並進運動、回転運動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/10 04:34 UTC 版)
剛体の運動は三次元空間では6自由度であり、重心等適切な代表点を決め、代表点の運動(移動)三次元とその代表点を中心とする回転運動(転向)三次元に分解して扱う事ができる。 剛体は連続系として積分形式を用いる事が多いが、ここでは、実際の物体が原子で構成されているのと同様に、多数の質点のような粒子から成る離散系として説明する。 並進運動 代表点の運動を剛体の並進運動(併進運動)という。剛体の質量をM、代表点の位置を s → {\displaystyle {\vec {s}}} 、各部に働く外力を F → i {\displaystyle {\vec {F}}_{i}} 、剛体に働く全外力を F → {\displaystyle {\vec {F}}} とすると、代表点についてのニュートンの運動方程式(並進の運動方程式)は M d 2 s → d t 2 = F → ( F → = ∑ F → i ) {\displaystyle M{\frac {d^{2}{\vec {s}}}{dt^{2}}}={\vec {F}}\,\,\,\,\,({\vec {F}}=\sum {\vec {F}}_{i})} 例を挙げると、投げられた棒の運動は、重心の軌跡が放物線を描く(→放物線#物理学的な導出)。並進運動は重心といった代表点の運動なので記事質点#質点系の力学に詳しい。 回転運動 代表点を中心とした回転の角運動量を L → {\displaystyle {\vec {L}}} 、外力による力のモーメントの総和を N → {\displaystyle {\vec {N}}} とすると、剛体の回転運動のオイラーの運動方程式(回転の運動方程式)は d L → d t = N → ( N → = ∑ ( r → i × F → i ) ) {\displaystyle {\frac {d{\vec {L}}}{dt}}={\vec {N}}\,\,\,\,\,({\vec {N}}=\sum ({\vec {r}}_{i}\times {\vec {F}}_{i}))} 例を挙げると、投げられた棒の運動は、重心の放物運動と、重心を中心にしての回転に分けられる。 剛体の運動は上の2つの運動方程式を満たす。自転しながら公転している場合等、並進運動が回転運動の場合もある。その場合は並進運動も回転運動専用の式の方が適している。 剛体に働く力の合力が0で力がつり合っているとき、並進と回転の2つの運動方程式の右辺が0になり、剛体は等速回転しながら等速直線運動をしている。(それぞれ静止を含む。) 下の表について説明する。左半分は、並進運動と回転運動で扱われる運動量について比較しているが、同じ段にある物理量は相当すると考えると解り易い。その例が表の右半分である。それぞれ、一方の関係式の記号に、対応する記号を代入するともう一方の関係式になることが判る。 並進運動SI単位回転運動SI単位法則並進運動回転運動物理量位置 m 角度 rad=m/m 慣性の法則物体は力を加えられない限り、等速直線運動または静止を続ける 物体がトルクを加えられない限り、等速円運動または静止を続ける 速度 m/s 角速度 rad/s 加速度 m/s2 角加速度 rad/s2 運動の法則物体に力が加わると、質量(慣性質量)に比例した加速度を生じる。 F → = m a → {\displaystyle {\vec {F}}=m{\vec {a}}} 物体にトルクが加わると、慣性モーメントに比例した角加速度を生じる。 N → = I ω ˙ {\displaystyle {\vec {N}}=I{\dot {\omega }}} 質量(慣性質量) kg 慣性モーメント kg・m2 力 N=kg・m/s2 トルク N・m=kg・m2rad/s2 運動量の時間的変化率が力に相当する d p → d t = F → {\displaystyle {\tfrac {d{\vec {p}}}{dt}}={\vec {F}}} 角運動量の時間的変化率がトルクに相当する d L → d t = N → {\displaystyle {\tfrac {d{\vec {L}}}{dt}}={\vec {N}}} 運動量 kg・m/s 角運動量 kg・m2/s=kg・m2rad/s ベクトル量に関する保存則運動量保存の法則 d P → d t = ∑ F → i {\displaystyle {\frac {d{\vec {P}}}{dt}}=\sum {\vec {F}}_{i}} 角運動量保存の法則 d L → d t = ∑ N → i {\displaystyle {\frac {d{\vec {L}}}{dt}}=\sum {\vec {N}}_{i}} 並進運動エネルギー J=kg・m2/s2 回転運動エネルギー J=kg・m2rad2/s2 仕事 J=N・m 仕事 J=N・m・rad 仕事率 W=J/s=N・m/s 仕事率 W=J/s=N・m・rad/s
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