力動的精神療法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 09:58 UTC 版)
「境界性パーソナリティ障害」の記事における「力動的精神療法」の解説
フロイトを開祖とする精神分析では、カウンセラーとクライエントの関係を利用し、クライエント自身がまだ認識できていない無意識の中の抑圧されている葛藤を意識化する。BPDでは、乳幼児期の発達早期に外傷を経験をしていると考え、カウンセラーの解釈によりクライエントの自己洞察を促し、本来の自我状態を取り戻すことを目的とする。時代を重ね、フロイトの理論への批判や修正を伴い、精神分析も少しづつ様相を変えてきており、現在では「精神分析的精神(心理)療法」は精神分析の基本的概念を取り入れたカウンセリング全般を指すことが多い。 幼少時や過去の問題に焦点を当てた古典的精神分析と違い、力動精神療法では「here and now(今・ここ)」に焦点を当て、現在のストレスを問題にする。カーンバーグの手法「表現的心理療法(expressive psychotherapy)」は最も精神分析に近い。カーンバーグはBPDの病理は、分裂(splitting)が一番の問題であると考え、分裂や怒りの感情の分析をすることで認知(考え方のパターン)を修正していく。またマスターソンは、BPDの環境要因に焦点をあて、発達停止が根本に存在するとし「見捨てられ感」を分析して成熟を促し、個人のパーソナリティを再構築することを目的とした「再構築療法(reconstuctive psychotherapy)」を提案している。 支持的精神療法では、解釈や直面化はせず、クライエント自身の治癒力を支持し、問題解決と現実適応を重視する。患者を受容、共感し、訴えを傾聴することで、勇気づけ心理的に支えていく。ガンダーソンの手法でも古典的な精神分析は退け、自身の不安定さ、否定的な自己感や自我違和感、衝動的な感情や低い達成能力などを、探求療法という形で支持的、時に分析的療法を用いて臨機応変に対応していく。
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