名称と順序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/29 16:28 UTC 版)
冠位の名称のうち、徳を除いた五つは儒教の徳目である五常である。五常は仁義礼智信と並べるのが普通だが、冠位十二階は仁礼信義智という見慣れない順序をとっている。これは五行思想の木火土金水に対応したものである。五行の並べ方には二種類あり、そのうちの五行相生は、木は火を生み、火は土を生み、という関係を木火土金水の順で表す。これを対応する徳に置き換えると、仁礼信義智が得られる。冠位十二階は五行相生にもとづくのであろう。 徳については五行と別の説明が必要になる。『聖徳太子伝暦』は、徳は仁以下の五つを合わせたものだから最上としたと説き、これが通説である。 五行思想は中国の思想的産物ではあるが、仁礼信義智の順序で五常を並べて地位の表示にし、徳をその上に置くという発想については、日本独自のものとする説と、中国の道教の影響とする説が分かれる。伝統的な通説は、冠位十二階を立案した日本人の創案と考えた。ことさら順序を変え、信と礼を上にしたところに十七条憲法の思想、ひいては聖徳太子の思想の反映を見る人もいる。日本創案説の論拠には、中国の文献に徳仁礼信義智の配列が見えないことがあった。 しかし1981年に道教研究者の福永光司が、5世紀成立の道教経典『太霄琅書』に徳仁礼信義智の配列がそのままあると指摘して道教の影響を説き、学説状況は変わってきた。別に、隋の蕭吉著『五行大義』に、仁礼信義智をこの順で説明し、それらが合わさって徳を全うするという趣旨の文があることから、遣隋使が隋から摂取したとする説もある。 官位・官職を12に分ける制度は、高句麗の官位や北周の冕(冠の一種)に先例がある。ただ、基準数として12を用いるのは、十二支、十二宮、十二星など中国に例が多く、特定の制度の継承でない可能性もある。
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