古都ラサの構造と行政
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 16:43 UTC 版)
古都ラサは、ナンコル・パルコル・リンコルの三重の環状道路から構成されている。古都ラサの領域はリンコルの内部で、ミプン(mi dpon)という行政官がおかれていた。モンラム大祭の期間のみ、ラサ三大寺の'シェゴ'がミプンにかわり街の行政を担った。 ナンコルとは、トゥルナン寺の本尊チョウォ・リンポチェ像の周囲をめぐる環状の回廊である。パルコルは、トゥルナンの門前広場を起点として、境内の外側を一周する道路で、古都ラサのメインストリートである。リンコルは、古都ラサの外縁を一周する道路である。 【ナンコル】 「ナンコル」は「内側の環状巡礼路」の意。 トゥルナン寺の構造は、本殿(チョカン)内の中心に千手観音像,弥勒像,パドマサンババ像などが置かれたキンコル・ティル(中庭)があり、それを取り巻く形で本尊チョウォ・リンポチェ像を祀る釈迦堂をはじめとする17のお堂が配置されている。トゥルナン寺の正門を入ってすぐ手前に広がるキャムラ・チェンモ(大中庭)を起点として、本殿をとりまき、マニ車が配置された巡回路がナンコルである。 【パルコル】 「パルコル」は「まんなかの環状巡礼路」の意。 西方にむかって開いたトゥルナン寺正門前広場を起点とし、同寺境内の外周を取り巻いている環状道路。古都ラサのメインストリートである。中国名「八角街」の「八角」とは、清末の1910年にチベットに侵攻してラサを占領した四川総督趙爾豊靡下の四川兵が中国語の四川方言によって「パルコル」を音写することによって成立した表記。中華民国の「国語」、中華人民共和国の「普通話」では「パージュェ」と発音されるが、中華民国の歴代政権や中華人民共和国はこの漢字表記を改めることなく、パルコルにたいする中国語の正式表記として用い続けている。 中華人民共和国は古都ラサに対する直接統治を開始すると、中国の諸都市に施行した制度にならい、いくつかの「居民委員会」を設置したが、パルコルを管轄する居民委員会の呼称については、「八角」という表記ではなく、チベット語の発音をより忠実に音写した「八廓」という表記が採用され、「八廓居民委員会」と呼ばれている。「八角」と「八廓」は、ひとつの「パルコル」というチベット語が異なる時代の異なる方言で音写されることによって成立した表記である。 【リンコル】 ラサの旧市街の東方、北方、南方をめぐり、ポタラ宮殿のあるマルポリ、薬王山(チャクポリ)の西側をとおる、もっとも外縁に位置する環状巡礼路。 現在、リンコル・ロラム(林廓南路)はラサ旧市街の下町をとおり、リンコル・シャルラム(林廓東路)、リンコル・チャンラム(林廓北路)、リンコル・ヌプラム(林廓西路)は路幅が拡張されてラサ市のメインストリートとなっている。
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