医師の判断に委ねられていることから、実際には安易な運用がなされていないかという問題はある。橘ジュンの『最下層女子校生 無関心社会の罪』(2016年)には、父親との間にできた子供であっても本当は産みたかったのに中絶することになってしまい、自分のことを殺人犯だと感じたという女性の話が載せられている。 もっとも、人工妊娠中絶を行うためは医師に高い金を払う必要があるため、経済的に行いたくてもできない場合がある。自分の子供を殺して埋めたということで新潟地方裁判所において殺人と死体遺棄の罪で2018年に懲役4年が言い渡された女性は、子供の父親であり自身にとっては継父で養父でもある男性に中絶費用を請求したものの断られ、その後の父親の発言を省みた上でこのような事件を起こしたとされる。ちなみにこの養父は養女が主張していることに信憑性はないとして自らの身の潔白を主張したのだが、判決は同様に実刑となった。
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